心理学的に語る創作論 ~作文からスキーマまで~
わりと基本の話だからリラックスして読み進んでってね。
古今東西さまざまな創作論がありますね。シェイクスピアやプロップなど有名処から、創作者界隈で話される知識によらない説まで様々。
そんなことを思い出しながら、ふと心理学的に創作論を書いてみようかなと思い立ちいろいろ調べてみた次第。ここに記した文言がアナタのお役に立てれば幸いです。前書きはシンプルに、早速書いていきましょう。
:読みやすい文章とは?:
学校の授業で習う作文は重要だ。日本語で物を書く際の基本であり文法や漢字の使い方や句読点の扱いを学習できる場でもある。とくに段落ごとにテーマを用意し序盤に結論を述べ根拠を次に、具体例を提示し最終的なまとめで締めるPREP法などを小学生のうちに学べる作文の授業は頻繁に宿題としても良いくらいだ。この経験はオトナになってもなどという未来の話ではなく高校、あるいは大学などでレポートを書く際に有用であるし、とくに論文としてまとめるには小学生時に学んだ作文の書き方がとても大事になる。論文ははじめにテーマの前提知識を書き、そこに自らの疑問をつけたす。疑問を解決するための実験方法を立ち上げそれらを実践し、得られた生データを統計にかけたり分析したりした結論をこと細かく記した上で新たな考察をする。この繰り返しこそが論文の、ひいては科学の進歩をさらに進めることとなるだろう。将来的に外国語で物を書くとしても日本語で文章を書いたという経験が大きな財産となる。世界には数百数千という言語があり表記体系も異なるとはいえ、作文で学んだ事柄がまったくの無駄になるということは無い。むしろ物を書くという行為は世界共通で形式があり、日本作文との差を知ることでスムーズに着手することができる。国々によって作文の論法も様々であるだろう。とあるレポートによれば、国によって作文に対するイメージが異なればそれにかける時間、文法様式、さらに国ごとに評価者の採点基準さえ異なる場合もある。しかし物を書くという基本は変わらない。作文とは自らの頭にある思考を整理し、それらを自分や他者が理解できる形にまとめる表現方法を指す。すこしでもこれらの技術を向上させたければひたすら書くという他に手段は無い、ただし創作における知識をもつことで他者が読みやすい文章を書くことにつながることは疑いようもない。たとえばこの文章はあえて読みにくいように作っている。すらすらと読み進められた人間はいないだろう。もしそんなことを言うのであれば、その人は理解できてないのに理解したというようなざんねんな生命体であるに違いない。いや、決めつけは良くない。とはいえこの文章が読みにくいことは確かだ。いくら奇をてらった文体を目指そうともこのような書き方を勧める指導者はいないだろう。さて、ここからが本題だが、アナタにはここに書きなぐった文章を眺め『どこで段落を区切れば良いのか? どこに句読点を足すもしくは引けば良いのか? 漢字の使い方や頻度は適切か? 別の書き方にする方法はないか?』などを追求してみてほしい。だれから学ぶ必要などなくこの文作文がおかしいことがわかってるのだから、おかしなところがどこかを観察すれば自ずと答えが見いだせるはずだ。そしてアナタならではの文章を完成させてこそ善き実践となるのだ。
SPRINGER LINK、Steve Graham & Gert Rijlaarsdam:Writing education around the globe: introduction and call for a new global analysis
(注:英語)
ttps://doi.org/10.1007/s11145-016-9640-1
:疲れただろうからQKたいむ:
いいや、自分でアレ描いててめっさ疲れたのでね。
たぶんアナタも目がシパシパしてるっしょ? っつーかここまで読んでくれた? ぶっちゃけ読みきれなくてページ閉じちゃった的な子もいたと思う。アナタは上に書いた文字を読み切った勇者だおめでとう! 的な気持ちでいっぱい。
さて、目が疲れただろうからクールタイムに入りましょう。わたし個人の思い出話っていうかまあ、作文についてのアレコレになるかね。
わたしはいい年したオッサンだけど、ここ『小説家になろう』が法人化というか有名になった頃くらいからいろいろ書いてたのよ。
まあ、一次選考すら突破できてないんだけどね。当時は『灼眼のシャナ』全盛期で、あっちこっちで学園+非日常モノが流行ってた感じ。わたしも例によってそういう話ばっか書いてました。いまの異世界ファンタジー並にそういうのばっかだったの。
いくつか作品を書くなかで思い入れというか、自分で書いてて記憶に残ってる作品はあったりするのよ。そのなかに『学校×ホラー』っぽい題材の短編があったの。
ふつうのラノベ30~40ページぶんくらいかな。控えめなおとこのこが自分をイジメた人間のタヒを願ったらこっくりさん的なナニカがばりっと解決してくれる感じのストーリーなんだけどね?
こっくりさんって知ってる?
