初恋の女性と髪留め
毎週水曜日と土曜日にアップします。
作者的には自分で書いていて泣いてしまうような物語だと思っています。
文字総数334000文字で完結迄書き終わっているので、良ければご一読ください。
その後、目を覚ました木村と今後の事も合わせて色々話し合う事となった。
そこで、龍徳は会社を自分も作りたいと木村に語っていたのだ。
木村の作ろうとしていた会社は“何でも屋”依頼があれば何でも変わりに代行すると言ったシンプルな仕事。
だが、それが龍徳に取って一番助かる事でもあった。
木村は、龍徳の才能に惚れ込んだ。
自分では辿り着けない世界を体現する可能性を秘めた龍徳に・・・
そして将来、そんな龍徳と本気のスパーをした自分が自慢になると・・・。
さらに、自分に引導を渡してくれた・・・否、呪縛から救ってくれた恩人だとさえ思っていたのだ。
だからこそ、木村は龍徳を裏切る事は決してなかったのだった。
それにより・・・
「すげぇ・・・興奮で手が震える・・・」
目の前には15億を超える大金があり木村が興奮を隠せないでいた。
『俺の記憶では1万4480円だったんだけどな・・・さすがに1300万円も勝ったから倍率が下がったって事か・・・それと税金か?』
「それにしても・・・最初は冗談かと思ったよ・・・何で分かったんだい?」
「前も言いましたけど俺って予知夢を見る事があるんですよ。でも普通は信じられないですよね? こんな大金を一転掛けとか実際、正気の沙汰じゃないですし」
そう言って笑うが、元手となった1300万円でさえ中学生が持っている金額ではない。
「まぁ~俺だって最初は疑ったけど・・・でも、これを見たら信じるしかないよな・・・。」
「じゃ約束通り10%の1億5000万円が上田さんの取り分で。」
「マジで良いのかい?」
「うん。上田さんが居なかったら買えなかったしね♪」
「ハハ・・・もう一生遊んで暮らせるよ・・・いやはや・・・一緒に会社を起業したいって言われた時は悩んだけど・・・腹が決まったな・・・俺は龍徳君に付いていくよこれからも!」
「有難う木村さん♪ こちらこそ宜しくお願いします。」
個人口座としてもかなりの額を貯金したが、大半を会社の口座に入れる事にした。
そして、この金をもって本格的に自分の人生を変えて行く。
『次のイベントは・・・彼女だ・・・。』
今回の世界に来てから班の違う彼女をチラチラと見つめては懐かしい気持ちが蘇る。
だが、直ぐに半日授業となって春休みとなってしまい殆ど初恋の女性を見る事が出来なかった。
残念な事に3年生に進級するとクラスが変わってしまい数える位しか見る事がなかったのだった。
1986年4月26日土曜日。俺は思い切って初恋の鈴木志津音さんに声をかける事にした。
3年生になりクラスが違ったせいで、声を掛けるのはバスケ部の時以来だ。
善行がバスケ部だった事もあり事前に今日はスグに部活が終わると調査済み。
学校では話しかけ難かったので、記憶を頼りに彼女の団地の近くをふら付いていた。
団地の下にあるポストに苗字が書いてあった時代なので、簡単に探せるかと思ったが中々見つからなかった。
30分程探しても見つからなかったから諦めようとした時だった。
「なぁ~兄ちゃん? この辺じゃ見ない顔だよね? 何してんの?」
