人はなぜ"食べる"のだろうか?
哲学じゃないッス。栄養学的な話です。
食べなきゃ死ぬからです。当たり前じゃん? ――いやまあ、たしかに『プララド・ジャニ』氏のような例外もいるみたいだけど、それは『例外を示すってことは、通常の人間は"食べなきゃ死ぬ"ってことを証明している』という証拠ですのでどうかご了承ください。ちなみに、ジャニさんはすでにお亡くなりになっていますが、それまで彼自身に関する研究が多くされておりまして、賛否両論ながら様々な議論が巻き起こっています。気になる方は各自でググってみてください。
さて、今回は『栄養学』っていう学問について、おおまかに書いていく感じにしていきましょうか。
栄養学、言うまでもなく『栄養』に関する学問ですね。で、この栄養ってのはなにか? ――栄養とは『生物(この場合は人間)が生きていくために必要な物質』です。様々な活動のエネルギー源、身体の組織などを作るために必要なモノなど、生きていくために摂取すべき『食物の中に含まれる成分』を栄養素と呼びます。
人は、食べ物に含まれる栄養素を消化器官で分解、吸収します。消化器官は大まかに以下の通りですね。
・口
・胃
・腸
口だって立派な消化器官です。アミラーゼとか理科の授業で習ったでしょ? 口腔内にも様々な消化酵素があり、能動的に消化できる歯も存在します。だからこそ、しっかり噛むことが大切なのですよ。咀嚼しない、すぐ飲み込むってのは、つまり最初の消化段階をスキップするってことだからね? ちゃんとカミカミしなきゃアカンでよ?
だいたいの生き物は食べなきゃ死にます。が、食べ過ぎたら食べ過ぎたで様々な病気に発展します。それがいわゆる『生活習慣病』ってヤツよね。脂質や糖質を食べ過ぎると、血中に中性脂肪が溜まりまくります。そいつらは良いエネルギー源になりますので、きちっと運動すれば使われてくれるんだけど、使わなきゃ人の身体は溜め込もうとしちゃうの。だから、余計なエネルギーは皮下脂肪だったり、内蔵脂肪になっちゃうのです。それを防ぐためにも、毎日規則正しい食生活を意識しましょう。
栄養学は『栄養に関する学問』です。つまり、れっきとした科学です。主な研究は、人の身体に必要となる栄養素を研究するもので、人が食べるモノに関しても研究対象となります。たとえば「りんごってどんな栄養素があるんだろ?」的な感じでりんごを取り寄せ、その成分を分析し、人の身体じゃどういう働きをするんだと実験し、それらを研究成果として発表したり、人々の食育のため貢献してくれたりします。
こういう研究ですから、栄養学は『食と健康の関係』についても細かく調べます。ちなみに、健康は『世界保健機関(WHO)』によって「肉体的、精神的および社会的に完全に良好な状態のことだよ」と定義されています。なので、栄養学的には『肉体的・精神的・社会的』の健康的側面からアプローチしています。社会的ってどういうこっちゃ? と感じるでしょうが、これは地域や風土、気候、経済レベルによって食生活が左右されるので、その条件に合わせて健康になるための食事を考えていきましょうってことですね。
現代社会は飽食の社会です。昔の栄養学というか、栄養についての考え方といえば『生きるため』的な要素がほとんどだったでしょうが、今は栄養過多なので、どっちかってと『生活習慣病にならんよう、食べ物を取捨選択する』的な役割が増えてきましたよね。あとは『より作業効率を上げるため』とか、もはや生き死にではなく、飽食故の問題へ成り代わっています。
自身の健康を増進するため、より良い食生活を考えてかなきゃいかんですね。
栄養学的に、食べ物にはいくつかの『機能』があります。
① 一次機能:栄養機能
→ 生命維持
② 二次機能:感覚機能
→ 嗜好性
③ 三次機能:生体調整機能
→ 生理
みなさんが想像されるのは『①』でしょう。食べ物の栄養が身体にどう機能するか? どのような物質がどのように作用するのか? 的な意味での機能です。いわゆる三大栄養素『糖質・脂質・タンパク質』や五大栄養素『ビタミン・ミネラル』についてはここで語られます。
『②』は嗜好性の問題ですね。食べ物の香り、味、色合いなどのステータスが人間に与える影響。たべて「おいしい!」的なアレコレを研究するものです。以外と重要な機能でね、ほら、たとえば甘味料とか着色料とかあるじゃん? ああいうのだってちゃんと考えられて作られてるんだよ? っていう話でした。