終盤にみずからもアレになっちゃうんだけど、その際1ページに1文字デカデカフォントで『◯ね』ってこっくりさんからのメッセージ的な感じで書いたの。で、次のページには手書きのえんぴつを寝かせて、こう、チョークを倒して書くような感じでサーサー描いて暗闇っぽい演出をしてみたのよ。
これ斬新じゃね? これイケんじゃね? 当時のわたしはそう思いましたね。結果はふつうに一次選考すら突破できなかったんですけどね。
しかも、後日なんかネット上で1ページにデカデカ1文字使う的なことやったラノベが実際にあったっぽいのを発見して「ああ、そういうのは先人たちが既にやってんだな」的な感慨に耽りましたわ。まあ、2010年ちょっとくらいの話です。
さて、いい感じにリラックスできたでしょうか? じゃあまた難しい話にいくのでメンドウだって方はこの際ですから慣れてください。
:なにが言いたいんだい?:
心理学的に、とか書いておきながらここまで心の字すら出てこなかったので、こっちの段落ではまず心理学的な用語を紹介しましょう。
『スキーマ』って言葉があります。アナタが今までに培ってきた知識、経験、それらすべてを合体させた『アナタがもつ先入観、世界に対するイメージ』です。
部屋を暗くして、懐中電灯で顔を下から照らしましょう。なんだか怖い印象がありませんか? 怖いでなくてもなんか不気味というか、どことなくしっくりこないとかおかしさを感じますよね? これがスキーマです。
アナタの脳が光は上から来るものという常識に反する状態に違和感を覚えているのです。この不安感はホラー的な方面でよく活用されてますね。人間が人間でない形や動きをしたり、あるいは物事の説明をする際にもスキーマは役立ちます。
ある単語が出てこなくても、たとえば「ボールとバットを使ってやるスポーツ」と相手に伝えれば、それが『野球』だとわかるでしょう。それまでの経験で野球に触れているからこそ伝わるのです。逆に、野球が行われてない国や地域でこの説明をしても伝わりません。もしかしたら「クリケット?」と尋ねられるかもしれませんね。
さいしょにクリケットが浮かんだって方います?
さて、上記スキーマの概念は創作的にも応用できます。物書きには、よくダイレクトにその言葉を伝えず、キャラのようすや遠回しな文言で表現するという手法がありますね。
「今夜が峠です」からの「残念ですが……」のセリフ以上は描写しなかったり、ヤることヤった証としてメタファーを用意したり、なんだったら悲しい場面で雨を降らせてみたり、それが極限までイッちゃうと逆に複雑怪奇な文言になってきますがそこまで追求しなくてもええです。ようは遠回しな表現こそ雅で風情だねって感じ。
が、それも伝わらなければ意味がない。たとえば以下の文章を読んで『何について説明してるのか?』を考えてみましょう。
――その手順はとても簡単である。はじめに、ものをいくつかの山に分ける。もちろんその全体量によっては、一山でもよい。次のステップに必要な設備がないためどこか他の場所へ移動する場合を除いては、準備完了である。一度にたくさんしすぎないことが肝心である。多すぎるより、少なすぎる方がましだ。すぐにはこのことの大切さがわからないかもしれないいが、めんどうなことになりかねない。そうしなければ、高くつくことにもなる。最初はこうした手順は複雑に思えるだろう。でも、それはすぐに生活の一部になってしまう。近い将来、この作業の必要性がなくなると予言できる人はいないだろう。その手順が終わったら、再び材料をいくつかの山に分ける。そして、それぞれ適切な場所に置く。それらはもう一度使用され、まあこのすべてのサイクルが繰り返される。ともあれ、それは生活の一部である。――
アナタはこれが『何に関する説明』かわかりましたか? ――わからないでしょ?
上記の説明は『洗濯』に関するものです。通常の服と下着を仕分けするの大事だよね。洗濯機が使えないならコインランドリーに以下なきゃならんし、そうでない場合は準備完了だよね……答えを知った上でもういちど上記の文章を読んでみてください。
理解できるでしょ? 答えを知ったらストンと納得できる。これがスキーマのすごさです。アナタがもつ洗濯に対するスキーマが、上記の説明を読むことでイメージされ「ああ、そういうことね」と理解できる。ここ『小説家になろう』では多くの異世界転生ストーリーが流行してるけど、それを読む人が『異世界転生スキーマ』をもってるからこそオヤクソクの展開を理解でき、察することができ、その後の展開を期待してくれるんですね。
上記はスキーマに関する有名な論文から参照されたものです。いちおう英語の元論文へのリンクあるけど英語だしPDFファイルだからアレかな? っと思ってスキーマと並んで解説してるページもシェアりんぐしてみます。
スキーマ。創作ではとくに重要な概念でしょう。異世界転生モノのオヤクソクを理解できるのは異世界転生スキーマがあるからですし、逆に言えば、それまで異世界転生モノを読んだことのない客層をターゲットにしたいなら、こういったスキーマを避けて物語を書かなければなりません。
アナタがターゲットにする読み手はどのようなスキーマをもっているでしょうか? どのような経験をして、どのような知識をもっていると考えるべきでしょうか? ――そういった意味だと、少なくとも学校生活などは経験済みで、いわゆる『学校あるある』的なネタは通じやすいでしょう。
小学校じゃ給食の残り物争奪戦に勝ち続けてきたとか、購買部の人気メニューはナニがあっても手に入れるヤツだとか……部活動は人により様々ですからそれらのあるあるをネタにするのは難しいかもしんないね。まあ野球を題材にした作品なら『野球部あるある』などは仕込んでおくと良いでしょう。監督が来たときだけヤケに声がデカくなるとか、意外と雨の日の練習のがキツいとか、ね?
