【心理学】犬と猫と猿で見る、生き物の"学習"方法
人間は優れた学習能力をもっていますが、他の生き物はどうなんでしょうね?
学習。それは知識やスキル、能力や価値観、さらに行動に関する『新たな獲得・修正』を意味します。人間は優れた学習能力をもつとされ、他の生き物と比較しても明らかに突出した知能を持ち合わせているようです。
人間にとって『学習』は欠かすことのできない存在です。赤ん坊のころから、人間は様々な学習をして育ち、学校でお勉強をし、部活の練習でスキルを磨き、たくましい大人へと変貌していきます。たとえ年をとったとしても、その頭に刻まれた知識は長く脳内にとどまっていることでしょう。
学習することは良いことです。ということで、今回は『学習』について深掘りしていきましょう。心理学的に提言されている学習につて、いくつかの例を交えつつ書いていこうと思います。まずは『古典的条件づけ』という学習方法を紹介しましょう。
アナタは『パブロフの犬』という言葉を聞いたことがありますか?
『イワン・パブロフ』さんは、旧ソビエト連邦時代に活躍した生理学者で、生き物の『消化腺』に関する研究でノーベル生理学・医学賞を受賞していらっしゃる方です。パブロフの犬は、そんな彼が残した研究のひとつです。
けっこう倫理的な問題方面でも騒がれた実験でもあります。ちょっと内容を紹介しましょう。
犬の頬に手術によって管を通します。唾液腺と繋いで、唾液が分泌されたらそこを通る手筈になるわけですね。で、管を通った唾液の量を測ることができるわけです。
次に、犬に餌をやるタイミングでベルを鳴らします。これには『ベル』だったとか『メトロノーム』だったとか色々説がありますが、ここではベルで統一していきましょう。
犬を飼ってらっしゃる方ならわかると思いますが、わんこはけっこー賢いのです。散歩の時間になるとソワソワし始めるし、食事のため袋を開ける音を聞くと、すっ飛んでお皿のまえでスタンバってます。ちなみに、違う袋の音を聞かせてもまったく反応しません。かしこい。
パブロフが実験に使用した犬たちも、そういった学習能力を最大限に発揮し『ベルの音がなる → 餌がもらえる!』と学習したようです。で、唾液の量を測定したところ、ベルを鳴らしただけで唾液量が増えるようになりました。
つまり、ベルが鳴る → 餌がもらえるという学習をしたことで、ベルの音に対する『条件反射』として唾液を分泌するようになったのです。これは『古典的条件付け』という学習になりますね。
ベルの音は、古典的条件付けにおける『条件反射』です。ふつうの犬はベルの音を聞いただけじゃ唾液を出しません。なので、パブロフのわんわんが行った『学習』をさせるには、生き物がもともと持っている『反応』に目をつける必要があります。
餌を食べると唾液を出す。これが生き物がもつ反応です。この『食べる → 唾液を出す』という手続きを『無条件反射』といいます。パブロフの犬は、無条件反射を利用し、その間に『ベル』という手続きを挟むことで、犬に『ベルが鳴ると餌が食べられる!』と学習させた結果なわけです。ベルに反応しちゃうわんこ、かわいい。
最初の『学習』の例にしてはややこしいものを紹介しちゃった感があるけど、まあ許してちょ。よくわかんないって方は、とりあえず『パブロフの犬』でググってみてくださいな。続けて『試行錯誤学習』を紹介していきましょう。
試行錯誤学習。読んで字の如く、試行錯誤して学習することを言います。例として有名なのは、アメリカの心理学者『エドワード・L・ソーンダイク』さんですね。彼によれば、学習は『効果を感じること』が最も重要なのだそうです。
彼が猫を用いて行った実験を紹介しましょう。
猫を箱の中に閉じ込めます。で、箱の外に餌を用意します。当然、箱の中にいる状態で餌をゲットすることはできません。
ひどい! って思うかもしれないけど、この箱実はちょっとした仕掛けが用意されておりまして、天井からヒモが垂れているのです。踏み台に乗るなどしてそのヒモを引くと、ロックされた扉が開き、箱の中から脱出できるようになります。
当たり前ですが、にゃんにゃんははじめ、箱から脱出しようと壁を引っ掻いたり叩いたり、もうなんとかして外に出ようとあらゆる手を試みました。が、それらの行動には効果がなく、やがて猫はそういった行動をやらなくなっていきます。
これこそが『学習』です。箱から脱出しようと思い、あらゆる手段(壁をひっかく、叩くなど)を講じた結果成功しなかった。そういった『ある種の"成功"』を繰り返し、最終的に「その行動はムダにゃ」と学習したわけです。
このまま終わってしまうのか? ――そう思われた矢先、猫ちゃんは偶然にもヒモが繋がれた踏み台に乗り、ロックされた扉を開くことに"成功"します。驚きつつも猫ちゃんは箱を脱し、餌にありつきました。やったぜ。
さて、この時点で猫はまだ、ヒモと扉の関係性を把握していません。ということで、ソーンダイクさんはまた猫を箱に閉じ込めるという極悪非道の行いをいたしました。当然、猫ちゃんはまた閉じ込められたとションボリーナするわけですね。しかし、前回扉を開き脱出したという『成功体験』を覚えている猫ちゃんは、やや時間をかけたものの同じように箱から脱出。餌にありつくことができました。
