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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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【犯罪心理学】宗教にハマる人、宗教の企て

最近何かと話題ですが、ここでひとつカルトってこわいね、的な世間話をしましょう。

 日本において『宗教団体』を管轄するのは文化庁です。文化庁は文部科学省の外局で、法人団体として登録された宗教法人を管理するのは各都道府県の知事になっています。ちなみに、よく『新興宗教』というワードが見かけられますが、その定義はあいまいです。広義には『幕末・明治維新以降に成立した宗教団体』を指すようですね。


 宗教法人法においては、宗教団体の定義を以下のようにしています。けっこー端折ったから詳しくは下記のサイトに行ってくださいな。


・宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成することが主な目的

① 礼拝の施設がある

② 団体を統括する組織がある


デジタル庁、e-Gov法令検索:宗教法人法

ttps://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000126


 宗教法人法は戦後に制定され旧来の法に成り代わりました。で、この法は宗教団体の認証に関する記述もあり、それにならった多くの新宗教が相次いで法人化していったんです。言うまでもなくというか残念なことというか、そのなかには世の中を不安に陥れるカルト教団や、宗教団体を隠れ蓑にし大金を巻き上げる詐欺的宗教団体も横行しちゃいまして、えー国としては「宗教法人の認証は充分な審査をしたあとでやってね☆」と通達を出すほど慎重になりました。


 まあ、そのあとすぐオウム真理教が認証されちゃったんですけどね。


 今ではその反省を活かし、きちんと「解散しろ」と命令を出すことができるようになりました。いちおう財産目録などの提出義務がありますが守ってる団体は少なく、非課税特権のなか宗教団体がどんな『お金の動かし方』をしてるのかぶっちゃけ不明瞭だったりします。


 これはイロイロなできごと(・・・・・・・・・)が起きるのもムリないね。


 さて、まあ様々な課題がある宗教関連のあれこれですが、ここでは犯罪心理学的に見る新宗教のアレコレを書いていきましょう。




 日本は思想・良心の自由があり、表現の自由があり、そして信教の自由があります。アナタは仏教を信じても歓迎されますし、キリスト教を信じても受け入れられます。イスラム教、ヒンドゥー教、ゾロアスター教、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教でも大歓迎です。でも、たまに「え?」と思うような宗教団体もありますよね? ――たとえば教祖が詐欺容疑で捕まったり、宗教がらみのいざこざによる殺人容疑で逮捕者が出たり。今の若い方は知らないかもしれませんが、1990年代はまさにそれ(・・)が横行した時代でもありました。


 なんだってフツーにテレビ番組に出てたのかね。とはいえ、そういった集団でもきちんと信者はいますし、あれだけの規模を誇っていました。なんでそういった団体(・・・・・・・)にもかかわらず惹きつけられる人がいるのでしょう?


 新宗教のみならず、おかしな宗教が世間を騒がすとき信者たちの異常性が浮き彫りになる場合があります。で、決まって話題にあがるのが『マインド・コントロール』よね。よく聞く言葉だけど、実際マインド・コントロールするのってすげー難しいんですよ。っていうかほぼムリみたいな? 似たようなものとして『催眠』が挙げられるのですが、催眠はけっきょく『その人が催眠にかかりたがっているか?』がキモなわけで、催眠を信じないとか、かかりたくないと考えてる人には無意味なのです。なので、催眠を仕掛ける場合誘導行為的なアレコレを仕込んで、相手に「催眠にかかりたい!」と思ってもらう必要があります。


 マインド・コントロールを成功させるには数多くの準備が必要になります。目白大学で長年心理カウンセリングを教えてきた『内山絢子』氏監修『面白いほどよくわかる! 犯罪心理学』に記されたテキストをもとに、順を追ってかんたんに書いていきましょうか。なお、これらを理解するために、アメリカの社会心理学者『ロバート・B・チャルディーニ』氏著作『影響力の武器』シリーズを読んでおくとわかりやすいかもしれません。



① 接触

  悩みや不安を抱える人をターゲットに接近します。あるいは『意図的に不安を植え付ける』なんてこともしますね。


「あなたは幸せですか?」



② 相手の話を聞く

  序盤は宗教のニオイをまったく感じさせません。それどころか親切な人的態度で相手によりそい、相手の悩みや言いたいことを聞く態度に専念します。


 これは『好意の返報性』が関わってきます。相手に親切をされると「親切し返さなきゃ」という気持ちになりませんか? ――助け合いと書けばキレイな言葉ですが、人間心理として恩返しは強要レベルの圧迫感を引き起こします。借りを返さない人の評判は平均して悪いものですからね。


「あのとき助けてもらったんだから、こんどはわたしから助けないと」



③ 集会への誘い

  状況やタイミングを見計らい、会話のなかに「〇〇の集会があるんだけど参加しない?」という誘い文句を添えてきます。相手の悩みや不安に対する解決策(・・・)として利用する場合もあり、さりげなく相手の不安感をあおる文句を言うかもしれません。


 ここでも『好意の返報性』が心を縛り付けますね。さらに、信頼関係を築いた後に宗教団体という『権威性』を引っ提げてくるからさらに強力。ここで返事に迷うようでしたら、アナタはすでに術中にハマってますので観念してください。



