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Hope〜希望を信じて〜  作者: 伊澄 ユウイチ
ようこそホープへ
38/80

玲奈VS隼人

 三上隼人は予定時間の1時間以上も前から電脳チャンネルで玲奈を待ち続けていた。玲奈がどういう戦い方をするのか想像して、どう対処していくかをイメージしていた。


「ん~相変わらず素晴らしい想像力。自分でも惚れちゃうほどのイメージトレーニングだ」


 そして頭がおかしいのかと思われても不思議じゃない独り言。しかし、それら全てが彼を強くする。ある程度の予測、予定を組み立てることによって、確実に相手を仕留める。オマケに言葉で相手を惑わし、わずかな隙を狙って攻撃する。


 それが彼の戦い方である。


「……来ましたね」


 隼人は転送された玲奈を見て嬉しそうに微笑む。


「予定より5分遅刻ですよ。僕を恐れて逃げたのかと思いましたよ」


「いや、ちょっと寝てただけ」


 ヒリつく雰囲気を求めていた隼人は思わず倒れそうになるが、踏ん張る。そして改めてルールを確認する。


「ルールはランク戦同様のルール。何でもありの1本先取。そして約束も確認しましょうか?」


「いや、覚えてるからいいよ。さっさと始めて終わらそ?」


 調子を狂わせるような返答をする玲奈に対して、隼人は表情を引きつりながら戦闘準備に入った。玲奈も重心を落として、臨戦態勢に入り、戦闘開始のカウントダウンを待った。


 数秒後、外部からの無線が入る。


『今から模擬戦を始めます! 水澤先輩頑張ってください!』


 声の主は早紀だった。


『水澤玲奈VS三上隼人。カウントダウン開始! 5・4・3・2・1・開始!』


 開始と同時に隼人は玲奈との距離を取り、キャノンを構えて攻撃する。


「僕の弾幕を避けられるかな?」


 隼人のキャノンから四色を纏わせた銃弾が放たれ、玲奈に向かって飛んでいく。玲奈は流れるように銃弾を躱し、隼人との距離を詰める。そして両刃剣を鞘から抜き、一を書くように剣を振る。しかし隼人は動きを予測していたかのように躱し、六色の光の速さを身に纏い、玲奈の背後に回る。


「予想済みの動きです。背中がガラ空きですよ」


 隼人は背後から容赦なく銃弾を放ち、玲奈の姿は爆煙の中に閉じ込められた。驚くほど自分の想像通りの展開になった隼人は高らかに笑った。


「クハハハ!! ここまで気持ちよく事が進んだのはいつぶりだったかな? 気持ちよすぎて笑いが止まりません!」


 高らかに笑う隼人に対して、一発の一色が笑い声を遮る。隼人の背後が爆発し、隼人の表情が凍り付く。そして爆煙の中に姿を消していた玲奈がキャノンを構えて、隼人を睨みつけていた。


「この展開も想像通りの展開?」


 隼人は口笛を鳴らして玲奈を見つめる。


「僕としたことが……ダウン宣告を聞いていないのに勝ったつもりでいたとは。ですが、これも想定範囲内ですよ!」


 隼人は再び玲奈に向かってキャノンを構えて、一色を纏わせた銃弾を数発放った。飛んでくる銃弾を玲奈は真っ二つに斬り、隼人に向かって走り出す。


「直球過ぎますよ!」


 玲奈の足下が突如赤く発光し、それに気づいた玲奈は六色を使ってその場から離れた。発光した場所は爆発が生じ、地面は抉れていた。


「一色のトラップ?」


「そうです。貴女が真っ直ぐに突き進んでくることは予想できました。だから一色を纏わせた銃弾を放った後にコソッと仕掛けさせてもらったのです」


 自信満々の表情を浮かべる隼人を見て、玲奈は大きく深呼吸をする。


「……なるほど、Aランク隊員になるだけのことはあるね。次の動きを予測しながら自分も動く。中距離で戦う上で大事な事ね」


「基礎中の基礎ですよ。この程度なら誰だって出来る。だけど、予想とは裏腹のことも起きてしまうこともある。だがそれは凡人の予想! 僕の予想は外れることはない! 故に貴女の動きは手に取るように分かるんですよ!」


