【認知バイアス】病気を治すのにエビデンスなど必要ない【騙される】
人間は自分にとって『都合の良い真実』しか信じません。で、たまにその事実が事実じゃなかったりします。でもいいんです。その人にとって真実なのですから。つまり人間にとって――
風邪をひいたらケツにネギをぶちこむ。
刺された箇所にションベンをひっかける。
突き指した指をめちゃくちゃひっぱる。
さて、これらは民間療法として知られていますね。知らないっていう若い子はご両親に聞いてみてください。驚くべきことに、むかいしはふつーに実践されていたガチの民間療法です。とはい、えこれらに病気を治す効果なんてありませんのですよ。
ケツにネギは草生えるよね。いや草を植えてるんだけど、まあそういう冗談はよして、えーそんなもったいないことするくらいなら普通に食べたほうがいいです。ネギ類は生で良し、熱を通して良し、メインに据えたりソバにふりかけたり、もうなんでもアリな便利食材ですから、豊富な栄養素をくまなく摂取するためにケツ穴じゃなく口の穴へぶっこみましょう。
ちなみに、犬にネギ類を与えると死ぬのでやめてください。
刺された箇所にションベンってのは、尿に含まれる『アンモニア』に期待してのことでしょう。が、尿のアンモニア量は微々たるものですし、ぶっちゃけ健康な人の尿にはアンモニアって含まれておらんらしいのです。ってか、患部にしょんべんふっかけるってアナタさらに汚してどうすんだって話。なに、敗血症になりたいの?
突き指だから引っ張りゃ治るっておまえトンチかよと。突き指ってのは『指先への衝撃で筋肉や腱や関節などを痛めちゃった』的な症状なの。引っ張ったら悪化するだけなの。おーけー?
――っとまあこんな感じに、民間療法ってのは場合によっちゃさらに状況を悪化させるものなのです。もちろん、なかには良い民間療法っていうか、まあ昔からやられてきたモノなので場合によっちゃ正しかったりするのもあるようですが、それらすべてを鵜呑みにすると上記のような過ちを犯してしまうのでくれぐれもご注意ください。
民間療法は『長年の人間の歴史で培われた知恵袋』というある種のエビデンスに基づいています。いや、科学的根拠なんてないですよ? 単なる経験則ですが、わたしたち人間はそういった要素を無視して民間療法を信じ、実践しています。
なんだってそんなことが起こるんだ? 今回はそんな話をしていきたいと思います。
怪しげな民間療法に限らず、世の中には様々なワケわかめ情報が飛び交ってますね。新型コロナウイルスが流行した当初は様々な情報が発信されていました。さすがに『コロナに花崗岩が効く!』言うて花崗岩が高額で売買されたってのは草生えたが。
ですが、実際に花崗岩に頼った方もいますし、おそらく「花崗岩でコロナが治った!」と主張する方もいるかもしれません。そんなことになってしまうのはなぜか? ――それは、人間が心をもっているからです。
心は快感を欲しがります。より気持ちよくなろうとします。より楽になろうとします。だからこそ人はさんざん健康に悪いエビデンスが蓄積されたタバコを吸ったり、暴飲暴食でお腹をたっぷたぷにしたり、好きだったはずのカレカノとケンカして分かれたりするのです。
そして心とは『脳のあれこれ』。脳は物事を認知し、内部で解釈し、結論を出力します。その解釈部分には多様な特徴があり、その特徴によって生まれるバグ・エラーを『認知バイアス』と呼びます。人は自分にとって都合の良い世界を望み、解釈をバグらせた結果、わけのわからない『健康常識』をたくさん生み出しています。
人間は『データ』で訴えかけられても行動にしにくい生き物です。しかし、人間は『感情』に訴えかける情報に動かされます。経済学と心理学を融合させた『行動経済学』ではその技術がふんだんに使われていますね。なので、人を説得するときは基本相手の心に訴えかけ、データはそれを装飾する時に利用されています。通販番組などはそれを忠実に守っていますのでぜひそういう目で観察してみてください。
自分の都合の良い情報だけを信じる『確証バイアス』は、インターネットで情報が溢れかえっている現代だからこそ恐ろしさを増しています。アナタが『予防接種でガンになる』という事実(実際はそうでないにしても、アナタにとっては事実である)を得たとしましょう。さて、アナタはインターネットでどう検索しますか?
