音の連なりを、人は理解している
人間と音楽は切っても切れない関係。だから世界中に音楽ってのはあるんだね。
突然ですが、みなさんは『音楽』が好きですか? わたしは好きです。聴くのも歌うのも、なんだったら演奏するのだって好きです。
演奏できないんですけどね。
音楽は心と身体を癒やしてくれるとても良いツールで、実際に脳の様々な部位を活性化させ気分や機能向上に一躍を担っている報告があります。有名なのは『モーツァルト』効果ですが、端を発するのは、カリフォルニア大学の心理学者『フランシス・ローシャー』が有名な科学雑誌『ネイチャー』に送った報告です。1993年に送られたこの短い報告は、モーツァルトの『2台のピアノのためのソナタ ニ長調(曲番号.488)』を10分間聴取した直後の大学生36人の空間認知テストの得点が一時的に上昇したというもの。
この報告のおかげで「モーツァルトを聴くとアタマが良くなる」なんて話が吹聴されるようになったわけですが、これは『一時的』な効果に過ぎず、15分後には効果が消失することも報告されています。
その後の実験により『テンポが早い長調の音楽は、空間知能得点を上昇させる』という効果が認められるようになりました。モーツァルトに限らず、この特徴に合致した音楽にはある程度空間認知能力を上昇させる効果が期待できるということです。
音楽の力は偉大ですね。そういった音楽のパワーを取り入れた説として、ハーバード大学心理学教授の『ハワード・ガードナー』氏の提唱した『MI理論』があります。日本語で『多重認知理論』と訳するこれは、人間の知能を
・対人的知能
・倫理、数学的知能
・博物学的知能
・視覚、空間的知能
・内省的知能
・言語、語学的知能
・身体、運動感覚知能
・音楽、リズム知能
の8つに分類しました。音楽の『メロディー、リズム、ピッチ、音質』の認識や識別、あるいはクリエイティブする能力は、人類の本来持つ知能の根幹的なものだと説いているのです。現に、みなさんは普通の音と『音楽』を聞き分けています。これは『ゲシュタルト心理学』に通じる話で、上記に説明したメロディーやリズムなどをその『ひと塊』単位で認識することで、人間はそれを意味のある音の連なり、つまり音楽だと認識するわけです。
音楽の認知は、当然ながら『脳』で感じています。音楽を構成する要素それぞれに脳が知覚する領域が変化しているのか、たとえば音の『周波数処理』に関しては右脳、音の『時間的処理』には左脳の領域が利用されている結果が強く示唆された研究があります。近年は『MRI』など脳の観測技術も進歩しており、人間はある程度『音楽に対する期待』があることがわかっています。この次にはこういったメロディーが流れるとか、次の瞬間に思いっきり盛り上がる場面がある、このようなタイミングでは、脳に電位変化が生まれ次への刺激への期待や、期待していた音でなかったことへの不快感なども含まれます。
音楽を視聴する際はこれらの電位が脳で巡っていきますが、それは演奏者も同じことです。演奏者が楽譜を読み、演奏する際の電位を『PET』で測定した時、楽譜を読む時は『左後頭頭頂葉』が活性化し、演奏音を聴きながら初見の楽譜を読めばさらに『縁上回』が活性化しました。さらに自ら演奏をする作業まで含ませると縁上回はさらに活発になります。
縁上回は、大脳にあって言語理解を司る『ウェルニッケ野』を含んでいるため、これは演奏を聴きながら『楽譜の記号と実際に流れる音楽を意味的に結びつける』役割を果たしていることがつよく示唆されました。これのほか、演奏を聴く、即興音楽を奏でるなど、音楽における様々な活動において、脳はやはり様々な領域を活用しているため、音楽は脳の活性にとても良い働きをしていると考えられるでしょう。
ここで挙げた内容は、上野学園大学音楽学部特任教授である『星野悦子』氏が編集、多数の音楽心理学者により共著された『音楽心理学入門』から引用し、わたしなりの解釈を交えてお送りしております。一般販売に加え、学校での教科書利用に耐えるレベルを目指したこともあり、値段は張りますがかなり読み応えのある内容となっております。もし内容が気になる場合はぜひとも書店にてお買い求めください。
人間の脳は『音楽』を理解しています。音楽を理解し感じ、そして音楽の楽しさを存分に味わうことができます。
アナタは、音楽がすきですか? どのような音楽がすきですか? ――音楽は人生を豊かにしてくれます。いちどゆったりできるイスに腰掛けて、まぶたを下ろし旋律に耳を傾ければ、アナタの脳は夢見心地でうっとりしているかと思います。
ドレミファソラシド。歴史の中である意味生き残った音階だけど、この音階じゃなくても人間は音楽とくりゃあヒャッハーしちゃうもんだ。




