脳科学・心理学のすすめ
表面をかるく撫でる程度の内容ですが、それでもちょっぴり濃い味。みなさんもぜひこの世界の扉を叩いてみてくださいな。
みなさん、科学は好きですか? 脳科学は好きですか? 心理学は好きですか?
わたしはぜんぶ好きです。
ということで(強引)、本日はそれらの豆知識を総合的に扱っていきたいと思います。ちょうど手元に『科学雑誌研究倶楽部』編集の『最新科学の常識がわかる本』というものがあったのでそれを参考に、わたしなりの解釈や知識を動員しつつご紹介していきましょう。この編集者はたくさんの知識を網羅的に凝縮させた本を次々と発酵していらっしゃる非常にすばらしい集団です。お値段も総じて600円台とたいへんリーズナブル。それらのジャンルに興味あるけどいきなりどっぷり浸かった専門書を買うのはちょっと……という方にこそオススメの1冊となっております。
では、さっそく脳科学、心理学分野のお話をしていきましょう。
『脳細胞のおはなし』
脳の神経系はニューロンによって成り立っている。今でこそ常識とされていますが、これを発見したのはスペインの解剖神経学者『サンティアゴ・ラモン・イ・カハール』という方。1906年に『ゴルジ体』でおなじみのゴルジさんと一緒にノーベル生理学・医学賞を受賞した方です。現代の神経科学、神経解剖学の基礎を築き上げた偉人でもあります。
まあ、ゴルジさんとは説の違いでぶつかってたんですけどね。ただ最終的には彼の『ニューロン説』が実証されて、神経はニューロンが互いにシナプスで神経伝達物質を介してコミュニケーションをとっているとする事実が解明されました。
ただ、彼が解き明かした段階では『ニューロンは死滅する一方で再生はしない』というのが定説で、というかつい最近までこの説が主流でしたね。今でも『脳は再生しない』と思ってる方が多いのではないでしょうか?
ところが! 現代ではその説は覆されております。
1965年。ハンガリー出身の生物学者『ジョセフ・アルトマン』がラットを用いた実験で成長後の脳の細胞が増えている事実に気づきました。しかしこの当時まだ観察技術が発達しておらず、彼は「うーん、これグリア細胞が増えただけなのかな?」と考えはじめは疑問視していたようです。
実際にニューロンの数が増えていると判明したのはその30年も後のこと。1999年に心理学者の『エリザベス・ゴールド』によって発見され、ここでやっと『ニューロンが新生している』という事実が判明したのです。
2009年にある1冊の本が出版されました。精神科の順臨床教授『ジョン・レイティ』による著作『脳を鍛えるには運動しかない!』は、その脳細胞を新生させる重要な要素がたくさん記載されていますのでぜひ読んでいただきたいのですが、まあ題名からわかるでしょうが、神経細胞の新生には運動こそが最重要課題だということです。
運動すると脳に『脳由来神経栄養因子(BDNF)』というものがたくさん生まれてくれるのですが、これがまた脳神経に効く(比喩)んですわ。特に『海馬』という記憶を司る細胞に効力を発揮して、幹細胞をどんどんニューロンにしてくれる非常にありがたい栄養因子です。2019年の研究では、87歳の老人でも新たなニューロンが生まれたことを証明しました。つまり、手遅れだってことはないんです。
さあ運動しようか!
