【宇宙】暗黒物質とかいう厨二全開ワード【天文・量子】
宇宙とはなにか? そんな思春期真っ盛り世代がハマりそうなジャンル、さらに"ダークマター"なんてもうロマンの塊みたいなお言葉があるのです。
宇宙はインフレーション、ビッグバンにはじまり、各所に散らばったチリはいつしか物質を形作るようになりました。水素、ヘリウムと極小数のリチウムからはじまり、やがて重力や核反応によりさらなる物質が――ちょっとまって!
実はこれ、ちょっとした矛盾があるんです。いやまあ当たってるんですけど、これらをぜんぶ真に受けると、どうやらいくつかの問題があったらしんです。まず『銀河の回転速度おかしくね?』問題。銀河っていうと中心にドデカいブラックホールがあって、つまり中心ほどすげえ重力があるってことですよね。なら、中心にちかい星ほど速く回ってるんじゃないかという想像がつきます。
が、渦巻銀河を観測してみると『中心からどの距離にある星も速度は変わらない』という結果に。アメリカの天文学者『ベラ・ルービン』氏が長年の観測で突き止めたことです。これは1970年代に話題となり、後に『銀河の回転曲線問題』的なワードで有名になりました。
この理由を一言で表すと『銀河の外側にも重力源があるよ』ってことです。え? じゃあその重力源ってなに? ――せや! ワイらが見えない(光が相互作用しない)重力源があるんや! ってことで考えられたのがタイトルにある暗黒物質、つまり『ダークマター』です。
アナタの側にもあります。学者さんらが言うには、暗黒物質がなければ星は誕生しなかったレベルで重要な物質だそうで、まあビックリですよね。今回はこんなナゾめいた物質について書いていきましょう。
量子力学の基礎的な話をしますと、わたしたちの体は『原子』でできていますね。で、その原子はこれ以上分解できない『素粒子』でできていており、そのなかでもわたしたち物質を形作っているのはたった3種類の『クォーク』だけです。まあバリオンって呼び方でもいいか。
世界は物質で溢れているように見えます。しかし実際には、わたしたちを形作るバリオンは宇宙に存在する全エネルギー密度の5%くらいでしかありません。それに対し、暗黒物質はだいたい27%くらいあります。のこる68%は『暗黒エネルギー』とかいうまたまた厨二ちっくなアレなのですが今回は割愛します。
この世界の物質をすべて足し合わせても、宇宙に存在する質量にはぜんぜん足りなくて、じゃあ残る質量はなんなんだ? って考えると、まあ『目に見えない質量をもったなにか』の存在を疑いますよね。ってことで、現状暗黒物質が宇宙に存在している前提で宇宙論は進められています。っていうかもう確定みたいな感じ。ほんっと暗黒物質ってなんなんだろうね。
暗黒物質は『ダークマター』って呼び方もあります。そっちのほうが書きやすいから今後ダークマターでやってくのでよろしく。
ダークマターが現在の宇宙を誕生させたと言っても過言ではありません。原初の宇宙、つまりビッグバンが起こった瞬間、宇宙にはほんの僅かなゆらぎがありました。純粋に全方位へエネルギーが四散した場合、まったく同じバランスで飛び散るはずですが、ほんのりあったゆらぎによりダークマターの密度が上下し、密度が濃いところはさらに多くのダークマターを引き寄せていき、次第にわたしたちのような物質たちも引き寄せていき、現在の宇宙の形を形成してくれるようになったのです。
わたしたちの母はダークマターだった?
まあ冗談と言えなさそうな冗談は置いといて、えーここまで存在が示唆されているダークマターですが、現状ほとんど観測されていません。なんでって、あいつら『電磁場と相互作用しない』という人間にとってもンのすごい難儀な問題を提示しやがってるのです。つまり光の反射で見えない、つまり見かけ上はガチのマジで"ダーク"マターってこと。現状の人間は光を用いた観測を主流にしてるし、重力波を用いた検測は2015年に成功したばかりなので先まだまだかかりそう。ってことで、現状『どうやってダークマターを観測する?』問題が浮上しております。
個々のダークマターを観測するのはアレなので、とりあえず『質量分布図』から始まったようです。ある空間をターゲットとして『物質が生み出した質量分布』をつくり、それを『その空間に実際にある質量分布』から引けば、そこには『物質以外による質量分布』が見えてくる。これは『ダークマター 質量分布図』でググるとたくさんでてくるのでぜひ見てみてください。日本でもダークマター観測は進められておりまして、名古屋大学の研究者らは『重力レンズ効果』を利用して質量分布図をつくったりしていました。以下のサイトをご参照ください。
東京大学 国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構 当該研究
ttps://www.ipmu.jp/ja/node/1212
個々のダークマターを直接検出したい! それを目的として行われている実験施設があります。岐阜県飛騨にある『KAGRA』は重力波観測装置として有名ですが、ダークマターを観測する用途でも用いられています。
ダークマターは基本的になんでもすり抜けちゃうんですが、たまに――ほんとにたまーに観測できるんです。施設内に備えられた『XMASS』は、観測装置に満たされた液体キセノンを用いて、ダークマター候補をずっと探し続けています。
液体キセノンは次のような特徴があります。
① 発光量が多い
② 大型化が容易
③ 各相(気体 ⇆ 液体 ⇆ 個体)が利用でき、他物質より少量でできる
まあ、とにかく便利なんだなというイメージでお願いします。わたしもそんなイメージです。この装置にダークマターがぶつかるとエネルギーの一部を落とすことで、液体キセノンが発光する、つまり「ダークマターみっけ!」という寸法です。ダークマターからの信号は非常に稀&少エネルギーなため、とても繊細な設備が要求されます。そこは日本の技術力うんぬんとやらに期待するとして、今後エックスマスがダークマターを検出することを祈りましょう。
ダークマターは以下のような特徴をもっています。
① 電荷を持たない
② 質量がある
③ 安定している
現状「ニュートリラーのがあやしくね?」という声があがっていますが他にもダークマター候補はたくさんあります。さて、いつしかテレビで『XMASSがダークマターの検出に成功』と報道される未来が訪れるでしょうか? 以下のサイトで『XMASS検出器』を知ることができるので、ぜひアクセスしてみてください。
XMASS トップページ
ttps://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/xmass/index.html
ナゾの大きさ、心をくすぐるネーミングなど様々な要素があり、創作界隈ではとても需要があるダークマター。いずれ人間の科学技術が進歩してダークマターの"全て"が解明された時、そこにわたしたちのロマンは残っているのでしょうか?
きっと残っているでしょう。どの時代も人間はロマンを追い求める生き物ですから。
ダークマターの存在をしても宇宙は加速膨張している。おのれダークエネルギーめ。




