ゴーストの猛攻
遅れてしまって申し訳ございません!
「指揮を執るって、お前に何の権限があるんだ!? 優一!」
宏大が声を大にして優一に無線を送る。
『暁美直々の命令だ。権限は俺にある。とにかくAランクの増員はなしだ。今すぐ出撃命令を取り下げてくれ』
「りょ……了解しました」
指令を出した隊員が待機していたAランク隊員の出撃命令を取り下げる。霊斗が落ち着いた口調で優一に尋ねる。
「優一くん。何を考えているんだ?」
優一はニヤリと笑って、言葉を返す。
『秘密だ。黙って見ていろ』
一方的に優一は無線を切断し、司令室が騒がしくなり始める。
「優一ってレジェンドの……」
司令室で戦場をモニターしていた隊員たちが、一斉にレジェンドランクの6人に目を向ける。伊澄小隊の悠香以外の2人は苦笑いを浮かべ、元・優一小隊の3人はため息をつく。
「あー。優一は今、AAAランクだ。あいつの言うことは大体信用できる。気楽にモニターを見ていてくれ」
宏大が隊員たちに声をかけ、安心させようとする。そして司令室にいる全員は、戦場を映し出しているモニターに目を向ける。
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「これでよしっと」
優一は隣で一緒に落ちている玲奈に目を向け、ニッコリと笑みを浮かべる。
「お前の出番だ。戦況はゴーストが増えて、混乱状態に近い。Aランク隊員数名が出撃しているとはいえ、厳しい状況だ。だけど、飛行技術が他人よりも長けていて、仁に地上での戦い方を教わったお前なら朝飯前だと思う。思いっきり暴れて、ゴーストを殲滅してこい!」
「優一さん……分かりました!」
玲奈は自分の背中に、霊力で生成された青い翼を展開し、力強く羽ばたいて戦場に向かう。
玲奈を見送った優一も、背中に霊力の翼を展開して、別方向に飛んでいく。
(ゴーストの殲滅は任せたぞ……俺は)
優一の瞳に光り輝く球体が映る。
(ディスペアゲート……アレの破壊だけは手伝ってやるか)
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(遼……詩織……無事でいて)
仲間である遼と詩織の無事を祈る玲奈に無線が入る。
「はい、水澤です」
『良いとこ取りの登場ね。玲奈ちゃん』
無線相手の声を聞いた瞬間、玲奈の頭の中ではある人物が浮かび上がった。
「え? 穂香さん!? どうして私に無線を!?」
『いや~、訳あって玲奈ちゃんの小隊のサポーターを急遽やっているの』
「サポーター? 私の小隊の?」
無線越しで穂香がクスクスと笑っているのが聞こえ、自分の小隊のサポーターをやっている理由が気になった玲奈だが、戦場に目を向け、尋ねるのをやめた。
「ちょっかいかけるために、わざわざ無線を送ってきたわけじゃないんですよね?」
『フフフ……もちろんだよ』
玲奈は目を細めて、穂香に戦況を確認する。
「ゴーストの数は?」
『約2,000体』
「隊員への指示は?」
『通達があって、Aランク以外の隊員は退避を始めたよ。暴れるにはもってこいの状況だね』
玲奈は深呼吸を行い、気持ちを落ち着かせて、さらに加速する。そして退避しようとしている隊員を追いかけているゴーストに狙いを定め、キャノンを手に取る。キャノンをチャージモードに移行させ、一色を纏わせたチャージ弾をチャージし始める。
「水澤玲奈……エンゲージ!!」
引き金を引いた瞬間、キャノンからチャージ弾が放たれ、玲奈が狙いを定めたところに飛んでいく。チャージ弾はゴーストに当たっても消えることなく、地面に向かって進み続け、最終的に地面に着弾し、半径数十メートルにわたって爆発が生じる。
大規模な爆発を目の当たりにした隊員たちは一斉に玲奈の方に目を向け、退避していた隊員は深々と頭を下げ、遠くにいたAランク隊員は目を細める。
「あれが……途中入隊して、Aランクをもらった新人……」
「水澤玲奈先輩ですよ」
隼人が嬉しそうな表情で玲奈を見つめ、周りのAランク隊員は隼人に視線を移す。
「隼人、知り合いなのか?」
「彼女が来たのなら、僕たちも撤退モードに入りましょう」
ゴーストが彷徨い続けているにもかかわらず、隼人は本部に向かって撤退しようとした。しかし、周りのAランク隊員に止められ、撤退の理由を聞かれる。
「待て待て待て! 新人1人でどうにか出来る状況じゃないぞ! 撤退する根拠は何だよ!」
「単純な理由ですよ。彼女は強い。僕たちよりも遙かに強いからです」
常日頃、緊張感を抱かない隼人が真剣な顔を浮かべたのを見て、先輩Aランク隊員が軽くため息をつく。
「ったく、一番下っ端だが、実力があるお前が言うのなら間違いはないんだろう」
先輩隊員は隼人の意見を尊重し、撤退モードに入る。自分の意見が通った隼人はニッコリと微笑む。
「よし、ゴーストの殲滅は新人に任せて、B・Cランクの補助に入るぞ!」
『了解!』
隼人たちは大きな声で返事をし、B・Cランクの方向に向かって飛び始める。去り際に、仕切っていた隊員が戦っている玲奈に目を向ける。
(隼人が認めるほどの実力……この目で見せてもらうとするか)
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遼と詩織は遮蔽物に身を隠しながら、ホープ本部を目指して撤退していた。2人も玲奈の現場入りを耳にしていたが、自分の命を守るのに精一杯だった。