・コロナ 予防接種 ガンになる
・コロナ 注射 ガンになる
・新型コロナワクチン ガンになる
おそらく、このようなキーワードで検索するでしょう。最近の検索エンジンはとてもよくできていてですね、アナタの検索ワードから『こういう情報がほしいんだな?』ってのをすぐに察して、それ相応のサイトだけを表示するようにアルゴリズムが作られてるんです。さらに、アナタは『コロナワクチン注射とガンの関係』についてばかり調べてしまうため、必然的に『コロナワクチン摂取で癌になる確率は○%』とか、そういう情報ばかり集めてしまいます。その際、たまに表示されている『コロナワクチンとガンとの関連性は無いと報告されています』ってのはだいたい無視されます。しゃーない、それが確証バイアスなんだもの。
あ、これはいち例であって、実際ネットでもSNSでも『コロナワクチンを摂取するとガンになる』とかいうデマは広がってませんのでご安心ください。この機会にコロナワクチンについて気になったという方は厚生労働省のページを見に行くか、学術系サイトドメインやらそっち系のドメインのサイトに記された情報を見に行くといいですよ。
エビデンスが不確かでも『ある情報』を信じちゃう現象。これを認知バイアスで説明するとするなら『ウィンザー効果』や『ハロー効果』が挙げられるでしょうか。
・ウィンザー効果
第三者からの情報を鵜呑みにしやすい心理
・ハロー効果
ある特徴から全体を評価してしまう心理
睡眠前に一杯の水を飲むのが健康に良いんですって。これは東響大学の研究チームが明らかにしたことで、論文はあの有名な科学雑誌ネーチャンに掲載されたんですよ――ニュースでは定番的なセリフかもしれませんね。まあ、わたしも個人的にやってるブログで似たようなコトを書きますが。なんでそうするかって? そりゃあウィンザー効果があるからですよ。ほかにも、企業が自社製品をプレゼンする際『消費者の声』的なアレを入れ込むでしょ? たとえば「〇〇を飲んで毎日快便になりました!(30代女性)」とか「〇〇は毎日使ってます! もう離れられません!(20代男性)」とかそういうアレもウィンザー効果を期待してのことですね。ウソだとお思いですか? ――じゃあ通販番組を編集して『消費者の声』が無いバージョンを視聴してみてください。差がハッキリわかるはずですよ。
上記のほうで例に挙げた定型文はハロー効果もぶっこんでおります。第三者からの情報な上『専門家の研究&専門科学雑誌』という信頼度バツグンの証言ですからね。初対面の人と出会った時、実は『イケメン』の方が後々有利になることが研究によって明らかになっています。めちゃカッコイイ高級スポーツカーは基本的に『男性』が購入層なので、車のお披露目会では若いネーチャンを侍らせ良いイメージを車に移しこむ、なんてテクニックもあったりします。ブサイクな結婚詐欺師だと「きっと何か事情があったんだろう――」と刑が軽くなり、イケメンな結婚詐欺師だと「優れた相貌を犯罪に利用するとはけしからん!」と刑が重くなる――ウソだと思いますか?
エビデンスがすべてというわけではありませんが、民間療法にかぎらず、何らかの行動を見返してみる機会が必要かなと思います。風邪をひいたから「とりあえずケツにネギぶっこむか」ではなく、その方法って結局何がどう効くから有効なの? と自分に語りかけてみてください。っていうか、風邪ならふつーに病院行けよという話なのですが……。
ああ、もちろん病院での治療がすべてとか、お医者さんの言う事だけに従えとかそういう主張がありませんよ? とはいえ、お医者さんはきちんとエビデンスを積み重ねた上にある医療ガイドラインに則った行動をとるので、まあ任せちゃっていいんじゃないですかね? べつに医療機関がアナタを組織だって抹殺しようとしてるわけじゃありませんし。とくに心配する必要はないかなと思います。いずれにせよ、風邪だったりハチに刺されたりしたら胡散臭いやり方に頼らず、冷静に判断するようにしましょう。
アナタの心身の健康を祈ります。
評価はともかく、ケツにネギつっこむってのは個人的に興味あるね。友だちに試してみたいです。