すかさず、ソーンダイク氏は猫ちゃんを箱の中に閉じ込めます。にゃんこは、さっきよりちょっと速いペースで箱から脱出しました。また箱に閉じ込めると、またさっきより速く扉を開きます。そして、最終的にはムダな動きをすることなく、猫は箱を脱出することができるようになりました。
これぞ『試行錯誤』ですよみなさま! 猫は『ヒモ → 扉』という関係性を『箱から脱出して餌を食べた!』という成功体験にもとづき学習、強化を繰り返してきたわけです。生き物は『なんらかの"効果"を得る』からこそ学習することができるのです。この実験から、ソーンダイク氏は『効果の法則』を導き出しました。
効果の法則。端的に表せば以下の通りです。
・満足を得られる"効果"を感じると、その行動を学習し繰り返すようになる
・満足を得られない"効果"を感じると、その行動は繰り返されなくなる
ダイエットに例えてみましょう。巷で噂の『〇〇ダイエット法!』をテレビで見たアナタは「これしかない!」と試してみます。で、一週間くらいたって体重計を見た時のアナタは――
・体重が落ちていた
→ 満足を得られる"効果"を感じ、継続するよになる
・体重が変わらない or 増えていた
→ 満足を得られない"効果"を感じ、やがてやる気を無くす
実際のダイエットは体重を減らすのではなく『体脂肪率を減らす』方が正解に近いですが、まあ例としてはこんなもんでしょう。どこか心当たり、あるのではないでしょうか?
学習効率を良くしたい場合、小テストを作成し高得点を得るという『成功体験』を積み重ねるというのも、良い勉強法かもしれませんんえ。
ここまでわんにゃんを例に紹介してきましたが、最後に『猿』を使った『観察学習』に関する実験を紹介しましょう。
エストニア出身、ドイツで活躍した心理学者『ヴォルフガング・ケーラー』氏は、全体を見通し物事を認知するという『ゲシュタルト心理学』の提唱者です。その考えをもとにした『学習』心理を提唱し、猿を用いて実験を行いました。
猫ちゃんと同じように、猿を箱の中に閉じ込めます。今度はヒモと扉ではなく本当に密室の箱で、格子の向こう側に餌が置いてある感じです。手を伸ばしても届かないので、猿としてめっさフラストレーションが溜まるんじゃないでしょうか?
さて、猿は猫と違ってどう『試行錯誤』するのでしょうか? ――と思いきや、猿はいとも簡単に餌をゲッチュすることができたのです。それはなぜでしょうか?
実は猿の手が届く範囲にあるアイテムが用意されているのです。それは『短い棒』です。ただし、その棒ではまだ距離が足らず、短い棒の届く範囲にある『長い棒』を活用して、はじめて餌にありつくことができる仕掛けでした。
猿は、試行錯誤や偶然を用いず、自分が置かれた場所、その周辺をくまなく観察し、短い棒を利用して長い棒をゲットし、長い棒を利用して、最終的に見事餌をゲットすることができました。
チンパンジーの頭の中で、たしかに『思考』というものが存在した証拠でもあります。驚くべきは、思考を用いた結果、猿は――
「くっ、餌が目の前にあるというのにッ――まてよ? ここに『短い棒』がある。これじゃまだ餌には届かないけど、短い棒が届く範囲にある『長い棒』だったら届くんじゃないか?」
――という思考、認知、推論が(わたしの誇張表現もありますが)行われたという事実があることです。こういった『洞察学習』は、どちらかといえば『人間』が得意とするところですね。人間は赤ん坊のころから周囲を観察し、推論をたて、色々な行動に移すことができる生き物です。その結果『言語』を覚え『文字』を覚え、他の生き物と比較しても膨大な量の知識を取り入れることができるようになりました。
神様から授かったこの学習能力、たっぷり活かしていきたいところですね。
ちなみに、お勉強的な方面では『一夜漬け』よりも『毎日ちょっとずつの学習』のほうが頭に残りやすいようです。これに関しては『集中学習 分散学習』ってキーワードでググっていただければわかりやすいでしょう。さらに、テストで正解したところは飛ばす、のではなく、不正解だった箇所を復習し、再度同じテストをやってみるのも効果が高いようです。
脳機能を最大限に発揮するならば、なんといっても『休息』がいちばんの学習になります。睡眠中、脳はその日経験した出来事をアッチコッチへインプットしているのです。なので、睡眠不足は学習行為に対してかなーりの敵です。悪です。許しがたい悪です。なので、受験勉強で忙しい時ほどしっかりと睡眠時間を確保しましょう。スマホなんて弄ってる場合じゃないんだぜ。
アナタがいま『学習』したいことはなんでしょう? その内容をしっかり記憶にとどめておくためにも、今回紹介した知識を参考に、ぜひアナタだけの『学習術』を開発してみてください。
毎日コツコツと勉強する。それが最も良い学習方法なんだね。




