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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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【心理学】ひっさしぶりに認知バイアスの話でも書こうか

アナタの中(脳)に潜む盲点、暴きます。

 脳は自己中心的です。ぶっちゃけガチでジコチューです。その代表的なのは『擬人化』というものが挙げられるでしょう。犬がワンワン言ってるとき「いま〇〇って言った!」なんていう方が多いですし、なんらかの問題行動を「犬には上下関係があるから」と解釈してみたり――まあ、笑うとか喋るってのは『犬がそう学習(・・・・)した』からなんですけど、そういうのは犬関連動物行動学の本でも読んでください。


 実際にしゃべる犬がいるかどうかってのはさておき、こういう『なんでもかんでも"ニンゲン"という枠に据えたがる』のが人間という生き物です。犬には犬の世界観がある。走るスピードは人間より遥かに速い犬ですから、もしかするとわたしたちにとって光のスジが走ってるようにしか見えない速度の景色でも、犬にとってはまだまだスローモーションでハッキリ見える世界なのかもしれないですし、鳥が自由気ままに飛行してる様を見て「あいつらはいいよなぁ、自由に飛べて」と人間が思ってる隅で、鳥も「ハァハァ、マジで空飛ぶの疲れるぅ、地面を素早く歩けるあの生き物すげーなぁ」なんて思ってるかもしれない。


 脳は『他者』というものをまったく理解できないのですよ。


 さて、今回はそんな脳みそちゃんの思考のクセ(・・・・・)である『認知バイアス』について書いていこうと思います。個人的に、数ある心理学系統の知識で好きなジャンルでして、こういうのを読むたびに「自分はこうならないように気をつけよう」みたいな気持ちにさせてくれます。こういうのを知ると他の人に対しても寛容になったりするのですよ。ってことで、今回はどんなテーマで書いてこうかなぁ……。




 アナタは『ハリケーン』ってご存知ですか?


 アメリカ版の台風ですね。ちなみに、台風もハリケーンもサイクロンも『超やべー熱帯低気圧』を指しますが、地域により名称が異なります。ただしハリケーンと呼ばれるには台風の倍程度も勢力が強い必要があり、それだけでハリケーンのヤバさがわかります。だからこそ、アメリカで発生するハリケーンはニュースになるレベルの自然災害を生み出すわけですが、台風に関するより詳しい解説は『気象庁』内ページにてチェックしてみてください。


・気象庁、台風に関する"よくある質問"集

ttps://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq14.html


 さて、このように強くてヤバいハリケーンですが、実はハリケーンによる被害の大きさ(・・・・・・)に認知バイアスが絡んでいる事実をご存知の方はいらっしゃるでしょうか?


 2014年6月。アメリカ、プリンストン大学で行われた調査によれば『女性名のハリケーンは男性名のハリケーンより致命的な被害を生む』ということがわかりました。


 アメリカは毎年ハリケーンを男女名交互で名付けしていました。日本人でも馴染み深いのは2005年に発生したハリケーン『カトリーナ』でしょう。最大風速280キロ、最低気圧900程度ととんでもない規模です。その後も多くのハリケーンがアメリカを襲い多くの犠牲者を出してしまったのですが、それら60年分以上のデータを集計。死亡率を比較した結果上記の結論に達したのです。これはどういうことなのか? ――認知バイアスの恐ろしいところです。


 至ってシンプルな理由。女性名は『優しそう』なイメージがあるからです。だからこそ、人は女性名がついたハリケーンが近づいても自身を保護する行動を控えてしまい、結果として手遅れになり、犠牲者が増える……これはハリケーンだけに絞られた問題ではありません。なぜって、人は肌の色で差別する種族だからです。え? 日本ではそんなことないって? ――ほんとうにそうでしょうか? その思い込みこそ認知バイアスなのではないでしょうか?


