【栄養学】TCAサイクルってなんだ?
食ったものが身体になるのと同じように、食ったものはエネルギー源になるんだよっていう当たり前の話、ちょっと深掘りしていきましょう。
メシを食って元気百倍! 創作物にゃそういうシーンがたくさんありますね。リアルな世界でも、メシを食ったらわりとすぐ元気百倍になったりします。
五大栄養素と呼ばれる『糖質・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラル』は生命を維持するため必要な栄養素ですが、運動のエネルギーとしてもこれらが重要になってきます。糖質と脂質、それにたんぱく質は貴重なエネルギー源になり、ビタミンやミネラルもそれらを燃料として活用する際必要になるため、実質すべての栄養素は運動に必須となります。
今回は、食ったものを身体がどう活用してるのかについて書いてきましょうか。
人に関わらず多くの動物は『ATP(アデノシン三リン酸)』っていう物質を加水分解した際にエネルギーが生み出されます。加水分解ってのは『水に反応し、いろいろな"分解"が生じること』です。イメージとしてはこんな感じ。
AB + H2O → AOH + BH
『AB』っていう物質が水に反応したことで『AOH』と『BH』という物質に分解されました。ATPの場合はリン酸が分解された際のエネルギーが使われることになります。分子式で表すとこんなかんじ。
C10H16N5O13P3
炭素10個、水素16個、窒素5、酸素13、リン3
ATPの名前のさいご『~三リン酸』が『~P3』のことね。アデノシンにひっついたリンがオサラバする際にエネルギーが生まれ、動物はそれを様々な燃料として活用するのです。
それぞれの栄養素がどう『ATP』につながっていくのでしょうか? ――生物の身体にはたくさんの『酵素』がありますね。こいつが上記のような反応を繰り返し、摂取した栄養素を様々な物質に変化させていくのです。
:糖質:
消化器官でグルコースへ
グルコースが『ピルビン酸 or 乳酸』へ
その際にATPが生成(解糖系、嫌気的代謝)
→ TCAサイクルへ...
:脂質:
消化器官でトリアシルグリセロールへ
血中でキロミクロンになり全身を巡る
各細胞が脂肪酸を取り込む
脂肪酸が『アセチルCoA』へ
→ TCAサイクルへ...
身体についた脂肪は『グリセロール + 脂肪酸』へ
グリセロールが『ピルビン酸』へ
その際にATPが生成
:たんぱく質:
消化器官でアミノ酸へ
アミノ酸(アミノ基)の炭素骨格が――
→ ピルビン酸
→ アセチルCoA
→ TCAサイクル
のいずれかに流れ、それぞれエネルギー源に
その際にATPが生成
実は、三大栄養素は互いの栄養素にうまく変換することができます。たんぱく質などは非常に多くの分子を含んでいるおかげで、多くのグルコースや脂肪酸の材料になってくれますね。
たんぱく質の中でエネルギー源として活用される『炭素骨格』はアミノ基と結びついています。これと切り離されたアミノ基は、そのまま『尿素サイクル』というルートをたどり、最終的にはおしっことして体外へ排出されます。なので、普段たんぱく質をたくさん摂取してる方はおしっこのたびに「身体からエネルギーが生成されてるぅ!!」と喜び身体震わせるのがいいと思います。
で、ここまで書いてきた中で度々登場する『TCAサイクル』ってのがありますね。別名クエン酸サイクルなんて呼ばれてますが、コイツはエネルギー生産上とっても重要な回路なのでしっかり書いときましょうか。
クエン酸(TCA)サイクルは、呼吸を行う動物全般に見られるエネルギー生成のためのループです。っていうか、このループがあるから『呼吸』ってのがあるんだぜって感じ?
身体の中では様々な物質が巡回してますが、そのなかでも『酸素』だけは毒性が強いのであまり組み込めなかったんですよ。だけど、生物は『呼吸』というすンばらすぃ~機能を手に入れました。酸素を安全なルートで入荷することで、わたしたちは安全にエネルギーを生産することができるようになったのです。ってことで、さっそくTCAサイクルの中身を見ていきましょう。
TCAサイクル、要約すると以下のようなループです。
:TCAサイクル:
栄養素がいろんな関係で『アセチルCoA(コエンザイムA)』を生成。それが――
→ クエン酸へ、それが――
→ α-ケトグルタル酸へ、それが――
→ オキサロ酢酸へ、それが――
→ クエン酸へ、以下ループ
ホントはもっと複雑なループですけど、一挙に書くと覚えらんないでしょ? もし気になるって方はウィキペディアでもなんでも書いてありますからそこで調べてみてください。
ひとつ注意しなきゃいけいないのは、このサイクルはATPを作らないということです。ATPを生み出すのは、このサイクルの過程で生み出された各生成物であって、このループの中にATPは含まれていません。
これらの過程で多くの『水素・二酸化炭素』が生まれます。いろいろな反応の際生み出された水素は電子伝達系、まあ言うなればミトコンドリアちゃんの方へ送られて、そこで『酸化的リン酸化反応』という反応が起きます。つまりATPが作られるんです。そのためには酸素が必要で、だからこそ呼吸は『酸素を吸い、二酸化炭素を吐く』って機能なんですね。ってことで、エネルギーを必要としてる方は大きく深呼吸しましょう。人間緊張すると呼吸を忘れガチですが、そんな時こそ深呼吸ですよ!
ちなみに、このループは酸素を必要とするエネルギー生成術ですが、酸素を使わない『解糖系』というエネルギー生成術もあります。上記の糖質項で説明しましたね。筋トレなどの高強度の運動をした際は、呼吸による充分な酸素供給が間に合わなくなります。そうすっと、ピルビン酸以降の『酸素を必要とするあれこれ』が間に合わず、ピルビン酸は乳酸に変わっちゃうんですね。
はい、あの乳酸です。どこぞのスポーツでアスレチックな番組で「乳酸地獄ゥ!」てやってたあの乳酸です。
疲労物質と解釈することもできますが、これは『筋肉を酷使した結果生まれただけの産物』であり、筋肉が疲労してるから出たわけじゃありませんのでそこんとこよろしくね。いちおう、現代筋トレ界隈では『運動強度の目安』として見られてるのではないでしょうか?
じゃあ筋肉疲労の原因はなんだって? ――知らんがな。最新研究だと、なんか「筋肉の酸性度が強くなるのが原因じゃね?」って意見もあるけど、実際はどうなんだか明らかになってない模様。乳酸に関しては息が整ってくるとピルビン酸になって動き出すので、乳酸を抜こうとか考えなくてもダイジョーブだそうです。
身体は様々な手段でエネルギー生成しています。じゃなきゃわたしらなんもできないからね。こういった身体の機能に感謝しつつ、わたしたちはわたしたちの意思でできる、たとえば『バランスの良い食生活』とか『深呼吸して酸素供給する』とか、そっち方面で身体をサポートしてあげましょう。
アナタの心身の健康を祈っています。
酸素は有害、しかしエネルギー源としては超優秀。ほんっとジレンマよね。




