【心理学】不安障害 に関する全体的な概要【精神医学】
アナタのまわりに「うつ病は甘え」とか言っちゃってる人、います?
よく『こころの病気』と例えられる精神疾患ですが、より細かく言うと、こいつは『脳の病気』と言い換えることができます。
日本では『うつ病は甘え』という考え方の人がどれほどいるかわかりませんが、精神疾患はれっきとした疾患です。お医者さんのもとへ通い治療を受ける必要がある病気であり、決して甘えなどという言葉で片付けられるものではありません。まあ、アナタが全身複雑骨折しても仕事するぞっていう方なら、もしかすると「うつ病は甘え」と自信をもっておっしゃるかもしれませんが……。
繰り返しますが、精神疾患はれっきとした疾患です。国際的にも『世界保健機関(WHO)』が設けた『国際疾病分類(ICD)』にもまとめられておりますし、『アメリカ精神医学会』からも精神疾患の診断、治療の基準を記した書籍『精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)』が幅広い国で活用されています。日本でも、DMSは精神科医のほとんどが所持している重要な本でして、一般の方でも通販サイトなどで購入できます。気になった方は各自でググってみて、概要や購入の検討などをしていただければ幸いです。
これらのガイドラインによって、精神疾患はそれぞれの種類や症状によって分けられ、診断基準や対処法などが明記されています。今回は、そのなかのひとつ『不安障害』について書いていこうと思います。
:概要:
不安障害、かつては『神経症』という名で知られ、精神分析の走りである『ジークムント・フロイト』氏が病的な不安に関するアレコレを概念としてまとめたものです。ただ、それらの精神障害が、あまりにも多種多様なメカニズムをもっているため、神経症の研究が進むにつれて「これ、もっと細かく分類したほうがいいんじゃね?」という流れになり、現在は多くの分類付けがなされています。
冒頭で紹介したICDでは『06 精神的、行動的または神経発達障害』のひとつ『不安もしくは恐怖関連の障害』として、DSMでは『08 精神障害』のひとつ『不安症群とストレス因関連障害軍』としてまとめられています。詳しく書くと、それこそちょっとした本になってしまうので、ここでは3000文字くらいでまとめる努力をしてみましょうかね。
不安障害とは『不安感が"症状の中心"となる疾患』です。病的なまでの恐怖、不安を覚え、それが本人や周囲の人にとって大きな障害となった場合、不安障害の診断がなされます。
勘違いしないでほしいのは、これ『不安を感じる = 不安障害』ではない、ということです。人間だれだって、不安や恐怖を感じるものです。日常的に経験するそれらをすべて『病気』認定しちゃったら、世の中精神疾患者だらけになっちゃいますよね? ――不安障害の診断が下されるレベルは、アナタが想像しているソレを遥かに絶しています。それを言葉で表現することだって難しいですし、今現在不安障害と戦っている人の話を聞いたとしても、実感することは不可能でしょう。
こういったモノを勉強していくとね、なんか友人が言う「わたし〇〇恐怖症で、こわくなっちゃ~う」とかいうアレがね、もうなんかバカみたいに聞こえてきますわ。おま、それガチの不安障害者の前で言ってみろ、みたいなね。ああいや、わたしにはそんな世間話をする友人さえいませんが……。
閑話休題。とにかく、不安障害の診断を受けるということは、それ相応の『病的なまでの恐怖、不安感』と『自身、そして周囲の領域に重大な障害をもたらすほど深刻である』ことが条件です。まあその他モロモロあるにはあるのですが、それらを事細かに書くと文字数とかわかりやすさとかがね? ――お察しください。
:原因:
不安障害の原因は(精神疾患のほとんどがそうなのですが)はっきりわかっていません。ただエビデンスは順調に積み重ねられており、現時点では以下の要因が疑われている、もしくは直接的な原因とされています。
・甲状腺機能亢進症
・褐色細胞腫
・心不全
・不整脈
・喘息
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
