はたらく細胞と血液循環
37兆もの細胞たちに栄養を送り込む血液。そいつはいったいどのような形で働いているのでしょうか?
さて、はたらく細胞2期が終了して2週間経ちましたが、わが栃木県が誇るローカルテレビ局『とちぎテレビ』でははたらく細胞BLACKに合わせてまだ過去話の再放送が行われております。エピソードはバラバラですが、先週は今の季節で放送するに最適な『花粉症』が題材にあげられていましたね。
今回のお話は『血液循環』のお話でした。前期『はたらく細胞』の第8話で放送されたそれは、方向音痴の赤血球が、血液が一周して、赤血球が酸素を配達するまでのお話をひととおり取り上げたものですね。アニメ感想も良いのですが、今回も前回同様、アニメ感想を交えながら知識的なお話をしていこうかなと思います。
ちなみに、わたしは『ノベルアップ+』さんのほうにも『はたらく細胞BLACK』の感想を載せています。ご興味あるかたはそちらも覗いてみてくださいな。
血液循環を『心臓に入る段階をスタート』として考えるならば、まずは『下大静脈』でスタンバイしてる感じですかね。言うまでもなく、血液は心臓から全身を行き渡ってやがて心臓に戻ってくるということはみなさんもご存知かと思います。心臓のドックン! という鼓動は心臓にへばりついている『心筋』が動いてポンプのような役割を果たすことで血液を流し込むわけですね。戻ってくる血液は全て心臓に集まるわけですから、そこには大量の血液が流れる道が必要になります。それこそが下大静脈です。
ぶっとい3~4センチはあろうかというパイプのなかには血液がびっしり。おおよそ下半身から登ってくる血液がほとんどなので、アニメでの描写があったように赤血球をはじめとした細胞たちは「あ~キツイっす」的な気持ちで歩いていると思います。
いや、流されてるんだけどね。
下大静脈というからには『上大静脈』というのもあります。主に心臓より上部から戻ってきた血液が戻ってくる血管ですが、こちらも下大静脈ほどではないにしろ太いです。こちらは容量や降りてくるという特性上、細胞たちにとっては下大静脈より進みやすいんでしょうね。
さて、心臓にやってきましたよ。生物が活動するのに必要不可欠な臓器のひとつです。これが止まったら代謝や呼吸ができなくなるからみなさんも注意してくださいね☆
人間の心臓はおおまかに『2つの部屋』があり、それぞれさらに2つの小部屋に分かれています。これは鳥類とか哺乳類とかに共通する機構なのですが、実は魚類などは2つの部屋のみだったりします。それぞれの環境に合致した血液循環の手法を獲得した結果ですね。
下大静脈(上大静脈)から心臓へ到達した血液は、そこから心臓の入り口である『弁』をくぐり『右心房』へと侵入します。ここはシンプルに『血液のたまり場』だと思ってください。ここにはどんどん血液が溜め込まれて赤血球ちゃんが体験したようなムギュー状態を味わうことが出来ます。
心臓がドックンと鼓動すると、そこに溜まっていた血液は『右心室』へと流れていきます。この部屋はまさに『血液発射』のスタンバイのための部屋です。心臓の収縮でこの部屋にある血液が心臓外へと送られるわけですね。こういった各部屋の境目にはどこも弁がありますので、弁に損傷があったりなんだったりしなければ血液が逆流することはありません。もし逆流することがあったら胸に激痛が走るはずなのですぐ察することが出来ます。至急病院へ向かってください。
で、発射された血液は『肺動脈』を通って肺へと向かいます。ここで持ち運んでいた『二酸化炭素』を手放し『酸素』を受け取ります。ちなみに、ここで受け取った酸素をそのまま肺への栄養源にすることはなく、肺には専用の血液を通して酸素や栄養を送り込みます。ここはあくまでも受取専門の場所ということですね。