 こういった『ラベリング』は商売的な方向でも利用されています。


・スキンケアオイル

・豆乳

・アップルジュース


 これが下記みたいな感じになると魅力マシマシになりますよね。


・国産オーガニックスキンケアオイル

・有機栽培大豆製豆乳

・濃縮還元純度100%アップルジュース


 どれもまあ「なんかわからんけどすごそう!」な商品ですね。わたし自身国産オーガニックのどこがすごいのかわかりませんし、有機栽培と普通栽培ってどう違うのか、有機栽培だとどんな変化があるのか知りませんし、濃縮還元ってどんなことをやってるのかわかりません。でもなんかすごそうですね。たとえば『ジンクピリチオン配合!!』なんてセールスされた日にゃ「すげえ!」つって反射的に買ってしまいそうな勢いがあります。


 ああ実際問題、オーガニックや有機栽培に関しては様々な説や問題があるので、興味ある方は各自でググっていただければ幸いです。ってかさ、知り合いが『中国産〇〇』って書かれた広告をみて顔を渋らせてたのに対し『上海〇〇』と書かれてた商品を喜々として手にとってた姿を見てジーンと来ちゃいました。いやそれどっちもけっきょく中国産だよね? みたいな。


 差別や偏見は『まずラベリングからはじまる』ということを覚えておいてください。ある時「あいつ〇〇だよねぇ~」なんていう何気ない言葉からはじまり、それがウケたことでみんなの中で広まっていきいつの間にか(・・・・・・)それが公然の事実(・・・・・・・・)になってた(・・・・・)、なんてこともありえます。っていうかフツーにあります。アナタの周囲でもこのパターン、ありませんか?


・ハリケーンに関する研究(英語)

ttps://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.1402786111




 脳みそはは『最終的な結論』を重視する生き物です。つまり、得てして経過を無視しちゃう傾向があるんですよね。たとえば以下の文章を比較してください。どっちが『推論(・・)として正しい』でしょう?


① ツバメは昆虫ではない。ツバメは鳥である。したがって鳥は昆虫ではない

② 昆虫は鳥ではない。ツバメは昆虫である。したがってツバメは鳥ではない


 どうでしょう? アナタは『①』と答えたのではないでしょうか? ――実は推論として正しい(・・・・・・・・)のは『②』です。いやいやおかしいだろと、だっておまえツバメが鳥じゃないワケが無いだろうと。けどちょっとまって。『①』に関して『ツバメ → 父』、『昆虫 → 公務員』、『鳥 → 男』に書き換えてためしてみましょう。


① 父は公務員ではない。父は男である。したがって男は公務員ではない


 どうでしょう? アナタは結論を見て「確かに」と思えるでしょうか? こう書くと結論が前提ふたつ(・・・・・・・・)をもとにして得た(・・・・・・・・)ものではない(・・・・・・)とわかるはずです。


 終わり良ければ全て良し、という言葉があるように、脳みそは『最終的な結論』がキレイだと、その過程がおかしくても納得しちゃうどころか、より高く評価しちゃうんです。『②』は前提条件である『ツバメは昆虫である』が間違っているだけで、推論としては正しい(・・・・・・・・・)のですが、結論がおかしい上、その過程にまで問題があるので「なに言ってんのおまえ?」的な反応をいただいちゃうのですね。


 これけっこう大事な認知バイアスで、例によってセールスな世界でも大活躍? しています。今なんか思いついたのですが「日光の水はおいしくてキレイです。日光のお膝元で製造したチョコレートをご賞味ください!」なんて文言はいかがでしょう? 魅力を感じましたでしょうか? 個人的にチョコレートの素材としてお水がどんくらい役立ってるのか知りませんが、なんかチョコレートの魅力が増したような気がします。そもそもそのチョコレートを製造するのに『日光の水』を使ってるかどうかわかんねーけどな。




 さて、ここで紹介した知識は『池谷裕二』氏著作『自分では気づかない、ココロの盲点(完全版)』に記されているものに加え、元の論文だったり他の例などをわたし個人で追加したものです。この本はめちゃ面白いですよ。なんてったって基本80の認知バイアスに200を超えるプチ用語解説、50の錯視解説などももりこんだ超完全版なんですから。もうこれは買うっきゃないでしょ。


 あ、別にセールストークとかじゃなくてね、純粋におすすめだし個人的に好きな著者だからってだけです。こういう著書を読んでくたびに、わたしも自分の脳みそちゃんとうまく付き合おうとしてるんですが、なかなかどうしてうまくいかないものです。


 人間ってのは、本来そういう生き物なのかもしれませんね。

猛烈にチョコ食いたくなってきた。

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