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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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【呼吸】吸って吐く。これだけで命は存える

アナタがいつも何気なく行ってる呼吸。これには超がつくほどの重要な役割があります。

 酸素を吸って二酸化炭素を吐く。呼吸をざっくばらんに表現してしまえばこんな感じになります。しかし、単なるガス交換を掘り下げてみると、生命が自らを維持する仕組みの奥深さを実感できるでしょう。ためしに息を止めてくださ――いや冗談ですよ。酸素供給が絶たれるのは健康上よろしくないのでおすすめしません。まあ、スポーツ的なトレーニングの一環としてチャレンジするなら止めはしませんが。


 『酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す』なんてカンタンに書いちゃってますけど、じゃあいったいどうやってるんだ? っていう話ですよね。まさか細胞が酸素をキャッチして体内に吸収しちゃうとか? 実は酸素と二酸化炭素だけが通り抜けられる"穴"があったり? ――そういったナゾも含めて、今回は呼吸のふしぎについてちょこっと紹介していきましょう。




 通常の呼吸なら、人は1日に2万回以上、生涯で見れば6億回以上も呼吸を行います。日頃瞑想やヨガなどでゆぅぅっっっっっくり呼吸でもしない限りは、アナタも一生の間でこの回数以上の呼吸を行うわけですね。肺に空気を満たしガス交換を行うのが主な目的ですが、身体ではありとあらゆる細胞もまた呼吸をしています。


 実は呼吸には『外呼吸』と『内呼吸』があったりします。今回紹介する吸って吐く行為は外呼吸で、内呼吸は細胞がミトコンドリアを介して行う呼吸ですね。こっちも書くとまたややこしく長くなりますので割愛。とはいえ、外呼吸によって身体にどんな変化が起こってるのかは書かんといかんと思うので、呼吸により体内でどのような循環(・・)代謝(・・)が起こってるのか書いてみましょう。


 呼吸のルートは以下のような感じです。


① 吸気により肺に空気(酸素)が侵入

② 肺胞より酸素が体内へ

   → 赤血球(ヘモグロビンが運搬する

③ 血流にのり全身へ(循環)

④ 細胞に引き渡され、ミトコンドリアが"内呼吸"(代謝)

   → 糖質や脂肪酸 + "酸素" = 二酸化炭素 + 水 + エネルギー

   → 二酸化炭素を赤血球(ヘモグロビンが運搬する

⑤ 血流にのり肺へ

⑥ 肺胞より二酸化炭素が体外へ

   → 赤血球(ヘモグロビンは再度酸素を受け取る

⑦ 呼気により空気(二酸化炭素)を体外へ吐き出す


 呼吸に使う管は1本しかないので、その管で呼気と吸気を行うことになりますね。で、肺(肺胞)に至らない分の空気はいわゆる「吸い込んだけど使わない」ってことで、肺以外の気道スペースを『死腔(しくう)』なんて読んだりします。なんかカッコイイ技名みたいだな。死腔豪掌破! みたいな?


 言うまでもなく、呼吸の主人公は肺にあります。が、肺はただの入れ物(・・・)に過ぎず、実際におしごとをするのは肺胞と肺内部にある毛細血管の数々。このヘンをもうちょい深掘りしてみましょう。




 肺胞は『肺』により包まれておりますね。で、この肺は2層構造になっていて、外側を『壁側胸膜(へきそくきょうまく)』、内側を『臓側胸膜(ぞうそくきょうまく)』と呼びます。それぞれの膜の間は潤滑油となる『胸水(きょうすい)』で潤っており、スムーズな膨らみを実現しています。肺は左右についてますが、心臓が左側にあるということで、左側の肺はちょっぴり小さかったりします。かわいい。


 肺の内側に存在するのが『肺胞』ですね。ぶどうの房のようにポコポコある肺胞は両面合わせてなんと3~5億個あるとも言われています。これぜんぶ広げるとテニスコートはんぶんくらいの広さ(70~100平方メートル)になるんだぜ。ぶどうの房みたいに広がってるので当然すき間があります。そのすき間はすべて『間質』という液体で満たされており、緩衝材としての役割と、スムーズなガス交換のアシストをしてくれます。


