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つれづれグサッ  作者: 犬物語
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イヌ科の社会

人間は社会を形成する動物です。


犬も社会を形成する動物です。


人間社会のことはなんとなーくわかる。でも犬の社会ってなんだろうね。

 社会ってのはまあアレだね。同じ種類の動物が複数集まって関係性が生まれることだね。人間の社会はけっこー特殊でして、ほかの動物は家族単位の社会を形成しているものの、子どもは成長したらその社会から抜け出し、自分独自の縄張りを形成していくものです。が、人間はそんなことないよね。っていうか、家族との縁を完全に遮断するほうが珍しいけど、同時にありとあらゆる関係を多種多様な人間と形成したりするよね。


 人間のほかにも社会を形成する動物はたくさんいます。そのなかでも、今回は人間と深い関係を築いた犬の社会を覗き見してみましょう。




 犬っていうかイヌ科全般に言えることなんですが、こやつらが築く社会の基本形は『家族単位』です。言うて人間のソレと比較しないようお願いします。なんてったって犬は子だくさん。一度の出産でポコポコ生まれるのですから一言で家族つったって、ただの家族じゃなくもうファミリーってなもんよ。犬は一度の妊娠で10匹産んじゃうこともあるんだぜ。さすがにディズニー映画の『101匹わんちゃん(One Hundred and One Dalmatians)』レベルは珍しいけどね。


 家族と暮らしていく中で、犬は社会上の行動を身に着けていきます。イヌ科全般についても並べて書いていきましょうか。っていうかね、現在人間と暮らすわんちゃんたちは『人に飼われてる犬独自の社会』を形成しているので『犬の社会』かどうかはわからんのです。まあ野生の犬を探すほうが難しい時代だもんね。多頭飼いのわんこたちを観察してればなんかわかるかもしれんが、今回はとりあえずイヌ科全体の社会にピックアップしていきましょうって寸法です。


 同じイヌ科のジャッカルやコヨーテも2、3世代間で共同生活を送っています。慎ましやかな集団ですが、オオカミはそれより若干数が多く、30頭くらいの群れを形成することも珍しくありません。当然メンバーは全員血縁関係であり、人間と違い身内同士の争いなんつー愚かな行為はしないので、これらの群れの生活はだいたい平穏そのものでございます。こういった群れのリーダーってのは『経験豊富な指導者 = 年長者』であるのが常であり、だいたい年長者のオスがリーダーを務めることになります。犬社会でよく言われる『アルファセツ』、これ最近の動物行動学の研究では否定されつつあるようですね。まあ、家族単位で社会を形成するはずの犬が、よその犬や人間と暮らすようになってった結果、対応策として『オレよりつえーヤツにしたがう』的なマインドになったと邪推することもできますが、これは素人意見なので割愛します。


 オオカミは2~3歳になると群れを離れます。で、よそのオオカミを見つけて新たな家族を作るわけですが、オオカミって行動範囲がだだっ広いので、ちょっと離れただけじゃまだ縄張りの中だったりするんですよね。なので、実際に群れを離れてたくましく生きてやるぜ! と意気込むオオカミさんは少数派だったりします。少数どころかほんの一握り。ヘタをするとみーんなスタルフォスになっちゃうので、人間がよく言う『一匹狼』はものすごく優秀なオオカミさんだったりします。




 さて、基本的に平穏社会なオオカミさんですが、メスのリーダーである母親が発情期に入ると、オオカミ社会が活発になっていきます。ほとんどの求愛活動は夫婦ペアに限られるのですが、その際ほかのオオカミさんが奥さんを狙うと「ぜけんなテメーおら!!」と攻撃的になります。この時期のお父さんは、ほかのオス全員に厳しくなるということですね。


 犬の場合はどうでしょう? 放し飼いのわんこたちは、オオカミのような家族単位の社会を形成しているわけではありません。しかも犬種や個々の性格で交尾の手順がバラエティに富んでいるわけですから、オオカミさんみたいなピリピリした空気には基本なりません。もちろん、同じメスを狙うオス同士はわからんけどね。


 愛とは傷つけ合うものさ。


 と、まあこうした時期のほか、エサの取り分けやささいなキッカケなどでケンカが勃発してしまう時もあるでしょう。イヌ科の社会は家族単位なので、いわゆるひとつの『団結』とやらがメチャクチャ重要です。だもんで、ケンカするのはしゃーないとしても、その後仲直りイベントを発生させにゃアカンのです。鬱憤溜めた状態じゃうまく協力できないじゃん?


