自分ファーストは社会ファースト
本日は心理学的な内容をしましょう。人間の欲求が果てしないのは、実は自分のためであり社会のためでもあるんだぜって話。
アナタには"欲求"というものはありますか? え、ない? ――それが逆に危ないかもしれませんよ?
人間というくくりにとらわれず、生ある物質はすべて欲求を持っています。生存的な問題に関わる欲求であったり、子孫繁栄に関する欲求であったり、人類の場合はそれらをわりと楽にクリアしていますから、そこからさらに自らの求める欲求があり、社会的な成功に対する欲求が強まっていきます。
本日はそういった『人間の社会的欲求』を、いくつかの説を紹介する形で書いていこうかなと思います。本日は『トム・ジャクソン』氏著作『図鑑心理学 歴史を変えた100の話』より、わたしなりの解釈を交えてやっていきましょう。
『デイヴィッド・マクレランド』氏はアメリカの心理学者です。ハーバード大学にて教授をつとめ、欲求理論の提唱者としても知られています。
彼は1953年、心理学の商業的応用を試みました。1976年に発表された『3つの主要な動機ないし欲求』に関する理論は、現在でもたびたび用いられる素晴らしい理論であり、自分の現状を観察したり、目標を再確認するためにもよい材料となるでしょう。
彼は3つの大きな要素として『権力への欲求・所属への欲求・達成への欲求』を挙げました。
権力への欲求とは『他者への影響力を行使してコントロールしたい』という欲求です。なにも悪い意味ではなく、この志向が強いタイプは『責任を与えられることを楽しむ』などといった側面もあります。上昇志向がつよく積極的に仕事にあたる姿勢は、さらに上の立場にいる人々を感心させるでしょう。いざ権力ある立場担った場合、よく他者を統率し、良い指揮官となってくれるはずです。
所属、あるいは親和への欲求とは『他者との交友関係を作あげたい』という欲求です。チームの一員であることを望み人間関係的な距離感が短いタイプは『他者との良好関係』に重きを置きます。コミュニケーションが重要になる職場や円滑な情報通達が必要な場面ではこのタイプの存在が有意に役立つでしょう。ただし自身が仲間と距離を置こうとしないので、管理職には向かない性質があるようです。
達成への欲求とは『自らの成長を第一と考える』という欲求です。向上心をもち、ただ仕事をやるだけでなく質の高さを求める彼らは、良き仕事人としてクオリティを高めてくれることでしょう。職人気質の側面もあり、過度なリスクは避けたいものの挑戦という言葉には貪欲です。
これらの要素は、マクレランドによれば無意識の領域でありだれも自覚がないそうです。自らの潜在的な社会的欲求を見出すことは、己の仕事のクオリティを高めることに繋がります。ぜひいちど自分の欲求を見つめ直してみてはいかがでしょうか?
もちろん、これらは"志向"であり、欲求が過ぎれば様々な問題を引き起こしかねないでしょう。それらは職場などの『内集団』における人間関係の問題も絡んできますし、個々が己を冷静に観察できるかという問題でもあります。より上司の立場にいる人間は、これらを円滑にまとめられる人が理想とも言えるでしょう。後に彼は『回避欲求』という、失敗や困難な状況を回避しようとする欲求もあるとこの概念を追加しましたが、個人的な感想ですが、これらの欲求は多かれ少なかれだれにでもあると思います。だからこその3(4)大要素なのでしょうね。
これらは社会構造のなかにある欲求です。それともうひとつ、人間には『個人的な欲求』がありますね。次はこれを見ていきましょうか。
『エイブラハム・マズロー』もまたアメリカの心理学者です。というか、アメリカにはけっこう著名な心理学者がたくさんおりまして、だいたい戦争から逃れてアメリカに移り住んでの云々的なストーリーが多かったりします。そういった影響か、アメリカの映画を見てるとけっこう心理学を利用してる、活用してるっぽいなって場面が多かったりしますが閑話休題。
彼は生粋のアメリカ人なのでその例には当てはまりませんが、両親が戦禍を逃れて移民したタイプです。アメリカの各大学で教授を努めた後自ら研究所を設立。研究に打ち込み様々な『人間的心理学』の研究に勤しんだ。
彼の理論として有名なものに『欲求の階層構造』があります。人間の自己実現について掘り下げていくうちにたどり着いた答え、人間が満足を得るに関するひとつの体系を見ていきましょう。
おおまかにまとめてしまえば、マズローの欲求階層構造は5段階です。それぞれ
①生理的欲求
――生物的欲求。飲食、性交、睡眠、排泄、呼吸など生物としてなくてはならない欲求を指す。
②安全欲求
――生活上での安全への欲求。外敵からの脅威、社会を生きる上での資金、雇用、資源面での安全。道徳性や家族、健康的な安全などを網羅する。
③愛と所属の欲求
――対人関係の欲求。家族、性的密接性、友人などの交友などを網羅する欲求。
④承認欲求
――自らの存在に対する欲求。自尊心、自身、他者への尊敬、他者からの尊敬など自らが社会のいち員であることを望む欲求。
⑤自己実現欲求
――こうありたいという自らへの欲求。道徳性、創造性、自発性をもち実現しようとする。偏見をもたず事実を受け入れようとし、実際にそれができるようになる段階。
まず①の欲求が根本にあり、それをクリアして初めて②の欲求へと手を伸ばすことができるのです。つまり、実の安全や自らの保証がない状況において、自己実現を果たすのはとんでもなく難易度が高い(あるいは不可能)であるということを示します。
これらの欲求は、満たされると自動的に次の段階への欲求へとシフトしていきます。①の欲求をクリアしたら②へ、それをクリアしたら③へ――そうして、人間は最終的に⑤の自己実現へ向けて歩みだしていきます。
マズローによれば、①から④までの欲求は『欠落欲求』と呼ばれるものです。なにかが足りない、欠けているという気持ちになるタイプの欲求で、それらを達成すると『満たされた』と感じるものです。だからこそ、④までは「なにかが欠けている」という想いを感じ、それを求めていくのでしょう。
自己実現欲求は『成長欲求』です。この段階に至ってはじめて己の成長を意識することができる。自分がいま持っている能力や経験を何かに活かしたい。その意識をもって自らの力で歩み始める。そうやって自己実現していった方が、さらに先の欲求である、たとえば「社会をより良いものにしたい」とか「世界平和に貢献したい」など、見返りもエゴもなく目的や達成を純粋に求められる段階に到れるのです。
もちろん、この段階に到れる方は少ないです。ほんの数%しか『自己実現欲求の先』に至っていません。人間は自らの欲求が満たされなければ外側に目を向けることはできません。というか、目を向けてはいけないのです。それが自然なのですから。教育を受けて、協調性というものを教えられた中で、自分の欲求より他者への貢献を優先してしまう方はたくさんいると思います。ですが、ちょっと立ち止まって一度自分を観察してみてください。アナタはこれらの欲求のどの段階にいるでしょうか? どの段階に"いたい"でしょうか?
人間は社会的生き物と言われていますが、そうである前に個人でもあります。自らの心身が保たれて、安全が保証され、人間関係が良好にあり、他者と良い付き合いができた上で、やっとアナタの心は他者へ目を向ける余裕が生まれます。
自分を大切にしましょう。まずは自分ファーストで生きていきましょう。それは決して自己中心的な考えではなく、アナタ自身の、そして社会のためにも言えることなのです。
アナタがいまやりたいことはなんでしょう? 将来的にやりたいことってなんでしょう?
自分のためにできること、探してみませんか?




