腸って大切_まとめ
腸には人間以外の生き物が棲んでいる。でも、そいつらは決して敵ばかりじゃなく、人間が吸収できない食べ物を代謝して、人間が吸収できる物質に変換してくれる親切なヤツらなんだ。
善玉菌がんばれ! 乳酸菌がんばれ!
ここまで、腸の健康に良い食材をキーワードにお話を書いてきました。腸の健康は心身の健康。何を食べるか、そして何を食べないかによってアナタの腸内環境が左右される事実は、すなわち健康問題と直結してきます。今回は、これまで紹介してきました腸に良い食材、悪い食材などを総まとめしてみたいと思います。情報をたくさん積み込んでしまうと覚えきらないと思いますので、なるべくシンプルに必要なものだけをスポイトしてみましょう。
本日も例によって医学博士である『松生恒夫』氏著作『腸の老化を止める食事術』を参考に、わたしなりの知識や解釈を交えながらの内容となります。それではやっていきましょうか!
まずは『消化の流れ』的な話を思い出してみましょう。消化器官とされているのは『口から肛門』までで、口で噛んで唾液を出すところから、すでに消化が始まっています。ここでしっかり噛んで消化の"準備段階"を済ませてしまいましょう。咀嚼不足は腸でうまく吸収させられずに食べ物のまま排泄してしまいますからね。
胃袋では強い酸で食べ物を溶かします。ここでも消化は行われますが、やはり消化の主役は腸、それも『大腸』です。大腸で栄養分を吸収して、吸収しきった残りが便として排泄される。
ここでアナタが気をつけるべきことは『しっかり噛んで唾液を出す』ことです。きちんと覚えておいてくださいね!
腸を語る上で欠かせないのが『乳酸菌』です。アレを食べると腸に良いとか、コレを食べると腸に悪いとか言われているのは、総じて
・腸に住み着くどの種類の菌の栄養になるか
・食べる物質が身体に使われないもの、またはそれらに変化するもの
のどちらかに該当するものと言って良いでしょう。前者は主に『善玉菌』を指しており、こいつの栄養となる食べ物を選ぶことこそが、腸の健康に直結すると言っても過言ではありません。
後者は、たとえば『終末糖化産物(AGEs)』などが上げられます。老化にも深く関わる物質で説明すると長くなるのですが、ざっくり『高温調理した食べ物には多く含まれている』と考えていただいてけっこうです。肉などにも含まれているので、お肉大好きな方々はほどほどに控えていただくか、腸内環境を整える食べ物を用意して相殺を測っていただくか――このへんは消化次第なのでどうとも言えませんが。
善玉菌の第一人者として君臨するのが乳酸菌。結論を先に申し上げれば乳酸菌が喜ぶ物質を含む食べ物を摂取すれば良いのですが、ここではまず『食物繊維』について解説していきましょう。
食物繊維とはざっくり言うと『人間の消化酵素では消化できない成分の総称』です。消化されないのでそのまま腸内を通り周りの老廃棄物を巻き込んで便通を良くする効果があるのですが、これらは乳酸菌にとってはスンバラシイ栄養素だったりします。
乳酸菌は食物繊維を食べて酪酸やプロピオン酸、酢酸などの『短鎖脂肪酸』を生み出します。こいつは人間が消化でき、しかもメッチャ良い栄養になるという素晴らしい共存関係。これは食べるっきゃないですね。
食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、意識して取る必要があるのは水溶性。水溶性を意識すれば考えずとも不溶性はクリアできます。スーパーでお買い求めの際は、成分表示の『炭水化物』の項目にご注目ください。炭水化物とは『食物繊維+糖質』なので、そこに『うち糖質』と書かれていれば残りの分量が食物繊維です。水溶性食物繊維は海藻や熟した果物などに豊富ですのでそちらをターゲットにするも良いでしょう。
具体的な食べ物は『キウイ・大麦・もち麦・りんご・プルーン・干し柿・海藻・豆類・根菜』です。白米の割合を減らしてもち麦などを入れつつ、デザートとして熟したりんごにキウイを用意すれば良いでしょう。
続いて紹介するのは『グルタミン』。酪酸と並んで腸のメインとなるエネルギー源であり、間接的に抗酸化作用に寄与する頼もしい物質。腸の粘膜の精製を助け免疫細胞を応援してくれるガードマン必須のアイテムです。
これが不足すると、身体はグルタミンを欲するがあまり筋肉を分解してグルタミン精製に踏み出すので、意識の高い筋トレマニアさんは常にお腹を満たした状態でいることをオススメします。