「やっぱり鼻につく話し方だね……あんたは人の動きを完全に予想できるかもしれない。だけどね……予想できても対処しきれるかな?」


 隼人に向かって銃弾を放つが、薄らと微笑んだ隼人はヒラリと躱す。しかし、玲奈が放った銃弾は軌道を変えた。


「これは……三色!?」


 銃弾が三色を纏っていたことに気づいた隼人は、躱しながら銃弾を撃墜させる。銃弾を全て撃墜して安心しきっている隼人に玲奈は追い打ちをかける。


「良い判断だね。躱し続けてたら体力持っていかれてたね」


 言葉と共に玲奈は剣を振り下ろす。いきなり背後に現れた玲奈を見て、隼人は驚きながら地面を思いっきり蹴り、霊力の翼を生成して空に逃げる。


(彼女との距離を保って躱していたのに……まさか、僕の動きを読んで?)


 玲奈は空を見上げ、不気味に微笑む。


「やっと飛んでくれたね」


 玲奈も翼を生成し、隼人を追って飛翔する。迫ってくる玲奈に銃弾を連射する隼人だが、放った銃弾全ては玲奈に躱される。


「そんなバカな!!」


 玲奈のキャノンの銃口が隼人に向けられる。身の危険を感じた隼人は、さらに上空へ逃げる。隼人の後ろを取った玲奈は、キャノンを構えたまま追尾する。


「後ろを取っても攻撃してこないのなら!」


 隼人は体を反転させ、玲奈に向かって四色を纏わせた銃弾を放つ。すると玲奈はスッと目を閉じ、風の流れを感じて銃弾を躱す。あまりにも美しい玲奈の飛び方に見とれてしまいそうになった隼人だったが、今一度気を引き締めて旋回する。


「Aランク隊員だって聞いたのに、つまんない飛び方」


 つまらなさそうな表情を浮かべた玲奈を見て、隼人は冷静さを失い始める。


「つ、つまらないだと? 僕の飛び方が?」


 つまらない……たった一言が隼人の冷静さを欠かせる。


「後悔しても遅いですよ!」


 隼人は玲奈を引き連れて、住宅街を低空で飛んだ。建物を利用して引き剥がそうとするが、玲奈は涼しい顔をして後ろに付き続ける。


「こんな程度じゃ、私は振り切れないよ」


 隼人の飛んでいく先を読んだ玲奈は、建物に向かって一色を纏わせた銃弾を数発放つ。そして着弾した建物は爆発と共に崩壊し始める。


「建物が!?」


 崩壊する建物を躱しながら突き進む隼人だが、玲奈の存在を一瞬忘れる。次に後ろを見たときには玲奈の姿はなかった。


「振り切った?」


「そんなわけないじゃん」


 声に反応し、左方向に目を向けるが、玲奈の剣が目の前まで迫ってきていた。玲奈は翼を狙って剣を振り、隼人に飛ぶ術を失わせた。翼を失って墜落する隼人は焦りながらも、飛んでいる玲奈にキャノンの銃口を向ける。しかし、玲奈の姿は一瞬にして消え、引き金を引こうとしたタイミングで玲奈が真横に現れる。


「次は腕」


 隼人の右腕は一瞬にして切断され、驚く間もなく左腕も切断される。翼を失い、両腕も失った隼人は、勢いよく地面に叩きつけられる。


「がはッ!!」


 むせ返り、苦しそうに地面を這う隼人を見て、玲奈は静かに言葉を述べた。


「あんた、仁は弱いみたいなことを言っていたけど、この状況でも同じ事言える?」


「かはッ……はぁ……バカな、僕の予想は間違っていなかったはず」


「そうだね、予想はドンピシャだね。だけどそれは最初だけ。私が三色の追い打ちで斬ろうとしたとき、あんたは空に逃げた……だけど、それは私が望んでいた展開。全てはあんたが最初に翼を生成して飛んでもらうために」


