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「人嫌いのクフトが家庭教師って想像がつかない。いったい何を教えていたんだか。」

 ハナは思ったことを隠すのが苦手だ。顔に出てしまう。なら、いっそそのまま言葉にしたほうがいい。

「普通に勉強だよ。」

「以前は東大や京大にだって入れるぐらい優秀だったのよ。ただ、大学受験の前に病気になって、療養のためにこっちへきてから考えが変わったのね。」

 客が途絶えて、おばさんが話しに加わってきた。

「この土地に古くから暮らす人々は、自然を尊敬し、自然に生かされていると考えているの。だから、秩序を重んじ、助け合いながら生きてきた。」


 死は消滅ではなく、次の世代へ思いを託すための儀式。そう悟った時、病院を抜け出し、サヨリ様の元で一年間療養生活をした。

「人と関わらないサヨリ様にどうやって?」

 ハナはおばさんの話をさえぎった。とにかく、疑問に思ったことはすぐに尋ねることだ。

「リアは両親が亡くなった後、しばらく施設にいたの。でも耐えられなかったんでしょうね。ある日、抜け出すと、川へ身を投げた。施設からの連絡が家にきて、行方不明のリアを探していたところを、何の偶然か、サヨリ様に助けられた。でも、その時、聴覚をほぼ失った。だから家で育てることにした。この子は気を失っていたからサヨリ様には会ってない。きっとサヨリ様というの作り話じゃないかって、ずっと半信半疑だったのね。」

 だから人避けの鈴に関係なくクフトと接することができるんだ。

「どうして、会話ができるの?」

 手話や筆談もしてないのに、リアが会話に加われるのが不思議だった。

「目がフクロウ並みにいいんだ。」

 店に入る時、フクロウが怖がるのでマスクは外してくださいと書かれてあった。なるほど、読唇術ってわけだ。

「今はコロナ禍で、皆マスクをつけているから、会話についていけなくて。でも、専属の通訳がいるから。」

 彼女はクフトを指差し、くったくなく笑った。ハナはふと思った。ハナには実感はないが、ここにいる三人は、はからずもサヨリ様に助けられた者たちだ。


「二人が一緒になってくれると親としては安心なんだけどね。」

 おばさんがハナの耳元で小声でささやいた。


 なんだ、ちゃっかり三次元の彼女がいるんじゃないか。ハナはショックを感じている自分にショックを受けた。

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