過去に戻ってきた。
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
余談だが、龍徳の中学には、表の番長と裏の番長と言われる者がいた。
番長の富樫とは何故か気があった事で、バスケを辞めてから授業を抜け出して遊ぶほど仲が良くなった。
そして、バスケ部の暴力事件の噂を鍵つけた一部の生徒から龍徳は影の番長だと思われていた。
これには理由があって、当時通っていた塾が学区外だった事で、小学生時代を知らない他校の生徒の方が龍徳を認めていた。
その為、塾をサボって遊ぶ輩が徐々に悪ぶる輩が増えて行ったのだ。
そんな中、何度か喧嘩をした事があったのだが、それを龍徳の学校の生徒が目撃したからであった。
話は逸れたが、バスケ部の退部と共に、今まで以上に一心不乱にボクシングに没入した。
ボクシングだけは裏切られない。
ボクシングだけは正当に評価してくれる。
「大人に負けない技術とフィジカルは手に入れた。来年になったら・・・中学3年生になったら志津音に告白するんだ!」
気が付けば年が明け2月を迎えていた。
そして、龍徳の運命が変わる。
それは、1986年2月の事。
疲れていたのか、いつもより早く寝ていた時だった。
『ソロソロ起きる時間だな・・・』
長年のリズムで身体が起きる時間を教えてくれる。
そう思って時計を見ようと腕を伸ばそうとするが身体が動かない。
「・・・っ!」
『ヤバい!これ・・・アレだ!』
今までも何度か経験した金縛り。
余りの怖さにギュッと目を閉じる。
幼少期の頃から何度も経験した事で、怖いもの見たさに何度か目を開けてしまった事がある。
そうすると必ず50歳位の壮年が龍徳の頭の上に手を置いている姿だった。
ハッキリ言って怖いなんてものじゃない。
知らないオッサンが自分の頭に手を置いている
『こえぇ~勘弁してくれよぉ~』
手を置かれている感覚はないが、毎回そうなのだから今回もそうだろうとこの状況から脱する為に自分なりに必死で動かそうと試みる。
『マジで勘弁して~』
その時、少しだけ身体が動いた。
『う・動く・・・はぁ~助かったぁ~』
金縛りは身体が動かない。だから身体が動いた瞬間にこの悪夢から解放される。
そう思って目を開けたら
『ギャァァァ~』
眼前に壮年の顔があったのだ。
これは怖い。
距離で言うなら40㎝と言ったところだろうか
まるで龍徳が目を開ける事を知っていたかのように見つめている。
目を閉じたいのに閉じられない。
『怖い怖い怖い・・・小便ちびりそう・・・あっ・・・ちょっとちびったかも・・・』
だが、男は何をする訳でもない。
良く見ればやはり龍徳の頭に手を置いている。
『良く見ると・・・誰かに似てるかも・・・親父か?ちょっと違うな・・・誰だ・・・この人・・・幽霊だから祖先か何かなのか?』
この頃、某幽霊漫画で守護霊を題材にしたものがあって当然、龍徳も読んでいた。
その為、何故か自分の守護霊だと思い込む。
『守護霊って・・・普通のオッサンなんだな・・』
質量を感じはしないもののハッキリと認識できる。
だからこそ勝手に身体が動いてしまった。
微かに動くその腕をその壮年胸元に・・・
その瞬間、その幽霊が嬉しそうに微笑んだ気がした。
そして・・・
『な・なんだ・・・何かが・・・何だよコレ・・・』
その幽霊が龍徳の腕を通して吸い込まれるように消えて行くと同時にハッキリと自分の中に何かが入ってきた感覚があった。
そして、龍徳は気を失ったのであった。
そして、目覚めると突然の高熱で学校を休む事となった。
その為、誰もいなくなった家に一人で布団に横たわっていると突然ガバッと起き出した。
「どうよ!成功だよな!?」
眼下にある自分の手の大きさを確認する。
「新聞・・・今日の新聞は・・・」
そう言って普段見もしない新聞を手に取って食い入る様に読み始めた。
「やった・・・やったぞ・・・やったぞ~!!」
突然、訳の分からない事を言って喜びだした。
「ハハハハハ・・・まさか・・・本当に戻って来られるとは・・・今日は1986年2月27日・・・これで3月1日の交通事故を回避する事が出来る。」
そう声に出すと洗面所へと向かう。
「ニキビがある・・・それに・・・こんな顔だったっけ? 母ちゃんが帰ってきたら皮膚科に行ってこよう・・」
自分の顔を見て変な事を言いだす。
「は・ははは・・・髪の毛がある・・・これからは絶対大事にしてやるからな!」
またしても訳の分からないオッサン臭いセリフだ。
「さて・・・今の内に覚えている事をノートに書きだしておくか・・・」
そう言って自分の勉強机を見る。
「おぉ~懐かしい・・・そうそう・・・こんなんだった・・・。」
呟きながらも机の左端にあるテープで留めてある時間割を剥がしていく。
「やっぱり書いてあるよな・・・」
そこには傘マークの左に自分の名前、右には神山志津音と掛かれていた。
「あちゃ~恥ずかしいったらありゃしない・・・これは消しておこう。」
そして、ノートを取り出すと何かを思い出す様に書き始めて行く。
1986年2月28日金曜日 友達と千葉に買い物に行く約束をする
1986年3月1日 13時にバス停で待ち合わせ。善行が迎えに来てチャリンコでバス停に向かうが、奴のふざけた運転のせいで交通事故を起こす!