「……自然と追い込まれていたのか」


 玲奈はゆっくりと地上に降り、隼人に歩み寄る。そしてトドメを刺すため、剣の切っ先を隼人に向ける。


「これで終わり」


「……まだです!!」


 隼人は足で一色を発動させて、玲奈の足下に爆発を起こした。直撃を確信した隼人はニヤリと笑う。


「甘いですよ! 油断していると今みたいに足下をすくわれますよ!」


 勝利を確信し、高らかに笑う隼人だが、一瞬にして笑い声は途絶える。


「言ったはずだよ? 終わりだって」


 玲奈の姿は上空にあり、玲奈が放ったチャージ弾が隼人の体に直撃する。隼人はもう一度声を発することなく、電脳チャンネルから除外された。


『戦闘不能を確認。三上ダウン』


 早紀の無線が玲奈に届き、玲奈は軽く息を吐いて電脳チャンネルから離脱する。



 ======



 隼人はベッドの上で体を起こし、頭を抱えて敗因を振り返っていた。


「負けた……動きの予想が完璧だった僕が負けた?」


「お前は水澤玲奈という隊員の戦い方を理解していなかった」


 隼人のいる転送室に入ってきて声をかけたのは仁だった。


「……桜井さん」


 隼人は仁を睨みつける。仁は怯むことなく、話を続ける。


「別室で見させてもらった。確かにお前の予想は完璧だった。対処も最適だった……だが、自分が今対峙している相手が、どんな動きが得意なのかを理解していなかった」


「何!?」


「仁の言うとおりだよ」


 玲奈も話に参入し、隼人に敗因を突きつける。


「もし、あんたが私の得意としている戦い方を知っていたら、変わっていたかもしれないね」


「いや! あの時の追い打ちは、空に逃げて躱したのが正解だ! 下手に防御するとダウンしていたかもしれない! ……ただ、相手が悪かったのは事実です」


 自分の意見を主張し続けた隼人だったが、玲奈の飛び方を思い出した瞬間、意気消沈してしまった。玲奈は困った表情を浮かべながら隼人に言葉をかける。


「相手が悪かったじゃ、この先ゴーストと戦うことになると命取りになるよ」


「……分かってます」


「動きは読めているよ。あとは相手の癖を見抜いたり、自分を見つめ直したらもっと伸びるよ」


 玲奈の一言で隼人は顔を上げる。玲奈はニッコリと笑って隼人の長所を認める。


「七色の使い方も柔軟性があって面白かった。また機会があったら勝負しよう」


 その一言を聞いた隼人は笑顔を浮かべて、承諾の返事をした。玲奈は満足げな表情を浮かべて部屋を後にしようとする。


「水澤玲奈くん……」


「ん?」


 隼人はナノマシンを操作して玲奈にメッセージを送った。メッセージを受け取った玲奈は内容を確認する。


「今送ったのは僕の隊員情報です」


「隊員情報?」


 玲奈が首を傾げていると、仁が説明し始めた。


「ホープでは隊員情報は名刺のようなものだ。氏名年齢はもちろん。所属している小隊や個人ランク順位を確認することが出来る」


「へぇ~、じゃあ私のも送るね」


 内容を軽く理解した玲奈は隼人に隊員情報を送った。


「確かに受け取りました」


 玲奈の隊員情報を受け取った隼人は、少し明るい笑みを浮かべた。


「じゃあね。また会おうね」


 玲奈は背を向けて部屋から立ち去ろうとするが、何かを思い出し、隼人に歩み寄る。


「忘れてた。仁に謝罪してね」


 約束を思い出した玲奈は隼人に謝罪を求める。仁は苦笑いを浮かべて、隼人は思わず大笑いし、誠意を込めて仁に謝罪した。その光景を見た玲奈は満足して、今度こそ部屋を後にした。


「彼女……強いですね」


 玲奈と戦った隼人は率直な感想を仁に語った。仁は微笑んで言葉を返す。


「いや、飛んだときだけだ。強いのは。地上戦はまだまだだな」


「次は勝ちます。彼女に……彼女の師匠である貴方にも」


 隼人の口調が真剣だと感じた仁は、静かに出口に向かって歩み始め、言葉を返す。


「お互い、挑戦者だな」


 それ以上2人は言葉を交わすことなく、それぞれの小隊部屋に戻っていった。

いつもご覧になっていただき、ありがとうございます!


面白ければ評価していただけると幸いです!

また、率直な思いをメッセージしていただけると励みになります!


これからもよろしくお願いします!

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