熊本大学大学院 教育システム学研究センター:スキーマ理論に関して
ttps://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/3Block/08/08-2_text.html
ミネソタ大学 認知心理学研究センター(英語)
ttp://www.cogsci.umn.edu/docs/pdfs/Bransford1972-JVLVB.pdf
:漢字も使いよう:
人間が文章を読むとき、それぞれの単語をまとまりで読みます。
『私の名前は犬物語です』という文章の場合は『私の・名前は・犬物語・です』くらいの認知にワケられるでしょう。これをチャンクと読んだりしますがテストには出ないので覚えなくてもだいじょぶでーす。
文章を読むときに区切りをつける。日本語でとくに重要なのは『漢字』の存在です。ひらがな、カタカナ、そして漢字。これらをうまく使い分けると、読み手さんによりスムーズに読み進めさせることができます。
悪い例代表としたら『彼はこの先生きのこれるか?』っていう文章。これちっと読みにくいよね。
これは脳がチャンク的に『彼は・この・先生・きのこれるか?』みたいに区切っちゃったせいだと思われます。きのこるってなんだ?
これを読み手にスムーズに読ませたいなら『彼はこの先……生き残れるだろう?』みたいに区切ると良いでしょうが、どーしてももとの文章のままがいい! って方は『彼はこの先生き残れるか?』と漢字を使うと良いでしょう。この『この先生きのこるには』っていう例はあまりにも有名なのでググってみてください。
漢字にはこういったややこしさを解決するパワーがあります。たとえば『はははははじょうぶだ』というワケワカメな文章も『母は歯は丈夫だ』と漢字を使えばかなーりわかりやすくなるよね。
が、漢字を使いすぎるのもおカタい雰囲気をもたせてしまうので使い所が肝心だったりする。文字ひとつでキャラクターの性格を表すことができ、たとえば「ありがとう! キミってとてもたよりになるね!」と書けばフランクな性格を演出でき「有り難う。この恩は決して忘れない」と書けば義理堅いキャラクター的な印象を狙えるでしょう。
日本人がもつひらがな、カタカナ、漢字それぞれのイメージやスキーマをうまく利用しましょうね。魔族系キャラに「く、くそ――たかが人間がぁ!!」と叫ばせるか「ク、クソ……たかがニンゲンがァ!!」と叫ばせるかはアナタの考え方次第です。
「く、くしょぉ……にんげんめっ、おぼえてろぉ!」 ――なんかかわいい。
:けっきょくモノは使いよう:
ふだんの生活上、スキーマ的な概念はとても役立ちます。わたしたちは今までの人生経験をとおして『流れ』を理解できるようになるし、見たことのない漢字でも部首や部品、その文脈から自然と出てくるワードをスキーマから推察することができます。「彼は普段の行いの悪さにより顰蹙を買うことになったた――えーっと、この漢字は"ひんしゅく"って読むのかな?」みたいな感じにね。
物を書くには主題が肝心です。どういった読者層にどのような娯楽を与えたいか。自分が描きたい物語はどの層がもっとも支持するか。それらを考えると、読み手によった書き方が見えてくるでしょう。
読む人がどんな知識や常識をもって、どのような気持ちや期待でアナタの物語を読み進めていくのかイメージしてみましょう。考えるだけじゃなくイメージも大切だよ!
ここまで長々と創作論っていうか文章の書き方的な感じになっちゃったけどどうでしょう? アナタに何かしらの道筋を提供できたでしょうか? もしそうであったなら幸い。コレが良かったアレが良かった、もしくは物足りないとかこういう知識ほしいって方いましたら気軽にコメントいただければ何よりでございます。
創作には書きたいという想いこそ大切です。ここで紹介したアレコレはあくまでテクニックやカギのひとつとして受け止め、どうぞアナタならではの物語を展開していってください。アナタの創作物が世界に羽ばたいていくことを心から願っています。
読ませて、イメージさせて、おもしろいと思ってもらえばいいんだってさ。




