デートの約束
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
先程からボールを持った龍徳に健一が勝負を挑むが、素人目に見ても大人と子供の差があるのは明白。
誰もが、龍徳の記録に疑念を抱かなかったはずはないのだ。
志津音もその中の一人だ。
それは小学生の頃の話・・・
「武田君やっぱり凄いな・・・遠投で45メートルか・・・5メートル負けたかぁ~」
野球部ピッチャーと比べて遜色がない時点で凄まじい記録なのだが、っ悔しがって見ていると
「神山君の番だ・・・へぇ~・・・今の40メートルライン越えたんじゃない・・・なんだ~運動神経悪くないんじゃん・・・」
ところが・・・・
「神山の記録23メートル!」
「えっ?・・・なんで?」
そう思ったが次の測定に向かう。
そして、走り幅跳びでは・・・
「志津音の記録3メートル55センチ!」
「やったね♪」
陸上部でもないのであればかなりの跳躍力だ。
そして、男子の順番になる。
「悔しい・・・井上君に10センチも負けるとは・・・」
全種目を通せば志津音が圧勝しているのだが、項目ごとだと負ける事がある事に悔しくて仕方がない。
「あ・・・神山君だ・・・さっきのは何だったんだろう?」
そして、龍徳が飛ぶと・・・
「えっ?・・・今の井上君並みに飛んだんじゃない?」
「神山の記録2メートル63センチ!」
「いやいや・・・それはおかしいよね?・・・あれ?誰も何とも思わないの?・・・」
そして、異常だったのが50メートル走。
「神山君早いじゃない・・・サッカー部の井出君より早かったんだ~」
「ただいまの記録!井出7秒5! 神山8秒2!」
「はい? 何で先にゴールした神山君の方が遅い訳? 何でみんな何にも言わないの? それとも私がおかしいの?」
ってな事があったのだ。
「そりゃ~そうだよね~バスケ部時代も尋常じゃないと思ったもん・・・」
たかが3ヶ月で異常な成長を見続けたのだから当然だったと理解する。
『ああ見えても健一ってサッカーでも県大会行ける程、旨かったんだけどな・・・』
悔しそうにしている健一に丁寧に教える龍徳。
そして、自分が上達している事が分かるのか、その度に健一の目がキラキラしていた。
『あ~あ・・・もう少し早く知りたかったなぁ~・・・』
2人を見つめる志津音の目は微かに涙を覗かせる。
「はぁはぁはぁ・・・あぁ~楽しかったぁ~♪」
「ああ楽しかったな♪」
「にしても龍兄ぃ~サッカーも野球も習ってないってマジかよぉ~!それに体力が異常だよ!全く息切れしないとか・・・マジ半端ねえ~」
『龍兄ぃ?・・・あの子、いつの間に・・・』
「まぁ~大体の事は一回経験すれば覚えるし出来ちゃうだけだな。」
「マジもんの天才じゃん! ねえねえ!今度も時間があったら遊んでくれよ!日曜日なら部活もないしさぁ~」
チラッと志津音を見ると
「良いんじゃない♪ 私もソロソロ部活引退するから一緒に遊べるし・・・ね♪」
ニコッと龍徳に微笑みを向ける。
『うわぁ・・・マジで可愛いなこの子・・・』
実年齢で言えばお子様にしか見えないはずの志津音にときめいてしまう。
「日曜日か~・・・」
「なんだよ日曜日は都合が悪いのか?」
「そうなの?そっかぁ~・・・」
ショボンとする志津音の姿に慌ててしまう。
「えっ・・・いや・・・大丈夫なんだけど・・・」
「兄ちゃん何か隠してんな!言ってみ!」
「そうなの?神山君・・・あっ!もしかしてデートだったり・・・とか?」
「ち・違う!・・・えっと・・・はぁぁぁ~内緒なんだけど・・・秘密に出来るか?」
「「もちろん♪」」
さすが、兄弟・・・良きピッタリだ。
「実は・・・」
そう言ってある程度の内容を2人に話して聞かせたのだった。
「マジで!兄ちゃんボクシングやってたのかよ!超かっけぇ~!」
「神山君がボクシング・・・へぇ~それと会社って本当なの?」
「ああ・・・両方本当だよ・・・」
「ここまで、学校とは印象が違うとは・・・まるでスーパーマンね♪」
「おぉ~姉ちゃんそれ!俺も思った!龍兄ぃはスーパーマンかウルトラマンだな!」
「ははは・・・」
乾いた笑いが出てしまうが仕方がない。
実は、本来の未来でも再三、同じ事を違う人達に言われ続けたのだから何か不思議な感覚であった。
そして、帰り道
「なぁ~龍兄ぃ!GW中に千葉に買い物に行きたいんだけど一緒に付いて来てよぉ~」
「はぁ? 友達はどうした?」
「別に無理なら良いけどさ・・・」
『そう言えば・・・私立に通っているって言っていたな・・・地元の友達と疎遠になっているって事か・・・』
「しょうがないな・・・俺も買いたい物があったし付き合ってやるよ。」
「マジで!やったぁ~!! じゃぁ~姉ちゃんも一緒に行こうぜ!!」