 ってことで、イヌ科の動物は『和解行動』という行動を起こします。ケンカが終わると、勝者敗者関係なく「アナタの近くにいたいよぉ~ん」と身体を接触させたり、互いの身体を舐め合ったりとまあイチャコラしやがってうらやましいわたしも混ざりたい――失礼。えっと、まあこのようにして、イヌ科の動物たちは団結を維持していくのです。


 ケンカと見せかけて実はケンカじゃないパターンもあります。多頭飼い、もしくは犬がドッグランに来た時、よくわんこたちがもみくちゃになって遊ぶ『ワンプロ(犬のプロレス)』状態のわんこを見たことがありますか? ――まあ必ずしも遊びじゃない場合もあるので、そのヘンは飼い主さんがしっかり見てあげましょう。まあ犬を飼ってる方なら遊びかケンカかは見抜けると思います。




 さて、上記のような行動は『絆』を深めます。この絆が何に生かされるかっていえばやっぱり『狩り』ですよね。とくにオオカミにとっては30頭以上いる群れを維持するため食料調達は重要なおしごとになります。


 基本的に、オオカミは縄張りである最大60平方キロメートル以上の範囲で狩りを行います。地形や環境、どこにどのような獲物がいるかなどを熟知した上で、その地形を有効に活用しどう狩りを行えば良いのか? ――まずは群れの仲間で獲物の痕跡を捜索し、ツーカーな間柄で作戦を練っていきます。実際、カナダやアラスカに生息するオオカミの群れを観察したところ、獲物を仕留めるため近道を利用したり、奇襲を行うため待ち伏せしたりする頭脳プレーなオオカミの姿をとらえています。ちょっと想像してみてよ。ふらふら~っと立ち寄ってみた森の中、ふと目の前に野生のオオカミさんがいて――やっべ逃げるべと後退りしたら、その後ろにもオオカミさんがいるという。モフられるなら幸せだろうけど、まあ胃袋に収まる未来しか浮かびませんわなって。


 社会の絆は狩りの場面で顕著に現れますが、異なる群れとは絆の"き"の字さえ見いだせぬほど険悪です。イヌ科の群れが衝突すると互いに容赦なく襲いかかり、北アメリカ地域などはオオカミとコヨーテ、ユーラシア南部じゃオオカミとジャッカルがまさにドッタンバッタン大騒ぎを展開しています。こういう環境じゃ群れから離れ独立するのもひと苦労で、だいたい群れに出くわして殺されてしまうか、運良くて「二度とくるな!」状態ですよね。




 こういう『イヌ科社会』を知ってしまうと、家庭犬に他の犬と仲良くしてね☆ と期待するのも酷なのでは? と感じたりします。だってもともと異なる群れのイヌ科は排除対象だった生き物なんだもの。まあ、犬は人間に好き勝手いじくられたのでコンパニオンドッグなんかはフレンドリーなわんこばかりですけどね。


 もしわんちゃんの多頭飼育を考えている場合、子犬のころから他の犬に慣れさせてあげることが重要です。オオカミにはたしかに社会があり、序列的なものがチラリと伺えますが、それは「オマエ、オレニ、シタガエ」とかそういう強制的でハッキリしたものではなく、家族のなかのあいまいーな関係性です。さっきも書いた『アルファ説』は捕えたオオカミを檻の中で観察した結果得られた見解なので、ぶっちゃけその観察結果がそのまま犬に通じるかって聞かれると「うーん」ってなっちゃう。実際動物行動学者たちの中でも懐疑的な意見をもつ人いますし。


 さきほどのオオカミの話で書いた通り、多頭飼育をする際は『犬どうしの協力関係』を形成できるようにしましょう。アナタは人間の立場で子ども(・・・)たちをまとめるリーダーになってあげて、自然に『家族単位の群れ』を形成できるようアシストしてあげましょう。アナタがなるべきは威張り散らすだけのアルファではなく、率先して行動しグループをまとめるリーダーです。




 アナタは犬がすきですか? わたしは好きです。だいすきなわんこたちが、今後とも人間と善き関係を築けますように。


 そして、人間がこれからも、人間によりそう"家族"と仲良くしていけますように。

ってことで、さっそく犬を愛でてきますわ。


我が家の黒ラブ「めんどくせーなぁ……」

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