髄膜炎ってなに?
頭痛が痛いです。
脳は人間を人間たらしめる重要な器官です。脳がなければ考えることができませんし、身体を動かすこともできません。喜ぶ、悲しむ、様々な感情や心でさえも、脳がなければ存在できないのです。
大事な大事な脳みそちゃんですから、それを保護するためのセキュリティは万全でございます。みなさんご存知『頭蓋骨』は、脳を保護する最強最大のガードマンですね。あまりの硬さに『頭突き』なんて攻撃技にだって使えちゃう硬さ、これもう保護なのか武器なのかわかんねーな。
攻防一体の頭蓋骨。きれいな曲線を描いているので、正面からの衝撃もいい感じに霧散してくれます。そんなたくましい保護装置をいちばん表に用意しておりますが、中身だってきちんと保護しているのですよ。
頭蓋骨の内側は『髄膜』という膜が幾重にも重なっています。ちょっとまとめてみましょうか。
頭蓋骨
↓
硬膜
↓
くも膜
↓
くも膜下腔
↓
軟膜
↓
脳実質
この『硬膜~軟膜』までを髄膜と呼びます。くも膜下腔は、"腔"とあるように空洞です。しかし、そこは空気ではなく『脳脊髄液』で満たされています。よくわかんない? じゃあ以下のような感じでイメージしときゃいいんじゃね?
ベニヤ板
↓
アルミホイル
↓
ラップ
↓
水
↓
安いラップ
↓
豆腐
わりと近いから、騙されたと思ってイメージしてみてください。そんな感じです。
よく『くも膜下出血』って聞きますね。その名の通り、くも膜の下で出血があったよって疾患で、こうなると脳脊髄液にイロイロなアレ(語彙力)が混ざっちゃってヒジョーによろしくない状態になります。具体的に言うと、ふつーに死んじゃうレベル。厚生労働省の調査によると、令和元年1年間の『クモ膜下出血』による死亡者数は『11,731』人なんですって。なにが怖いって、発症からすぐ逝っちゃうかもしんないってことだよ。以下ソースね。
ttps://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000772691.pdf
脳は髄膜というクッションの上に浮いている状態で置かれています。頭蓋骨が外部ダメージの軽減であるに対し、髄膜はクッション的な役割を担ってるわけですね。ボクシングじゃあ髄膜で守られてる脳を揺らしてダメージを与える手段がありますが、髄膜ちゃんはしっかり役目を果たしているはずです。
が、時としてこの髄膜に病原菌やウイルスが侵入し、脳に大きなダメージを与えてしまう場合があります。今回は、そういった症状をすべてひっくるめた『髄膜炎』について書いてみましょう。
脳は通常無菌状態であり、外部から雑菌野郎が侵入してくる心配はありません。血管は『血液脳関門』という狭き門で守られていますし、外部は頭蓋骨や髄膜があるので安々と侵入できません。が、ゼッタイ安全だというわけではなく、時として髄膜が悪いヤツらに侵されてしまう場合があるのです。
健康は人であれば、免疫の働きにより、雑菌たちは髄膜へ侵入する前に排除されていきます。しかし、免疫力が弱い子どもや、大人でも風邪だったりなんだったりで弱っていると、普段は入れないはずの病原菌が脳まで侵入してきてしまう場合があるのです。
ここで重要なことがひとつ。脳は普段無菌状態ですので、じつは他の部位と比較してめっさ感染に弱いです。いちおう、脳内では『ミクログリア』というグリア細胞が免疫的な働きをしてくれるのですが、こいつらが頑張っちゃうとサイトカイン、まあ化学物質をドバドバ出しちゃうので、実は脳にもダメージを与えちゃうっていう悪循環が生まれたりします。
病原菌がわずかに侵入しただけでも、脳にとっては緊急事態なのです。
髄膜炎には、おおまかに『細菌性・ウイルス性』の2通り存在します。
・細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)
・ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)
どのような細菌も髄膜炎の原因菌になりますが、とくに髄膜炎を引き起こすことで有名なのは『髄膜炎菌』です。普段は鼻腔や上咽頭、つまり鼻やノドあたりに生息していらっしゃる菌です。上記のとおり、通常の免疫力であればそこまで侵入されることはないのですが、子どもや免疫力が下がった状態の大人などの条件がある場合、髄膜炎菌は髄液まで侵入し、様々な悪さを働き始めます。
後述するウイルス性の髄膜炎より発症率は低いのですが、こいつの致死率はとても高いです。手元にある『池谷裕二』氏監修『脳と心のしくみ』によると、細菌性髄膜炎の致死率は『数%~数十%』とバカに出来ない確率。さらに、20~30%が後遺症に悩まされるとあるので、髄膜炎菌の恐ろしさがうかがえるものですね。
ちなみに、髄膜炎菌はくしゃみや咳などで飛沫感染します。気道から血液へと侵入。そのまま髄膜へゴールといった流れ。健康体であれば発症するまでもなく免疫が退治してくれますが、そうでない場合は気をつけておきましょう。
ウイルス性の髄膜炎は、主に『エンテロウイルス』や『単純ヘルペスウイルス』、『コクサッキーウイルス』など様々。子どもが感染した場合、初期症状が『風邪』と似通っているので注意が必要です。子どもの風邪はすぐ病院へ連れて行ったほうがよさそうですね。
いずれにしても、普段から体調管理を怠らず、心身共に健康であることが重要です。さらに、細菌性髄膜炎に対して『ワクチン摂取』という手段がありますね。もし、身近にワクチン摂取できる環境があるなら、ササッと済ませておくのもひとつの手段と言えるでしょう。
髄膜炎に至るには、血中に存在する原因菌かウイルスが、髄膜まで到達する必要があります。そうでなくても、たとえば以下のようなルートが存在します。
・事故などで頭部に怪我を負い、そこから感染
・風邪、中耳炎、肺炎、麻疹などの合併症
髄膜炎を発症した場合、以下のような諸症状が表れます。
・激しい頭痛
・発熱
・吐き気
・倦怠感
・首筋が硬直して曲がらなくなる
頭痛、じゃなくて激しい頭痛です。あと、髄膜がヤバくなってるってことは、その内側に存在する『脳』もヤバくなるかもってことです。つまり『脳炎』も考えなきゃいけないわけですね。脳炎の場合、意識の混濁やけいれん、性格の変化などが起こり、まさに『脳の変化』が起きていることがわかります。いずれにしても、髄膜炎の異常は命にかかわるため、場合によっては検査結果が出る前に治療が開始されることもあります。
検査方法に関して。上記のような症状を臨床段階で聞き取り、さらに脳の撮影や脳波検査、髄液の採取などで判断します。髄液は無色透明なので、なんかしら色があったり濁ったりしていたら、それはもうアウトってことですね。
迅速な治療が必要とはいえ、原因菌を特定しなければ適切な治療は行えません。採取した髄液を培養し、どのような成分に異常があったのかを調べることで原因菌を特定、それに合わせた治療を行います。患者さんができることといえば、お医者さんの処置を信じて折り紙を折ることくらいですかね。
もっと詳しい情報がほしい! という方は、ぜひ以下のサイトへアクセスしてみてください。とても役に立つ情報ばかりですよ。
NIID 国立感染症研究所
ttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/520-viral-megingitis.html
MSD マニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/09-%E8%84%B3%E3%80%81%E8%84%8A%E9%AB%84%E3%80%81%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%AB%84%E8%86%9C%E7%82%8E/%E9%AB%84%E8%86%9C%E7%82%8E%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%BA%8F
のちのち、脳炎についても書いてみるかね。




