モーツァルト効果
空気が振動すると絶頂する生き物がいるそうです。
ええ、人間です。
音は空気の振動でしかありません。でも、それが連なると人は『音楽』を認知します。で、音楽は感情だけでなく、能力にも作用するんだぜっていう研究があったりします。
音と心理に関する研究は昔から行われています。今でこそ『音楽心理学』という名前がつけられていますけど、それ以前からそんなかんじの研究はたくさんありました。まあ、研究っていうより考察ですかね。現代の心理学はれきいとした『科学』なので、きちんとした論文をつくって査読してもらっている……はすです。
音楽心理学の研究はだいたい『〇〇中に音楽を流したらどうなる?』とか『音楽は〇〇に効果があるのか?』的な感じですかね。そのなかでも一時期日本で広まったのはタイトルにある『モーツァルト効果』。モーツァルトの音楽を聴くだけで頭が良くなるとかいうトンデモ理論ですが、これはどういった研究だったのでしょうか?
世界的に有名な科学雑誌『ネイチャー』。おそらくみなさんも聞いたことがあると思います。初めて発行されたのは1869年11月4日とかいうながーい歴史を誇っております。そんなネイチャー誌へ1993年、アメリカ、カリフォルニア大学の心理学者『フランシス・ローシャー』の研究が掲載されたことで注目が広まりました。ちょっと内容をご紹介しましょう。
大学生36名を対象に空間認知知能テストが行われました。問題はその環境です。同じ場所、同じ条件下でしたが、いつつかの差異がありました。
・無音状態で10分間待機する
・リラクゼーション音楽を聴く
・モーツァルトの音楽を10分聴く
採用されたのはモーツァルトの『2台のピアノのためのソナタ ニ長調(曲番号488)』。で、テストを行った結果、他の条件よりモーツァルトの音楽を聴いた場合のほうが好成績をおさめていたのです。
これは『モーツァルトを聴けばアタマが良くなる』って思うのもわかるわぁ……けどちょっとまって! そう単純な話しじゃないの。
この研究は『空間的認知テスト』を行っただけですので、アタマが良くなる方向性は限定的です。しかも、この効果は15分程度しか継続しませんでした。じゃあなんで「モーツァルトを聴くとアタマが良くなる!」と広まったのか? それは単純に情報を拡散する側がそう報じたからです。
この研究がきっかけで、ほかの音楽心理学者はこぞって『モーツァルト効果』を題材にしはじめました。モーツァルト効果のみならず他の楽曲を対象にしたり、大量に生まれた研究を集約し『メタ分析』したり――その結果、賛否両論ありましたが、総じて『モーツァルト効果は確かに一定の効果はありそうじゃね?』という流れになっていきます。
とくにモーツァルト効果があるとされたのは『心的回転』です。立方体などを頭の中でイメージして、それを回転させてみる知能のことですね。このほか、モーツァルトに限らず音楽を聴くことで成績が上がるよ! っていう報告もけっこうあります。あ、だからといって勉強中ずぅっと音楽かけっぱなしというのはオススメできません。月並みですが、音楽が効果あるかどうかは『人による』ので、ええ……。
さらに面白いことに、モーツァルト効果は『ネズミ』でも実証されています。ザックリ書くと、迷路に挑戦してもらうとき、モーツァルトを聴かせたら時間が短縮できたとうもの。
ネズミ「モーツァルトや! これでかしこくなれるで!」
かしこいネズミだなぁ。いや冗談はよしといて、実際あるとすれば音楽というか『空気の振動』に晒されることでコウモリみたいに空間を認知できるとかそういう考察ができるけど素人の妄想はやめとくかね。
あと、モーツァルトの楽曲は11~12歳の情緒障害児を鎮静させる効果がある、という事実が判明しました。モーツァルトの音楽がもつ独自の音、周波数が子どもの心拍や体温を安定させるそうです。どうしても勉強中にBGMをかけたい場合は参考にしてみてください。ただし、勉強や仕事など脳みそをフルに使う活動は集中を要しますので「よし、集中できてる」と判断した時は、その妨げにならぬよう音楽を切ることをおすすめします。
せっかくなのでモーツァルト以外の曲についても。クラシック全体を対象に研究が広まったのですが、そのなかで『高テンポ & 長調』の音楽はなかなか効果があるようです。参考としてモーツァルトの上記楽曲も、テンポを緩めたりなんなりしたら効果が現れなくなったそうです。
こういった音楽の効果を子育てに活用したいのなら、これらを決して過信しないほうが良いです。モーツァルト効果はあくまで限定的なものですし、音楽教育は継続してこそなので、そこんとこよろしくお願いします。
アナタの音楽ライフに幸多からんことを。
BGMに囲まれた空間で過ごす、良き日常だと思います。