突然、年下の少年から声を掛けられた。
「ん?友達の家を探していたんだよ。」
「ふぅ~ん・・・で?見つかったのか?」
「まだ見つかってないね。俺の記憶違いかもしれないからソロソロ諦めようかと思っていたところだ。」
「ふぅ~ん・・・だったらさぁ~俺と遊んでよ!」
「ん? 俺が? 何で?」
「良いじゃんよ~同い年の奴らだと詰まんないんだもん・・・」
話を聞くと少年の運動神経が良すぎてしまい同年代と遊ぶと一人だけ浮いてしまうらしい。
小学生時代の俺と比べると雲泥の差だと思った。
「まぁ~今日は予定組んでなかったから時間が空いてはいるけど・・・」
正直、今さら年下と遊んだとしても大して面白いとは思えない。
だから、見ず知らずの男の事遊ぶ事を躊躇っていたのだが、ふと変な事を思い出してしまった。
『そう言えば・・・この子・・・俺の息子と同い年位だな・・・』
本来の時代であれば俺には12歳になる子供がいた。
そう思ってしまい子供と遊ぶ事が楽しみだった事を思い出した。
「ねぇ~いいじゃんか~頼むよ~」
「フッ・・・まぁ~良いか♪ で?何して遊ぶんだ?こう見えてもお兄ちゃんは運動神経が良いから付いてこれるかな?」
「マジで!!やったー! そうしたらさ!そうしたらさ!うぅ~どうしよう・・・野球もしたいし、サッカーもしたいし・・・バスケもしたいし・・・」
「ハハハ♪ じゃ~時間もあるし全部やるか♪」
「マジで!やった~!!」
俺急いで準備してくると少年が家に戻って行った。
直ぐ戻って来るからね!っと凄まじい勢いで階段を駆け上がって行く。
「はは・・・何か・・・龍聖に会いたくなってきたな・・・」
過去に戻って来た事の最大の悩み。
俺は、それ程、自分の息子を愛していた。
こうなってしまったからには不可能なのだが、他人には分からなくても俺にとってはつい最近までのリアル。
自分の人生を全て龍聖に捧げたと言っても過言ではない。
俺が物思いにふけっている時だった。
「あれ?神山君・・・どうしたの?こんなところで?」
突然声を掛けられ顔を上げると俺の初恋の人が爽やかな笑顔を浮かべてそこにいた。
その衝撃に目を見開いて固まってしまった。
『志津音だ・・・全然変わってない・・・記憶のままだ・・・』
「クスクス♪どうしたの?ボォ~っとして?」
「え!? あれ? 志津音こそどうしたの?」
「どうしたのって・・・フフフ♪ だってここ私の家だもん♪」
そう言えばそうだった・・・さっきの子供のせいでスッカリ忘れてた・・・。
不意を突かれ慌てて言葉を繕う。
「そうなんだ♪ ちょうど良かった! 実はちょっと話があったんだよね。」
「話? 良いけど・・・」
っとその時、階段を駆け下りる音が聞こえて来た。
「お待たせ兄ちゃん!」
「おう!そうそうさっきの質問だけど、この子と遊ぶ事になってたんだよ♪」
「へっ?そう・・・なんだ・・・知り合いだったの?」
「ん?」
「あ!姉ちゃん!おかえり!俺この兄ちゃんと遊びに行って来るから♪」
「姉ちゃん? もしかして兄弟だったりする?」
「フフもしかしなくても兄弟だけどね♪ そっか~健一と知り合いだったんだ~知らなかったよ♪ あっ!だったら私も一緒に行こうかな!」
「えぇ~良いよ姉ちゃんは来なくても」
何を言いだすんだ弟よ!こんなチャンス二度とないんだぞ!
