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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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【筋肉】引き伸ばされてもきんにくはがんばる

ネガティブ動作がなんで重要なの? って話。

 筋肉は"縮む"動作しかできない。


 わりと知られてない事実だと思います。たとえば『力こぶをつくる動き』をしてみましょう。この動きは『上腕二頭筋』が収縮することで起こります。では腕を引き伸ばしてみましょう。はい、上腕二頭筋は伸ばされ、かわりに『上腕三頭筋』が収縮しますね。これ、勘違いしちゃいけないのは『上腕二頭筋が伸びた』のではなく『上腕三頭筋が収縮した』ので腕が伸びたんですよ。


腕を伸ばすには――

 ✕ 上腕二頭筋が伸びる

 ○ 上腕三頭筋が縮む


 筋肉は収縮することしかできません。筋肉が生み出すパワーのベクトルは一次元なのです。さて、ここでひとつ疑問がありますね。


 『腕立て伏せ』をしてるとき、わたしたちは上腕二頭筋を使っているでしょうか? ――腕立て伏せは『上腕三頭筋』の収縮により身体を持ち上げる自重トレーニングです。しかし、腕を立てた状態から伏せる時は腕を曲げていく、つまり『上腕二頭筋』を鍛える時のような動きになっています。しかし、この時上腕二頭筋はほとんど使っていません。使っているのは『上腕三頭筋』です。


 なんだよ、やっぱり伸ばす時も使ってるんじゃねーかと、そう思いますよね? しかし、これ実は上腕三頭筋にとって『収縮』なのです。もっと正確に書くと、腕立て伏せの際、腕を曲げていく動作の時上腕三頭筋は『引き伸ばされる動きに対抗して収縮している』動きをしています。


 腕立て伏せですから、曲げていく際力を抜いちゃうとイッキに腕が曲がってしまいます。それを防ぐため、上腕三頭筋はゆっくりブレーキ(・・・・)をかけながら引き伸ばされているわけです。これを筋肉用語で『伸張性収縮』と呼びます。筋トレ用語としては『ネガティブ動作』がコレにあたります。


 ブレーキをかけつつ、急激に引き伸ばされぬよう収縮している。この動きにどのような効果があるのか? 本日はそんな話をしていきましょう。ちなみに、腕立て伏せでも『ドルフィン・プッシュアップ』など上腕二頭筋を鍛えられないこともないですが、基本的に腕立て伏せで力こぶを鍛えるってのはむずかしいです。おとなしくダンベルカールしときましょう。




 自重ではそこまで実感できないでしょうが、器具を使って自分の限界以上の重量に挑戦すると、ある重さから「も、もう維持できない――ッ!」的な感じで、せっかく持ち上げたバーベルがズルズル下がってきちゃう現象を体験すると思います。筋肉は自分の限界以上の重量を与えられると、こんなふうにズルズル引き伸ばされちゃうんですね。


 が、実はそこに『火事場の馬鹿力』が隠されています。ズルズル引き伸ばされてはいますが、実際に筋繊維が出している力はまだまだ強くなっていきます。見た目はズルズル下がっていても、その内部ではさらに強いパワーを生み出しています。


 しかし、それでもさらに強い負荷がかかると「もうだめぇ!」といった感じでイッキに力が(・・・・・・)抜けてしまいます(・・・・・・・・)。このラインが『アナタの筋肉がもつ"本来の限界"』です。つまり、ズルズル引きずられている段階でも、アナタの筋肉は力を出し切る(ほんのひと雫ほどの)余暇があるのです。それを最大限利用したトレーニング方法が『ネガティブ・トレーニング』ですが、これは下のほうで書いていきます。


 では、この時の筋肉はどのような変化が起こってるのでしょう?




 筋肉はモノを持ち上げますが、たとえば1キロのダンベルに脳が「上腕二頭筋に告ぐ! すべての筋繊維をフル稼働して全力で持ち上げろ!!」なんて命令を出すことはありません。持ち上げられるだけの力を使い、ふつーに持ち上げます。それは100キロのバーベルでも同じです。


 脳は『必要な筋肉に必要な力のぶんだけ』で持ち上げようとしているのです。


 さて、ふつーに持ち上げるのはカンタンですが、ここでひとつ問題があります。それは『どんなペースで持ち上げるか?』という問題。アナタが100キロのバーベルを上げられる時、50キロをふつーに持ち上げることは可能ですが、たとえばそれをイッキに上げたい! と思った場合、脳は筋繊維をふんだんに使ってイッキに持ち上げようとします。しかし、50キロをゆっくり(・・・・)持ち上げようとした時、筋肉はどのような動きをしているでしょう?