具体的な食べ物は『刺し身・生卵・発芽大麦』などの生もの。生で食べるタンパク質に多く含まれ、40度以上の加熱でどんどん変性していきます。大麦をさらに発芽させた発芽大麦を炊いて、冷やして食べると効率的にグルタミンを摂取することが可能になります。それに追加して卵をかけて、おかずに刺し身なんか用意しちゃった日にゃあ酒がほしく――あ、冗談です。
続いて『オリゴ糖』の復習。オリゴ糖は血糖値への影響がなくインシュリンも変化しません。しかも胃で消化されず腸まで届くという優秀さ。ビフィズス菌などがメインとして食べて酪酸や酢酸を生み出します。虫歯になりにくい(ならないとは言ってない)こともあり代替甘味料としてもオリゴ糖の『トレハロース・パラチノース』などが利用されていますね。
ただ腐っても(腐らないですけど)糖は糖なので、食べすぎは糖質過多になるでしょう。まあどの食材も食べ過ぎれば毒です。水だって一度に5リットル以上飲んでると死ぬ可能性だってあります(実際水の大飲み大会で死亡例があります)し、どんな食べ物もほどほどにってことです。
具体的な食べ物は『バナナ・豆類・にんにく・アスパラガス・ブロッコリー・ごぼう・アボガド』などです。なかでもバナナはすぐ栄養になる昔から愛用されている果物ですね。
逆に食べちゃいけない食べ物ってあるの? という話。食べちゃダメ! というものは正直ありません。しかし調理過程で生じる『焦げ』などはまったく栄養になりえませんので食べちゃダメ! に入るでしょう。
食べちゃダメ、ではなく、どの食べ物も『適量を守れば食べて良い』というのが正しい考え方になります。そのなかで注意するべき点をいくつかご紹介しましょう。
まずは『果糖ぶどう糖液糖・ぶどう糖果糖液糖・高果糖液糖・砂糖混合異性化』などの『異性化糖』。とうもろこしのでんぷんが原材料のためコーンシロップなんて呼び方もあります。
これらは『甘くて美味しい・清涼感がある』的な特徴があり、ついつい食べすぎてしまうもの。油断したらブレッドのパン袋ごと食べちゃった! なんて経験がある方、いらっしゃいませんか?
白い主食系にも同じことが言えます。糖質だけを残した『エンプティフード』などと揶揄される通り、白い主食は他の栄養素をごっそり抜き落とした食材です。これだけを食べると身体に糖質ばかり供給することになるので、ほどほどに減らしてほかの栄養素も補いましょう。
意外と落とし穴になるのが『植物油脂』という存在。マーガリン、ショートニング的な表記がある食べ物には『トランス脂肪酸』と言い、悪玉コレステロールを増やしやすくする性質があるのでを気をつけください。
脂としてオススメできるのは『動物性油脂・青魚脂・低温抽出のココナッツオイル』で、特に著書でも個人的にも超オススメするのが『エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル』。オリーブの実を加熱することなくすり潰し直接液を抽出したものなので、加熱による性質変化もなくしっかりと自然由来の脂を摂取することができるのです。
食べ物だけでなく『調理法』も注意が必要です。高温調理することによって、成分のなかに『終末糖化産物(AGEs)』が発生します。これは強い毒性をもち、美容業界では『最悪の老化物質』とさえ言われ忌み嫌われる存在。避けたいのであれば、調理法は『茹・蒸・煮』の3択に絞りましょう。『焼・炒・揚』はNGです。
これら紹介した食べ物は、あくまでも『食べ過ぎ注意!』的な食材です。普段から食べない! 近寄りたくもない! とかそこまで気にする必要はありませんが、油断するとついつい食べすぎてしまわないように、たまぁ~に確認する程度が良いのではないでしょうか?
ここまでで、いったん腸の健康の話は終わりにしようと思います。ですが忘れないでください。腸の健康は心身の健康。何を食べ、何を食べないかによってアナタの健康は守られるのです。
なにも「ゼッタ食べるな!」というわけではありません。上に書いたとおり、何事にもほどほどに、アナタが最も幸せを感じる量を、毒にならないレベルで食べれば、それがアナタのベストな食生活。きっと腸内環境も最高の状態を維持してくれるでしょう。
アナタの心身の健康を願っております。
まあ、場所によっちゃ悪玉菌になったりするんだけどね、あいつら。




