【臨床心理学】子どものココロは"遊び"で癒やす【遊戯療法】
心理療法のひとつ『遊戯療法』のご紹介。
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ココロの問題は老若男女。昨日まで元気ハツラツだった方が、次の日にゃズーンとしてる時だってあります。それが人間ってやつです。そんななか、ココロに大きなダメージを負う方だっていらっしゃいます。心理職の方たちは、彼らの心を救うべく多くの『心理療法』を行うわけですが、子どもたちは通常のカウンセリングを行う際大きな壁が立ちふさがるのです。
今回は、そんな『子どもたち向けの心理療法』をご紹介しましょう。
遊戯療法は『幼児や児童を対象に、遊びを通じて行う心理療法の総称』です。別名プレイセラピーとも呼びますが、遊戯療法を開発した『バージニア・アクスライン(Virginia Mae Axline)』氏は『Child-Centered Play Therapy(子ども中心のプレイセラピー)』と称しています。
多くの心理療法は、対象者との対話を中心に進められていきますが、言語表現が発達しきっていない子どもたちと付き合う際、対話だけでコミュニケーションをとるにはどうしても限界がありますよね。ですがご安心ください、人間は「Don't think! ...Feel」という素晴らしい名言の通り、言語に頼らないコミュニケーションを行うことができます。そのひとつがお遊び。そう、遊戯療法とは『子どもたちと遊ぶついでに』じゃなかった。えーぇっと、子どもたちとのコミュニケーションに『遊び』を用いて、ココロの問題を解決していきましょうねっていう療法なのです。
単純に子どもと遊んでやればいいんか? っていうと、事はそう単純じゃありません。まず、どんな子どもか、年齢や性別によって遊びの種類を考えなきゃいけないですし、子どもが自分のココロを表現できる遊びである必要があるので、そういった面も考慮しなければなりません。さらに、いっしょに遊ぶということは対人関係の構築に良い材料になりますので、ココロに問題を抱えた子どもに人と関わる喜びや、遊びを通して助け合う感覚、課題をクリアして達成感を味わうなどの良い要素がてんこ盛りなのです。
アナタは『ゲーム脳』という言葉をご存知でしょうか? 本題と離れるので簡潔に書きますが、まあ要は『ゲームしてると頭が悪くなるよ』っていう話がね、一時期社会現象になっていたんです。現在は科学の発展もあり、この説を覆す結果がたくさん出ておりまして、逆に『ゲームは脳を発達させるんだぜ』っていう論文がたくさん出ております。その辺は各自でググって頂くとして、遊戯療法ではお遊びを通して、様々な方面での発達を狙うこともできます。これ、重要な事なのでちょっと深掘りしようね。
たとえば『いないいばあ!』ってお遊びあるじゃん? ――あれ、他愛もない遊びに見えますが、子どもにとっては「いないいなーい……」のタイミングで(もうすぐ"ばあ!"が来るぞ!)っていう先読みの能力を養うことができるんですよね。これをさらに発展させたら、もしかしたら某スパイ家族の幼女みたいに心を読めちゃうレベルに達するかもしれませんが、それは科学の発展に期待しましょう。いないいない → ばあ! という連結を記憶する力、ばあ! のタイミングまで喜びをガマンする力、さらに、相手が「いないいない」と言ったら、その次は「ばあ!」してくれるんだ、という相手を信頼する力、そういう力を養うこともつながるんです。これはほんの一例ですが、イタズラ心をこじらせちゃった両親が「ばあ!」をやらなかった場合、子どもは(あれ? なんでばあ! ってやらなかったん?)と混乱するかもしれません。この時(ああ、そうか。ばあ! をしないパターンもあるんだ)と学習するかもしれませんし、本人が「ばあ!」を期待していたのにそれをしてくれなかった(´・ω・`) と、ほんのり信頼関係にキズが付いちゃうかもしれません。まあ、それは親と子の関係の話です。どう転ぶかはその時に決まるということで、アナタはアナタの子どもと独自の信頼関係を作ってください。
子どもがいないという方は……妄想でいいんじゃない?