肺で酸素を受け取った後、肺静脈を通して心臓の『左心房』へと戻ってきます。心臓の左右は頑丈な膜で隔てられていますので基本的に破れることはありません。ついでに言うと、血液を送り出すための『心室』は柔軟性抜群の膜でできているので効率よく収縮することができます。
右心房も左心房と同じように血液のたまり場として機能し、心臓が鼓動するまでそこで待機することになります。で、ドックン! したら同じように弁を通り『左心室』へと入り込みます。
ここまでたどり着いた血液こそ、真の『スタンバイ状態』と言えるでしょう。次の鼓動で一気に全身へと流されていき、血液の流れに乗った赤血球はわりとなりゆきで全身の様々な細胞に酸素や栄養を送ります。アニメのように届け先を指定されることは当然ながらありませんぞ。ただし生命維持が困難な場合は、身体の中心部へ優先的に酸素を送る仕組みになているようですね。いやぁかしこい。
おおざっぱに表現してしまえば、血液循環の説明はこれだけで良かったりしますね。なんと言っても血液循環は『心臓』!! こいつが働かないことにゃなんにもなりませんえんというのが血液循環系の正体だったりして、動脈と静脈はそれぞれ部位によって名前はあれどやることはすべて同じです。さながら車が走る道路のように、あちこちへと枝分かれしている(ただし一方通行の)血管を走りつつ赤血球は酸素や栄養を運び込み、二酸化炭素を受け取った状態の血液はどんどん黒ずんでいきます。動脈を切ったら赤々とした血が流れ、静脈は黒っぽい血がでるのが特徴です。
ただし、静脈はにじむような感じで血が出るのに対し、動脈は心臓からの圧力が近いためにドバッ! と血が飛び出してしまいます。心臓に近ければなおさらとまりません。傷口を塞いだ上で上部の血流を滞らせる工夫なんかも必要になりそうですね。そのへんはお医者さんの判断に委ねられるでしょう。もし応急処置が必要なばあいは傷口を消毒しキレイなガーゼなどでキズを覆い、出血のないようしっかり押さえつける必要があります。あとなるべく高い位置に置いといてね!
ちなみに、生物の進化と言うべきなのでしょうか、動脈はだいたい身体の内側に、静脈は身体の外側に流れているようです。確かめる方法というわけではないのですが、例えば腕の動脈はどこにあるか探してみてください。手首の内側にありますよね? なんらかの驚異と出くわして腕でガードしなければならない時、動脈は自然と身体側へ向くことになります。身体ってわりと考えられて設計されてるんですねぇ。
動脈と静脈でも微妙に構造が異なっています。動脈は頻繁に心臓からの圧力を受けるので血管がより丈夫に作られています。血液が通る中心部から辿ると
血管内皮 → 弾性膜1 → 平滑筋 → 弾性膜2 → 栄養血管 → 外膜
といった順番。対して静脈は
血管内皮 → 弾性膜 → 平滑筋 → 栄養血管 → 外膜
となり、動脈より薄い構造となっています。静脈の場合はさらに、ところどころ弁があり逆流しないような設計がなされています。考えてるうっ!
ここまで考えられて設計されている血管ですが、コレステロールや脂質がたくさん溜まってしまうとそうもいかなくなります。血管の流れがその位置だけ歪んだり、ゆっくりになったりするとたちまち渋滞を起こして『血栓』を生み出す元になります。それがなんらかのキッカケでボロっといっちゃって、それが大静脈の弁なんぞにひっかかっちゃった日にゃぁ……ね?
ということで、健康的な食事や運動は必要不可欠なのですよ。みなさん、運動しましょう? しっかり睡眠とりましょう? バランスの良い食事をしましょう? じゃないと――アナタの中にいる細胞たちが反乱を起こすかもしれませんよ?
アナタの健康を願っております。
赤血球ちゃんかわいい。けどさすがにリンパ管に入ろうとしたり逆流しようとする輩はNGで。