 肺胞の外側は『肺胞壁(はいほうへき)』と呼ばれるコンドームよか薄い(0.3マイクロミリ)上皮細胞で覆われています。そこには、まるで壁を伝う植物ツタの如く毛細血管がひしめいており、だいたい肺胞のはんぶんくらいを包んでいます。メロンの表面みたいな見た目なんやろなぁ。この肺毛細血管を通してガス交換が行われるわけですが、ここで渋い仕事をしてくれるのが先ほど紹介した間質。空気を吸って肺が膨らむと、間質が動いて肺胞と毛細血管がより密着しやすくしてくれるのです。


 密着した時が呼吸の本番です。息を吸った時肺胞と毛細血管の距離は0.5マイクロメートルほどになります。もう目に見えないレベルですね。両者がほぼ"密着"と言って良いレベルまで近づいたとき、肺胞と毛細血管それぞれの『分圧差(濃度差)』によりガス交換が行われるのです。分圧差はどう解説したものか……っていうか自分でもよく理解できてないし……まあ、うまく説明できてるかわからんがこんな感じでいいか。


 アナタは『浸透圧』という言葉をご存知ですか? 同じ水の量でもそれぞれに含まれる物質が異なると、その濃度を合わせようとそれぞれの物質が移動しちゃうアレです。知らないって方は以下の動画をご参照ください。


・YouTubeチャンネル、出直し看護塾 より

ttps://youtu.be/4REFkNG6oTE


 肺胞でもこれと同じような現象がおこります。こちらの場合は酸素と二酸化炭素(気体)なので『分圧差(濃度差)』から移動することになりますが、とりあえず『毛細血管と肺胞にある物質の濃度差を同じにしよう!』ってことでガス交換が行われるんですね。肺胞は酸素の分圧が高く二酸化炭素の分圧は低い。けど毛細血管側は酸素の分圧は低く二酸化炭素の分圧は高い。じゃあいっしょにならしてこーぜ! っていう肺胞と毛細血管の会議の結果だと受け止めてください。


 ちなみに、こういう動き(器官間の移動)を生物学的にかっこよく言うと『拡散』だそうですよ。


 よく「赤血球が酸素を運んでるんだよ」と説明されますが、実際には赤血球を構成するタンパク質『ヘモグロビン』にひっつく形で運搬されます。つまり、ガス交換の肝は毛細血管中にどんだけヘモグロビンがいるかっていう塩梅になるのですが、ガス交換は思いの外マッハ速度で完遂されます。人が激しいスポーツをしてハァハァした時、杯が膨らんでる時間はたったの0.25秒程度ですが、ふつうの空気を吸った時に分圧差でガス交換が行われる時間もまた0.25秒程度です。まあ最短であってすべてがそうってわけじゃないけどね。ただそんくらいの時間があれば血中のヘモちんが「あ! さんそだ!」つってキャッチしてくれるので、激しくハァハァしても走ってられるのは素早いガス交換のたまものですね。


 ありがとうヘモグロビン。




 息を吸って吐く。たったこれだけの行為ですが、わたしたちはソレ無くしては生きられません。酸素供給の遮断はすなわちエネルギー生産の遮断。そして体内の酸素飽和度がみるみる下がっていき、すぐにあの世とこんにちわしてしまいます。顔中心にあるふたつの穴(とひとつの穴)、これを数分閉じただけで人は逝く。この事実だけでもなんかゾワゾワしてきませんか?


 ちなみに、1分くらい息を止めてもダイジョーブだからって『酸素濃度が少ない空気を何回吸い込んでも平気か?』なんて実験はしないでください。イッパツで気絶します。現状地球の空気中酸素濃度は21%未満ほどですが、16%以下あたりから恒常性がおかしくなったり、単純計算ですら間違えたりなどの不具合が現れ始めます。山上りはジワジワ酸素濃度を減らしていく拷問みたいなものなので、必ずそれ相応の準備を整えていきましょう。海抜0メートル地点の酸素濃度を『100%』とすると、だいたい100メートル上昇ごとに1%減少するのでそれだけ気をつけてね。


 アナタの登山ライフを応援してます。

エベレストとかどんだけ無酸素環境なんや……。

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