④ 警戒させぬよう接する

  集会では歓迎されます。そりゃあ当然ですよね。この時はまだ『たのしい集会・和気あいあいとした集まり』くらいの雰囲気を醸し出しており、団体の教義などはとくに伝えません。


 ここで用いられる心理術は『ローボール法』です。車などを購入する際、いよいよ契約書にサインするぞというタイミングで営業マンが「オプションはいかがなさいますか? 〇〇がお得ですよ? 後部座席に〇〇はいかがですか?」と、サイン直前になってアレコレと追加してきたりします。これはアナタが『"購入する"という意思を固めた』から、さらに出費が加算でも多少なら購入してくれるという心理をついてのことです。


 ガソリンスタンドでも『大きな看板では"165円"なのに、給油口近くの看板では"一般168円"と表示されていた』なんて経験ありませんか? ――これは「ちょっと損したけど、ここまで来ちゃった(・・・・・・・・・)し、いいか」というアナタの心理をついての手段です。見事にハマっちゃいましたね。



⑤ 教祖など上位の患部に面会させる

  特別なことだと『希少性』をやたら強調した上で、教祖や幹部などの上層部と面会させます。そういった方たちは訳知り顔で「アナタは〇〇になります。〇〇すれば必ず救われます」と断言するのですが、場合によってば『バーナム効果』的なテクニックを使うかもしれませんね。だれにでも当てはまることをさも「アナタは」を強調することで『アナタのことわかってる感』を演出します。


 教祖や幹部との会話で「教祖の言ってることぜんぶ当たってる! すごい!」と感じたアナタはまぁ手遅れですので諦めて信者になってください。なーに、もしかしたらカルト教団じゃなくて本当の本当に慈善事業大好きな団体かもしれないからへーきへーき。


 まあ、モノホンの慈善団体がこんな手ぇつかうとは思えんがね。



⑥ 入信を勧める

  ここ(・・)まできたらもう入信するっきゃないよね? という『一貫性の原理』を利用し入信を勧めます。あくまでアナタが決めたこと(・・・・・・・・・)というナリで話をすすめられるので、より一貫性の心理が強く働くようになります。


 わたしの意思で入信したんだから、ちょっとやそっとの苦境は乗り越えないと! ――精神論や根性論は日本の美徳とされていますが、それ故に利用されやすいのです。



⑦ 入信する

  人生における『不安感・恐怖心』を払拭させるには修行がイチバン! ということで、信者たちは宗教活動に専念させられるようになります。教義に関する本や解説書、さらに数珠などのご利益グッズを購入するよう勧められ、多くの信者はそれを喜んで購入します。


 それらで集まった資金がドコに行くのかは宗教団体の方針によりますが、まあきっと慈善事業に使われると思います。



⑧ 集団への服従心を植え付ける

  修行などと称し、信者を特別な環境(・・・・・)へ集めます。小学生のとき臨海学校とかいかなかった? ああいう感じの環境だったり、まあとにかく閉鎖的なアレよ。ここでは徹底した教義教化育成を行います。いわゆる洗脳の最終段階的な? まあわたし自身そういった経験がないからわからんけど、好奇心で一度体験してみたい気持ちはある。


 あ、でもネット環境と毎日の食事と運動の習慣だけはゆずれないかなぁ。閉鎖空間でタイクツになるからゲームもやりたいです(ワガママ信者)。




 繰り返しますがマインド・コントロールはとても難易度が高い作業です。組織だってやる必要がありますし、こういった手法を使える巨大な宗教団体でさえ、多くの人は離れていってしまいます。


 が、洗脳に成功する割合が一定数あることもまた事実なのです。それは、たとえば宗教集団内で見た『奇跡』だったり、霊感療法の成功を見たことだったり、まあイロイロな要素が複合していますよね。


 霊感療法はプラセボ効果だったり、あるいは治るタイミングとグッズを購入したタイミングが重なったりとイロイロありますが、その人にとっては『霊感療法で治った』のだからしかたない。それらは奇跡として捉えられ、奇跡を懐疑的に見る人たちを『教義を理解できない哀れな人たち』という視線で見るようになります。周囲からの意見に反発するようになり、やがて双方の溝が深まり、より宗教活動にのめり込むようになる――人間ってそういうものなのです。




 アナタの周囲に苦しんでいる人がいたら、可能な限り手を差し伸べてあげてください。そういった方々は常に『救い』を求めています。その手がアナタの手をつかんでくれたら良いのですが、もしそれが『カルト教団』の手だったら――。


 あ、ちなみに『すでに術中にハマってる人を救おう』などと思わないでください。組織の力でマインド・コントロールされた人を個人の力で解き放つのはガチで不可能です。っていうかヘタするとアナタまで引き込まれかねません。もし、知り合いなどにそういう方がいるのなら、それらに対応してくれる団体に助けを求めましょう。いち個人の手には負えない相手ですから。


 最後に、文化庁の宗教関連情報をちょっと紹介しておわりましょうか。


文化庁

 宗教法人の概要

ttps://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/gaiyo.html

 宗教年鑑

ttps://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/hakusho_nenjihokokusho/shukyo_nenkan/index.html

信 + 者 = 儲


アナタは"幸せ"ですか?

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