リアとクウ
真っ白なふわふわな羽毛に覆われたフクロウを前に、クフトが座っていた。
「まさか娘って。」
ハナはあわてて、駆け寄ると彼を指差した。
「あんた男娘ってやつ?」
「失礼なガキだ。俺は男だ。」
フクロウに餌をやりながら怒っている姿は滑稽で、説得力に欠けた。
「娘はこっちよ。」
奥から、髪の長い若い女性が現れた。細くて長身で、ずんぐりむっくりの女将さんも娘にはみえない。
後で知ったが、養女だそうだ。とても古い家系だったが、もはや彼女しか残っていないという。以前の店で、学校帰りに両親との待ち合わせに店を訪れていたが、その迎えの時、事故で両親が亡くなった。店に残された彼女を女将が引き取った。
「あなたが、ハナね。わたし、リア。クフトがサヨリ様の話ばかりするので、てっきり妄想だと思ってた。クフトが二次元を卒業して安心したわ。」
へんな噂が広まっているようだ。
「ガキには興味ないし。」
「こっちだって、虹ロリ男には興味ありません。」
クフトとハナは互いにあっかんべーをした。
「店の名は、ナンダ・カムリの伝承からとったの。実際にフクロウの王がいるとは思わないけど、この店がフクロウの国としてこの子たちを守ってやれたらってね。みんな、怪我をしたり病気で自然に帰れなくなった子達なのよ。」
目の前で餌をついばんでたフクロウが振りむいた。首が真後ろを向く。
「オッドアイ。」
その個体は右目だけが赤かった。それはオトナシ・カムリの特徴だ。
「この子は、最初に保護した子で、クウ。視力がよくないんですって。フクロウとしては致命的よね。」
リアはその子をやさしく抱き上げると、巣箱へそっと戻した。
色気の無いハナでも女の子だ。二人の関係が気になったが、聞き出せずに、時折、両者の顔を見比べていた。
「私たちのことが気になる?」
リアは、同じテーブルに座ると、くったくなく切り出した。
「えっ?!、ええ、まあ。」
予想外の質問に返事につまった。
「昔は週に2回、一緒の部屋でよく過ごしてたわ。」
彼女の答えにハナは赤面した。
「子供をからかわないの。」
見かねたおばさんが声をかける。
「クフトにはリアの家庭教師をしてもらってたの。大学入試も大変でね。医者はお金がかかるから、科学者になるとかいってたんだけど、いつの間にか民俗学に興味を持ってしまって。親としては不満だったけど、子供の応援をするのが親の務めだからね。」
親ガチャに外れたとは思わないけど、こんな素敵な家庭に生まれたかったな。
「わたしの恋人はクウちゃんだもんね。」
なんだ、こっちはフクロウオタクか。大学生ってオタクが多いんだろうか。大学生になったら自分も何かのオタクになるんじゃないかとハナは不安になった。