「えぇ~良いじゃない! ねぇ~神山君。」
「お・おぉ・・・良いんじゃないのか?」
『ハッキリ言って大賛成です。って・・・それにしても俺って緊張しているのか?』
「本当~♪じゃ~着替えてくるから少し待っててね♪」
そう言って階段を上がって行く。
「えぇ~兄ちゃん本気で言ってんのかよぉ~」
「よ~し・・・だったら・・・俺の本気を見せてやるから我慢しろ・・・なっ♪」
「本気~?そんなに凄いのか?」
「そうだな・・・お前の姉ちゃんも見た事ないし学校の誰も俺の本当の姿を知らないんだ・・・が、特別に・・・健一に見せてやるよ♪」
「おぉ~マジで!カッコいい~! じゃ~姉ちゃんも来て良いや!」
そして、戻って来た志津音の姿に固まってしまう。
「お待たせ♪・・・あれ?どうしたの神山君?」
「あ・ああ・・・何でもない・・・」
龍徳の目が志津音の服装に釘付けだった。
太ももが露わになるほど短いズボンにタンクトップ、その上に柑橘系のアロハシャツを腰元で結んでいる。
前髪には可愛らしい髪留めが光っていた。
弾けんばかりの健康的な肉体美に心が奪われてしまう。
『うわ・・・女性経験の多い俺が・・・嘘だろ・・・』
何百人と女を抱いた龍徳は、女性の服装程度で心を奪われる様な事など経験した事が無い。
それも相手は中学生。
いくら初恋の女性だと言っても自分が信じられないのだ。
実際は中身がオッサンなのだから中学生になど犯罪者の気持ちになってしまう。
「その髪留めって・・・」
「あぁ~覚えてくれてたんだ~♪ 何にも言わないから忘れてたのかと思った~♪」
それは、小学6年生の時にこの公園で毎年開催される盆踊りに志津音が友達と3人で遊びに来ていた時の事。
「ねえ~最後に射的やらない?」
「玲子、何か欲しいのあったのぉ~?」
「あれ可愛いなぁ~って思って♪」
そう言って女性用の髪留めを指さした。
「うん♪可愛い♪」
「おっ!お志津も興味を持ったわね!」
「じゃ~私もやるわよ~!」
「りっちゃん負けず嫌いだもんね~♪」
そう言って射的を始めるも・・・
「あ~んダメだった~!」
「あ~あ~私もダメ~」
「お志津は?」
「最後の一つだから慎重に~・・・」
パン!っと最後の球を放つも・・・
「あ~外れちゃったぁ~欲しかったのにぃ~」
「やっぱり取れない様に出来てるのよ!」
「そうなのかなぁ~」
「あぁ~もうこんな時間だ!早く帰らないとお母さんに怒られる~!」
「うそぉ!もうこんな時間なの!帰んなきゃ!」
「えぇ~もう帰っちゃんのぉ~?」
「ゴメン!お志津。ここでバイバイで良いかなぁ~?」
「私も!ゴメン!もう帰るね!」
「うん♪ 楽しかった♪ 玲子!りっちゃんまたねぇ~♪」
そして、友達が帰った後も先程の髪留めが気になって見ていると
『どうしようかなぁ~もう一回やろうかなぁ~・・・あれ?神山君だ・・・一人なのかな?』
目線の先にはキョロキョロと周りを気にしながら龍徳が射的に並んでいるが、近くに同級生の姿わない。
『なんか声掛けるのも何か恥ずかしいなぁ・・・』
「おっちゃん1回!」
「はいよ!」
そして、小さい物からコツコツ落としていく
『わぁ~神山射的上手なんだぁ~』
すると下の方の髪留めを狙い始めた。
『あれって髪留めを狙っているのかなぁ?』
すると
「よっしゃー!」
「お~!坊主凄いな! ハイ景品!」
『わぁ~良いなぁ~お姉さんにでも上げるのかなぁ~』
するとまたしてもキョロキョロと周りを見渡していた。
『やっぱり誰かと来ているのかな?』
暫く誰かを探している様だったが、やがてショボンと肩を落としてトボトボと志津音のいる方に歩いてきた。
「神山君こんばんわ♪」
その声に顔を上げる龍徳の目に着物姿の志津音が立っていた。
「・・・・・」
「フフ♪どうしたのぉ?ボォ~ッとして?」
「志津音・・・い・いたんだ!?」
「そりゃ~お祭りだもん♪いるわよ~♪」
するとまたしても周りを気にしながら・・・
「ちょ・ちょうど良かった・・・あの・・・その・・・これ良かったらどうぞ!」
そう言って先程取った髪留めを志津音に渡す。
「えぇ~ダメだよ~」
「僕には必要の無い物だし・・・いらないなら捨てても構わないから・・・」
「本当に私がもらっても良いの?」
「う・うん・・・」
「どうもありがとう・・・」
そう言って髪留めを自分の前が身に留めて見せた。
「どうかな~? 変じゃない?」
「・・・あ・・・うん・・・とっても可愛・・・ぼ・僕帰る時間だから帰るね!」
「あ・そうだよね!私も帰らないと・・・じゃ~神山君夏休み開けにまた学校で♪」
「うん♪ 学校で!」
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