「くそッ! 玲奈が現場入りしたって言うのに!」
「後から来たゴーストの攻撃が激しすぎるよ~」
遼は苛つき、詩織は弱音を吐きながら襲いかかってくるゴーストに反撃する。一色や、威力重視の四色を使いながら、隙を見て後退し、他の隊員のカバーに入る。
「西原! 月影! 前に残りすぎだ! もっと下がれ!」
Bランク隊員の1人が遼と詩織に指示を出す。怒鳴り声に近い指示を聞いた2人は、ゴーストに背を向けずに後退する。
「玲奈と一緒に戦いたいのに……」
「ゴーストが増えただけで私たちは……」
『こちらAランク選出部隊。これより援護に入る』
Aランクからの無線を聞いたB・Cランクの隊員たちは安堵の表情を浮かべ、飛んでくるAランク隊員たちの姿を、目視で確認する。
「心強い! 感謝する!」
1人のBランク隊員が無線を返すと同時に、再びゴーストが攻撃を始める。大量の霊力弾が放たれ、一部の隊員が被弾する。
「ぐあぁ!! う、腕がぁ!!」
霊力弾によって腕を吹き飛ばされた隊員が尻餅をつきながら、失った腕を庇い始める。
「落ち着け! しっかりしろ! バトルサポートを起動している状態だったら、サポート終了後に腕は戻ってくる!」
カバーに入った隊員が、腕を失った隊員を落ち着かせる。
「それに、本当に戦えない状況になったら、本部まで瞬間移動させられる。まだ戦場にいると言うことは、戦えるってことだ! 気を強く持て!」
取り乱していた隊員は落ち着きを取り戻し、残った片腕で中距離武器を手に取り、カバーに入った隊員の後ろから銃弾を放つ。
「それでいい! この調子で撤退していくぞ!」
隊員たちの心が1つになりかけた時、大型の獣ゴーストが隊員めがけて前足を振り下ろす。
「グルルルル!!」
全員が獣ゴーストの呻り声を耳にした瞬間、地面に衝撃が走る。
「しまっ!!」
1カ所に固まっていた隊員たちは、獣ゴーストの一撃によって強制的に本部に瞬間移動させられた。僅かに残ったBランク隊員と遼と詩織は、冷や汗を流して一瞬の出来事に思考が止まる。
「け……獣ゴースト! それも大型の……」
Bランク隊員が目を白黒させて獣ゴーストに銃口を向ける。しかし、隊員の腹部に鈍い音が鳴り、隊員は自分の腹部を見る。
「あ……え?」
隊員の背後には人型ゴーストが立っており、背中から刺した霊力の刃が隊員を貫いていた。
「く……クソッ! 強制撤退!」
隊員は撤退という言葉を口にすると、その場から一瞬にして姿を消す。
「消えた? ……いや、本部に戻ったのか」
遼と詩織はゴーストに囲まれ、攻撃されまいと銃口を向け、隙をなくす。
「遼くん……結構ヤバいよ?」
「分かってる……Aランクが来るまで踏ん張るぞ」
「それまで霊力もってね」
遼はニヤリと笑い、詩織に言葉を返す。
「お前こそ、距離詰められてあっさりやられるなよ」
「気をつけておくよ」
2人は覚悟を決め、遼の周囲には赤い球体が2つ現れ、詩織は背中に翼を展開し、愛銃であるホークをギュッと握りしめる。
「俺は人型をやる。詩織は獣ゴーストを頼む」
「分かった」
『遼くん、使用できる霊力量が少なくなってきたから、できるだけ省エネで。しおりんは空にいるゴーストも多いから背後に注意してね』
2人のサポータをしている穂香が無線でアドバイスを送り、元気ある声で2人は「はい!」と言葉を返す。
そして2人は弾けるようにその場から離れ、迫り来るゴーストを迎え撃つ。
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ディスペアゲートの前を滞空する優一は、バトルサポートを起動して、武器装備を身に纏う。左腰に携えている黒い剣の柄に手をかけ、鞘から引き抜く。
「これ以上、増えてもらっちゃ困るんだよな~」
やる気のなさそうな表情で、横一の字に剣を振り、ディスペアゲートを真っ二つにする。斬られたディスペアゲートは鏡が割れたようにヒビが入り、音を立てて崩れ去る。
「全く……堂々と本部の近くに現れるなんて良い度胸だな」
独り言を呟き、騒がしくなった地上に優一は目を向ける。獣ゴーストの一撃で多くの隊員が撤退したのを見て、優一は頭をガリガリと掻く。
「獣ゴースト程度に不意突かれて撤退するなんて……奴らもまだまだだな。しょーがないな。助けてやるか」
残った隊員の援護に回ろうとした瞬間、背後から漂う殺気に気づいた優一は目を細めて、斬撃を背後に飛ばす。しかし、優一の斬撃は粉々になって消滅する。
「いきなり斬撃とは……結構荒い奴だな」
「お前は……洞窟の中の」
優一が見つめる先にいたのは、単独行動をしていた時に、洞窟の中で遭遇した黒いフード男だった。
「ほぉ……君はあのディスペアゲートを壊そうとしていた戦士じゃないか」
優一は舌打ちし、黒い剣に霊力を纏わせる。優一が戦う気満々なのを察したフード男は、右手に霊力で生成された青い剣を出現させる。
「悪いけど、私と一緒に遊んでもらうよ」
「遊ばねーよ。一瞬で終わらせてやるよ」
優一とフード男は一気に距離を詰め、お互いの剣を交わらせる。近くに浮いていた雲は、2人を嫌うように離れていき、お互いの霊力がぶつかったことによって衝撃波が空を駆けていく。
新年初更新!
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