 実は、この時脳は『必要な筋繊維を間引く』ことをします。ダンベルをゆっくり持ち上げるとき、通常なら上腕二頭筋の全体を使うのですが、ゆっくり持ち上げるとなると、だいたい筋繊維の2、3割程度しか動員されません。そのかわり、選ばれし筋繊維たちは全力に近いパワーで腕を収縮させるようになります。


・通常時、もしくはイッキに持ち上げるとき

  筋繊維A「よっしゃやるぞ!」

  筋繊維B「おー!」

  筋繊維C「手ぇぬくなよ!」

  筋繊維D「がってんだ!」

  筋繊維E「まかせろ!」

・ゆっくり持ち上げるとき

  筋繊維A「あ、おれ寝るからあとは頼んだ」

  筋繊維B「ワリぃ、おれも寝るわ」

  筋繊維C「じゃ、あとはまかせた」

  筋繊維D「えーそりゃないッスよー働くのオレだけッスか?」

  筋繊維E「がんばれ~」


 前者の場合、すべての筋繊維はそれぞれ重量に沿ったパワーを発揮します。対して後者は、運悪く?働くことになった筋繊維Dくんが全力に近いパワーを発揮するようになります。これは持ち上げる時の力発揮ですが、じゃあネガティブ動作のときはどうでしょう?


 あたりまえですが、下ろしていく動作ですから筋繊維に力を発揮されると『持ち上がっちゃう』ので、下ろしたいスピードに合わせ働く筋繊維を間引いていく必要がありますね。100キロのバーベルを持ち上げられる人が50キロのバーベルを持った時、下ろす場合は単純計算して『50%』以下の筋繊維を動員すれば良いことになります。


 この例だと、たとえば『45%の筋繊維』を動員すればゆっくり下ろすことができますが、下ろしてる最中の筋繊維は全力に近いパワーを発揮しているので、そりゃあもう過大な負荷を与えられていることになります。筋繊維(この子)たちにとって下ろすスピードや負荷はあまり関係がありません。だって動員されてる(・・・・・・)時点で(・・・)フルパワー(・・・・・)なんですから。100キロ持ち上げられる人にとって30キロのバーベルは大したことないように思えますが、これをゆっくり上げだり下ろしている時に動員される筋繊維は、少数ながらフルパワーで稼働しているスパルタな現場になっております。だからこそ『スロートレーニング』は初心者や高齢者にもおすすめなトレーニング法だったりしますね。とくに下ろす行為はブレーキをかけつつもムリヤリ引き伸ばされようとしているタフな現場です。これはトレーニングで利用しない手はないですよね?


 これ、やってるコトが単純でカンタンなぶん『やりすぎ』てしまう場合があります。気づいたらメッチャ筋肉痛になってた、なんてこともあるので、スロートレーニングやネガティブ・トレーニングをする際は量に気をつけてほどほどにやりましょう。現代の科学をしても『脳がどういった基準で動員する筋繊維を選んでいるかは不明』なので、気づいたら毎日同じ筋繊維を痛めつけていた、なんてこともありえなくもないです。くれぐれもムリせず、アナタの体調にあわせて楽しい筋トレ計画をたてていきましょう。




 火事場の馬鹿力をトレーニングに取り入れるため、プロや筋トレを長らく続けている方は『ネガティブ・トレーニング』なんて手法を活用しています。自分が持ち上げられる(・・・・・・・)重量よりちょっとだけ重い重量をトレーナーさんと一緒に持ち上げてもらい、下ろす時だけは自力でがんばる、的なトレーニング法です。下ろすだけ? そんなんで鍛えられるの? と思われるかもしれませんが、ネガティブ動作の重要性は上に書いたとおりです。


 さいごに、ネガティブ動作を取り入れた『初心者におすすめな腕立て伏せ』動画を紹介しときましょう。マジでカンタンかつ少ない回数からはじめられるので取っ掛かりに最高ですわよ?


YouTubeチャンネル、FitWitFitness


ttps://youtu.be/eMAWAYMiYMs


 アナタのきんにくに乾杯!

筋肉痛にごちゅういください。

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