「えっ・・・良いけど・・・神山君は嫌じゃないの?」
「なんで? さっきも言ったけど付いて来てくれた方が嬉しいけど?話もあるし・・・」
「そ・そうなんだ・・・じゃ私も行こうかな♪」
「じゃ~決まりだね!」
そして、5月3日に一緒に買いものに行く約束をして別れたのだった。
その間、学校で何度か志津音とすれ違う事があったが、何故か裂けられている感じがした。
俺が、志津音を見つけて声を掛けようとするとタイミングが悪いのかも知れないが、友達とどこかに行ったり、教室に入ってしまう。
『今までも学校で話していないんだから馴れ馴れしいのかもな・・・』
どうせ5月3日に会えるし・・・と特に気にせず当日を迎える事になった。
「龍兄~!」
「早いな!待たせたか?」
「ううん私達も今来たところだから」
白いシャツにジーンズ姿。
志津音らしい服装だと思うがとっても似合っている。
ポーっと龍徳が見惚れていると
「あれ?でも龍兄バスに乗ってなかったよね?」
「ん?あぁ~走ってきたからな。」
「マジで!4㎞はあるぜ?」
「ん?何冗談言ってんだよ?たかが4㎞だぞ?」
「あぁ~龍兄にすればたかがなのか・・・納得。」
「どうした志津音?」
何故か龍徳を見つめる志津音に声を掛けた。
「全然汗かいてない気がして・・・」
「いやいや・・・少しはかいたぞ?」
「そうなんだ・・・息切れもしないんだね♪」
「ハハ♪兄弟そろって冗談が旨いな♪ たかが4㎞位で・・・あぁ~分かった!いくら俺でも全力疾走じゃないからね?」
「そう言う事じゃないんだけど・・・まあいいか♪」
「龍兄・・・何分で駅まで走って来たの?」
「家出たのが40分過ぎだったから・・・」
そう言ってチラッと時計をみると9時58分になろうとしていた。
「多分15分位かな?」
「ハハハ・・・私服で4㎞を15分が全力じゃないと・・・」
「そうだね・・・」
「何を言ってるか分からんけど電車が来るから行こうぜ!」
そう言ってホームに上がるとちょうど電車が入ってきた。
「うわぁ~混んでるなぁ~」
「GWだからしょうがないな・・・」
余りの人ごみに志津音が躊躇している様に見えた龍徳が
「ほら・・・!」
そう言って手を差し伸べる。
「う・うん・・・」
「健一平気か?」
「うぎゅ~・・・へ・い・き~」
「平気じゃなさそうだな・・・志津音は大丈夫か?」
「う・うん・・・大丈夫・・・。」
搭乗口の扉に手を付いて周りの混雑から龍徳が守ってくれてはいるのだが、龍徳の顔が近い上に両手が自分の頭を挟むように置いてある。
電車が揺れる度に龍徳と身体が触れてしまい志津音は固まってしまう。
そして、千葉駅に到着すると
「何か腹減った・・・」
「私も・・・」
乗りなれない満員電車でどうやら疲れてしまったようだ。
「それじゃ~少し早いけど昼飯にするか♪」
龍徳としてはレストランに入りたいのだが、中学生だけで入るには敷居が高過ぎる。
喫茶店が良いのだが、当時の喫茶店はヤンキーとオッサンの溜まり場のようなもの
「ラーメン、パスタ、ハンバーガー・・・何処が良い?」
「ラーメン!」
「えぇ~パスタにしようよぉ~」
「じゃ~パスタで!」
「なんでだよ龍兄ぃ~!」
「良いか健一!この世にはレディーファーストって言葉があるんだ。女性の意志を尊重するって事だな♪」
「えぇ~何か理不尽だなぁ」
「はは♪ そう言うな!その内分かるよ。」
少し前に、木村と千葉に来た時に出来たばかりの店に来た事があった。
当時としては、本格的なパスタを食べさせてくれるお店で、学生でも入り易い雰囲気だったので、そこに行く事にした。
「兄ちゃん・・・このパスタってどんなの? これは?・・・」
っと健一が見た事もないパスタの味を龍徳に質問する。
この店では、食べた事がないが、当然全て知っているに決まっている。
「へぇ~だったら俺コレ!」
「志津音は?」
そう言って志津音の顔を見ると眉間に皺をよせていた。
「どうした?」
「えっと・・・恥ずかしいんだけど・・・値段が高いから・・・」
「あぁ~」
『そうだった・・・中学生だったら高いに決まってるよな・・・』
「それなら気にしないで良いよ♪ ちょうど食事券をもらったからタダだし♪」
「だめだよ!自分の分は自分でだすよ!」
「分かった♪ だったら今回は俺が出すから次回は志津音の驕りね♪」
「えっ・・・うん・・・それで良いなら・・・」
「出来れば志津音の手作りの方が良いんだけど・・・なんちゃって♪」
冗談なのに何故か考え込まれてしまった。
「何にしても遠慮しなくて良いから♪ 折角なんだから健一みたいに気兼ねなく頼んで欲しいな。」
「もう・・・神山君って意外と強引だよね。」
「まあね♪」
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