『③』は保健効果を指します。その成分を摂取することで身体の調子が整えられ、病気を予防するんだぜっていう機能を指します。よく『特定保健用食品』ってありますよね? あれ、この機能をもっているんだよと国からのお墨付きをもらったヤツで、ざっくり『その"成分"が一定量含まれる商品』をトクホとして販売することを許可しています。トクホにもイロイロな種類があって、疾病リスク提言表示だったり、条件付きのトクホだったり、まあイロイロな種類がありますので、興味がある方はスーパーなどで見物してみてください。
日本では、これらの研究の成果をもとに『日本人の食事摂取基準』というのを発表しています。厚生労働省が5年ごとに更新しているもので、最新版は『2020年版』となります。以下にアドレスを貼っときますかね。
厚生労働省:日本人の食事摂取基準
ttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
さて、人がずっと同じ健康状態を保つためには『消費カロリー - 摂取カロリー = 0』である必要がありますよね? まあ、現実的にはほぼムリなんですけど、とりあえず理想はこういう感じになります。なので、日本人の食事摂取基準では、それを元に『推定エネルギー必要量』ってのを設けています。以下がおおまかな計算。
・推定エネルギー必要量(kcal/日)
= 基礎代謝量 × 身体活動レベル指数
身体活動レベルってのは、まあ1日ずっと動きっぱなしのスポーツ選手とか、ずっとデスクワークしてる人だとかの差分をおおまかに評価した指数です。だいたい活動量が『高い・普通・低い』的な段階に分けてあり、個人個人が「ワイは"高い"やな」的な感じで評価するイメージですね。アナタはどうでしょう? 毎日スポーツバリバリですか? それともデスクワークで活動代謝が少なめな感じですか?
上記のように、人それぞれ活動量が異なります。ついでに、栄養素ごとに『どんくらい摂取すりゃええの?』っていう値が設定されておりまして、それぞれ以下のような数値が設定されています。
① 推定平均必要量
② 推奨量
③ 目安量
④ 耐容上限量
⑤ 目標量
健康維持に必要とされる量の場合『①・②』が表記され、それらを設定できない場合『③』が設定されます。
『④』について、栄養素ってのは摂れば摂るほどいいってもんじゃないのです。水だって一気に大量飲みすりゃ中毒死しますし、日本での例は少ないながら、カフェイン中毒でイっちゃったという話もあります。そういう「コレ以上摂らんといて!」的な値を設定します。
『⑤』は生活習慣病対策です。必要とは言わんけど、生活習慣病予防とかに有用だぜとか、こんくらい摂っておくと生活習慣病対策になるぜ、的な量を設けた感じですね。
こういった摂取量、多くの方が「ンなのいちいち気にしてられっか」って感じですよね。まあ、わたしもその一人だったりするんですが、ごくごくたまーにで良いので、たまーに、ほんとにたまーに、ここで書いたことを思い出して「そういや食事摂取基準なんてのあったなぁ……ググってみよ」的な流れになってくれたら幸いです。
こういった国の取り組みのほか、民間でも様々な『表示義務』がありますね。食品表示法などで定められたもので、だいたい値札シールの下側に『エネルギー・タンパク質・脂質・炭水化物』って表記があると思います。これらをちょっと気にするだけで、アナタの1年後の体型がガラッと変わってきちゃうかもしれません。
栄養学は、食と健康に関わるありとあらゆる対象を研究しています。国が上記の基準を定められるのも、アナタがスーパーで成分表示を見られるのも、テレビで「りんごにはスゴい栄養素が詰まってるんですよ!」と喧伝できるのも、栄養学者がありとあらゆる努力を積み重ねて生まれた成果があるからです。
栄養学は、アナタの健康を食の面から見守っています。栄養について研究するエラい人が培ってきた知識、結晶を生かして、わたしたちは『健康』を維持していきたいですね。
アナタの心身の健康を祈っています。
栄養学者に感謝しつつ、わたしは今日も鶏肉を食べる。