遊戯療法を行う場合、子どもに『安心できる場所』を提供する必要があります。安心安全だからこそ遊びという行為ができるわけですし、遊びに集中できる環境は、さらに「どうやったらもっと上手くいくんだ?」的な、遊びに対する創意工夫、実験や観察などをさせる要因にもなります。子どもにとってプラスですし、観察する側からしても、子どもがどんな試行錯誤をするのかを通して子どもの性格を知る情報にもなりますね。
遊戯"療法"ですから、遊びを通してココロの問題を解決するのが目的になります。子どもがどんな遊びをしているのか、カウンセラーは細かいところまで観察し、遊びに表れる『ココロの問題・気持ち』を言葉にして伝えることができます。子どもにソレを伝えることで、本人がしっかり問題を認識できたり、カウンセラーが子どもの気持ちを受け止めていることを伝えることもできます。
カウンセラーはそういう訓練を積んでるのよ。たとえば、ミニカーでお遊びしている子どもがいます。その時、毎度『車同士を衝突させる遊び』をしている場合があります。事故的な。
これ、臨床心理では『子どもは大きな問題に抑圧されている状態かもしれない』と考えられるんですって。なので、遊戯療法を会得した各種心理職さんは、『車がギリギリ止まって衝突を免れた』的なシーンを演出することで、大事を避けるパターンもあるんだよ? と暗に伝え、子どもに『気づき』を与えるアプローチを行うこともあります。
こうやって、カウンセラーは遊びの中で、子どもたちのココロにアクセスしようとするわけですね。そのためには、はじめに伝えた通り『子どもが安心して遊びに集中できる環境』が必要となります。
ここで、アクスライン氏が提唱した『アクスラインの8原則』を紹介しましょう。
① 子どもと暖かく、魅力的で、親密な良い関係を築きましょう
② 子どもを"あるがまま"に受け入れましょう
③ 子どもが"自分の気持ちを自由に表現できる"と感じられる雰囲気、環境を用意しましょう
④ 子どもが表現しているココロ、気持ちを細やかに認知し、
子どもが自分自身の気持ちを理解できるよう促しましょう
⑤ 子ども自身に、問題の自己解決能力があることを認め、尊重しましょう
⑥ 主導者はあくまで"子供自身"です
セラピストは影として働き、子どもの主導に従いましょう
⑦ 遊戯療法は焦らず、子供のペースで進行するようにしましょう
⑧ 子どもに課す"唯一の制限"は、
子どもが"現実の領域"から乖離しないようにする処置です
ざっくばらんに書けば『遊戯療法はあくまで"子ども中心"な? 子どもがメルヘンちっくな世界にトんでかなきゃ、基本は子ども自身の"浄化能力"を信じてやってこーぜ』みたいな感じですね。多くの療法もそうですが、心理療法って基本『後押し』的な側面があるので、こう「オレがオメーを全力で助けてやっかんな! 覚悟しとけよ!」的なやり方は無いんですよね。そういう熱いキャラをご注文の際は、カウンセラーではなくぜひ松岡修造氏の動画をご覧ください。おすすめはコレ↓↓
YouTubeチャンネル、grandfinish氏投稿
ttps://youtu.be/zhwLxNjK97A
通常、上記のアプローチを1回50分前後、週~月に1回行うのが基本のようです。もちろん『子どもが安心できる空間』を用意しまして、幅広いニーズに答える遊び道具の数々を用意する必要がありますね。担当者は子どもとの信頼関係構築のため固定するのが普通です。じゃないと関係を深めようがないからね。これらの環境を用意して、いざ子どもたちと「いっしょに遊ぼーぜ!」ってプレイするわけです。
遊戯療法の問題点は『大きなトラウマを表現しにくい』ということです。プレイセラピーは『子ども中心療法』的な側面もあるので、表現しにくい(たとえば慢性的なトラウマなどの)ココロの問題を的確に掴むことが難しいのです。そういった場合、トラウマに対するテーマで話を進める必要があるのですが、それにはラポール(信頼関係)構築がとっても大事になります。信頼関係を構築できそうな良い手段はないかな? ――遊戯療法があるやん! ってことで、プレイセラピーは子どもに対する心理療法として「まずやっとけ」レベルで重要なのですね。
人の心は千差万別。老若男女関係なく強く、脆く、どのように変化するかわかりません。もし、心に大きな負担を感じた場合、ほんのちょっとでいいから休む時間をつくって、話を聞いてくれる人を探しましょう。グチを聞いてもらう、それだけで人の心は癒やしを覚えるものです。
アナタの心身の健康を祈っています。
べつに大人がやったっていいのよ? こう、カウンセラーさんに「遊戯療法やりたいでしゅ」とか言って――すんませんふざけました。