手前で降りようとする俺を降ろさない様に蛇行運転。
後方確認をしないで道路をイキナリ斜行した事で、後方から来るトラックに跳ねられる。
先に俺がぶつかった事で善行は、車に接触しなかった為、軽傷ですむ。
俺は肺を両方潰し全身打撲と両腕の骨折及び内臓損傷。
むち打ちを軽く見た事で、将来悩まされる事になる。
1986年3月12日
14歳の誕生日を病院で過ごす。
1986年3月21日
病院を退院。その間、隣のベットに入院していた22歳のお兄ちゃんがもっていた麻雀のゲームを借りて遊び方を親父から習う。
見舞いには末永以外誰も来なかった。
この事故の4ヶ月後から急激に視力の低下が始まる。
当時は分からなかったが、事故のせいだった。
順次リハビリを開始。
通学は厳しいとの事で自宅療養
30日程のリハビリでやせ細った身体が幾分ましになりスイミングスクールに通い始める。
ここで、右肩が脱臼。
原因は医療ミス。
右肩の肩甲骨にも骨折があったのだが、見落としていたらしい。
何度も痛いと伝えたのにリハビリは痛いものだと話を聞いてくれない。
この事で、ボクシングの復活が遅れる・・・っと思っていたが、ボクシングが出来ない身体になってしまう。
腕のギブスが取れ学校に通えると思った矢先、肩を固定され自宅療養が続く。
ここまで書くと一端ペンを置く。
「身体が若返ったからか・・・忌々しくて仕方がない・・・俺の全てを奪った交通事故・・・これさえなければボクサーとしてプロのリングに立てたものを・・・」
鬼の形相でノートを睨み付けるが・・・
「だが、それも・・・これで変わる!」
そして、再びノートに書き始めた。
1986年6月〇〇日
学校に通うえる様になる。
勉強が遅れ付いていけなくなった。
そして・・・気が付けば初恋の鈴木志津音さんが引っ越していた。
告白したかった・・・
交通事故のせいで最後に合う事も出来なかった。
1986年7月〇〇日
ある程度のリハビリが終わり心配しているであろうボクシングジムに顔を出す。
実際メチャクチャ心配してくれていた。
常日頃、会長からは「お前は必ず世界チャンピョンにから成ずなる!」っと言ってくれていただけあって俺が顔を出すと親の様に心配してくれた。
1986年7月12日
この日付は俺の誕生日の4ヶ月後だったからハッキリ覚えている。
親父が仕事中に事故に巻き込まれ頭に20針縫う大怪を負った。
話を聞くとどうやら通行人を守ろうと庇ったからだそうだ。
本当は入院しなければならなかったのだが、家族を養う為に入院を拒否して血だらけで帰ってきた。
現場の点検不足による事故。
だが、俺の高校入学の為に無理をして働かなければ事故は起きなかった。
1986年8月2日
完全に回復したと久しぶりに牧島さんとスパーをした時、再び脱臼。
当時の医療技術では分からなかったが、細かいヒビが完治していない状態でリハビリした事で、肩の骨が変形していた。
筋肉をつければ大丈夫と言われたが、ボクシングで必要以上に筋肉をつけてしまえば階級が変わってしまう。
それに、どんなに肩回りの筋肉を付けようとも80%程度の力しか出せなくなっていた。
水泳もそうだが、全力で力を使うと肩が脱臼する癖がついてしまった。
これが原因で、ボクシングを諦める事となった。
ここから俺の人生が大きく変わる事になった。
「それと!これだけは忘れる前に書き込まないと・・・」
そう言ってどんどん書き込んで行く。
4月6日 桜花賞 優勝ラモーヌ、2位○○、3位○○
4月13日 皐月賞 優勝コスモス、2位○○、3位○○
4月29日 天皇賞 優勝クシロ、2位○○、3位○○
5月11日 安田記念 優勝ギャロップ、2位○○、3位○○
5月25日 日本ダービー 優勝ダイナ、2位○○、3位○○
6月1日宝塚記念 優勝パーシャン、2位○○、3位○○
10月26日天皇賞 優勝ユタカオー、2位○○、3位○○
11月2日 エリザベス女王杯 優勝ラモーヌ、2位○○、3位○○
その後もずらーっと書き込んである。
他にも宝くじなどの年表がびっしり書き込まれていった。
それだけでなく株の情報もいくつか聞き出されている。
そして、書き終わるとまたしても時系列を折って書き進めて行く。
そして、気が付けば4時間が経過していた。
「ふぅ・・・流石に腕が痛い・・・パソコンがあったら簡単なのになぁ・・・」
当時パソコンは高級品。
貧乏であった神山家にそんな高尚なものがある訳がない。
ノートを見ると最後に2021年と掛かれている
そのノートを閉じて両手で大事そうに握りしめると目を閉じた。
『人生を満足していた何て嘘だったな・・・だが・・・これで人生をやり直せる!!』
そう、昨晩の幽霊の正体。
それが35年後の龍徳だったのだ。
年齢を重ねる内に見なくなっていったデジャヴだったが、最後あの時に気が付いた。
自分の頭に手を置いていたのは、間違いなく中学生の頃の龍徳だった。
髪の長い女性は誰なのかは分からない。
だが、それに気が付けたことで、昔見たおじさんの幽霊が自分であったと理解した。
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