――ビックリしました? 不安障害だからっつって、必ずしもストレス的な要素が原因というわけじゃないんですよ。ちょっと脱線しますが、心療内科の言葉として『心身相関』というものがあります。心の状態は身体に、身体の状態は心に強く影響するっていう考え方でして、実際そのとおりなんですよね。
ということで、アナタ自身のこころのためにも、ぜひ健康的な身体作りをおすすめします。
:症状・徴候:
不安の度合い、タイミングなどは場合により様々です。突然パニックを起こしたような不安に苛まれることもあれば、何分、何時間、そして何日かけて徐々に生じることもあります。この『言いようのない不安感』は、場合によって数年にまで渡ることもあり、この苦痛が患者を『うつ病』など他の精神疾患にいざなってしまう場合もあります。
ただ不安を感じる。それだけのことだと思わないでください。不安障害というのは、これほどの恐ろしさを秘めているものなのです。
また、不安の現れ方、原因によって、ICDの最新版『ICD11』では以下のように分類されています。
・全般性不安障害
・パニック障害
・広場恐怖症
・特定の恐怖症
・社交不安障害
・分離離脱不安障害
・場面緘黙症
・その他の関連障害
:対応・治療:
原因が不明ですが、対応に関してはより効果的な手法が開発されています。薬物療法に頼らない手法として代表的なのは『認知行動療法』でしょう。
えー、脳は不安を覚えます。これに関してザックリ解説すると、たとえば『高所恐怖症』の方が高いところにいる時、脳は「なんか怖い! なんか怖い!!」と信号を出して、様々な症状をひき起こすわけですが、不安障害に対する認知行動療法では、その不安にあえて触れることで、その不安を払拭していく試みを行います。
これを『暴露法』と呼びます。
高所恐怖症の方にいきなり「スカイツリーのてっぺんに行こうぜ!」とか言うのはアレなので、まずは『ちょっと高い位置』に居てもらい、感じる恐怖に触れていただきます。それすら恐怖を感じるならば、まずは『高いところにいる想像』をしてもらうだけでも構いません。
で、その不安と対面し、それよりちょっとだけ強い不安感と対面し、さらに強い不安感と対面し――ということで、最終的に、スカイツリーのてっぺんに行くことを目的とする、ようなイメージです。
これを行う場合、あらかじめ患者に『どの程度の恐怖を感じるか?』についてのレベルを聞き出し、不安や恐怖感が強い順番にリスト化してもらいます。これを『不安改装表(SUDS)』なんて呼ぶのですが、これはテストには出ませんので覚える必要はないですよ。まあ、あくまで数ある対処法のひとつということで、覚えておいてください。
ほか、精神科医はお医者さんですので『薬の処方』が可能です。最近の薬は非常に進歩しており、不安障害では多くの『抗不安薬』が開発され、それらを処方されます。症状の種類や患者の状態により、お医者さんは臨機応変に投薬量や種類を変えていくわけですが、代表的なのは以下の通りですかね。
・ベンゾジアゼピン系抗不安薬
抗不安、鎮静、筋弛緩効果。緊張をほぐし、睡眠薬としても活用できる
・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
名の通り、セロトニンがシナプスに再取り込みされるのを防ぐ
うつ病の薬として有名。不安障害はうつ病併発率が高いため重宝される
精神疾患はれっきとした疾患です。病気です。だからこそ精神科医がいるわけですし、心のケアを専門的に扱う国家資格『公認心理師』の存在があるのです。周囲にこころの不安を抱えている方がいたら、ぜひメンタルクリニックへの通院、もしくは近くの心理カウンセラーへ通うことを勧めてあげてください。
そしてなにより、アナタ自身の心を大切にしてあげてください。こころの病気はよく『心の風邪』と表現されるようですが、ぶっちゃけ精神疾患は『心の複雑骨折』です。いちど変化した心を元の状態に戻すことはできません。どうかご自愛ください。日々をストレスなく過ごしてください。
アナタの心身の健康を願っています。
アナタの心の平穏、プライスレス。