『脳のパフォーマンス』
みなさんは「脳は普段10%ほどした力を発揮していない」という話を聞いたことがありませんか? これはまあ比喩的な表現ではありますが正解ともとれます。脳は様々な能力を個々の領域にて分業したつくりになっております。例えば物事を理論的に考えたり計算したりする能力はおでこの裏にある『前頭葉』ですし、見たものを認識し映像にするのは後ろの『後頭葉』です。身体の動きは頭頂部から耳の裏まで続く『運動野』にありますし、人間が感じる恐怖などの感情は、脳の奥にある『大脳辺縁系』に収まっています。
それぞれがそれぞれのタイミングで活動しているので、それら全てが働くわけではないから脳は10%とか、まあそんな感じに言われているのでしょうね。
ただし、これは必要なことです。脳は膨大なエネルギーを必要としますので、もし100%の力を長時間発動してしまった日にゃああっという間にエネルギー源であるぶどう糖やらケトン体やらを使い果たしてしまうでしょう。栄養不足を補うために大量の食事を必要としてしまうかもしれません。
そもそも、脳が何%力を発揮しているか? なんて疑問は思うだけムダってもんです。どうしても数値化したい! という方は、とりあえずコンピューターの『メモリとCPU使用率』みたいなイメージでいてください。コンピューターは我々の手によって際限なく計算処理を以来されますので、あるタイミングでは100%になってしまう場合もあります。しかし脳という超精密かつ巨大なコンピューターはその程度ではビクともしません。というか、そういった処理は意図して制御されています。
うまく負荷具合を制御して「アタマがフットーしそーだよおぉぉ」って状態にならないようにしてくれる。脳ってすばらしい器官なんですね!
『心理学ってフロイトやユングのことでしょ?』
違います(即答)。彼らは『精神分析学』とか『分析心理学』というジャンルの方々です。心理学って言うならとりあえず『ヴィルヘルム・ヴント』さんを挙げておきましょう。まあ、心理学自体が幅広すぎて「これこそが心理学だ!」と呼べるものがもはや無くなってしまっているという事実。心理学者はそろそろまとめてくださいお願いします。
心理学の台頭以前からも、人間の精神に異常をきたしてしまう病はありました。ヒステリーやら躁鬱だったり、それらをなんとかできないかと考えた『ジークムント・フロイト』さんが立ち上げたのが、これらの原因を追求する『精神分析』です。ようは「こういう症状が出てしまうのはこういう事情があるからではないか?」という段階ですね。まだ科学的な検証もできず彼らの言葉による影響が大きかったので、どちらかと言えば『哲学』に近いものでしょう。フロイトの説も科学的とは言えず、たとえば『無意識・夢判断』など曖昧な観点から患者さんの治療にあたっていました。
とはいえ、彼が後の心理学に強く影響を与えたのは否定できません。現代の心理学でも彼の名前や考え方などは学ぶ必要がありますからね。フロイト自身たくさんの精神疾患者と向き合っていた経験もありますから、必ずしもメチャクチャな理論をかましていたというわけでなく、きちんと患者さんらを快方に向かわせた実績もあるのでしょう。
ちなみに、現代の心理学というか、精神疾患者を治療する現場では患者という言葉はあまり使わず『クライエント』という表現が用いられます。治療ではなく『本来の調子へ導く』役目という立場なので、たとえば『本当に優秀な精神科医は感謝の言葉を言われない』といったような名言があります。ありがとうということは『治療された』ということです。治療ではなく、ただ自然と良い方向へ向かっていくために背中を押すだけなので、クライエントが「あれ? なんで私こんなとこ通ってたんだろう?」的な疑問を思うくらいがちょうどよいのでしょう。
さて、どうだったでしょう? 脳科学、心理学についての小話をまとめてみたのですが、ほんのちょっぴりでもこちらのジャンルに興味をもっていただけましたか? だとしたら幸いです。ということで(強引)みなさんもどしどし書店にて脳科学や心理学の本を買い漁ってみてください。どんな本を選べばいいの? って話は以前までの『つれづれグサッ』か、他『ノベルアップ+』などの小説投稿サイトで書いているはず(笑)ですのでそちらをご参照ください。『マグネットマクロリンク』、『ノベリズム』でも投稿していましたね。またあっちでも書き始めてみようかしら。
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深淵を覗いているとき、深淵は恥ずかしがりながらも両手広げて待ちわびてるんですよ




