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大好きなゲームに転生したら、推しも世界も腐りかけてて困るんですが…私が元に戻します!  作者: 藤紫
第三章 世界の危機編

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22/22

22.まぁ、その後を楽しみますか。

それから、数週間が経った。

恵みの森は、以前ほどの輝きとまではいかないものの、確実に回復の道を辿っていた。黒ずんでいた樹々は緑を取り戻し、獣道も少しずつ本来の姿に戻り始めている。討伐隊の出動回数も、目に見えて減った。


学園の日常も、静かに回り始めている。

殿下とフロレンティアは、公式に交際を認めた。

告白の日、殿下はまた言葉に詰まったらしい。周囲は「まだノイズが残っているのでは」と色めき立ったが、本人は後で「ただの緊張だった」と笑って釈明したそうだ。フロレンティアは、その不器用な様子を「むしろ好ましい」と評していた。


ガルドとユリウスは…


表向きは、何も変わらなかった。

ガルドは家の決めた婚約者の令嬢に、丁寧に微笑んでみせる。ユリウスもまた、同様に、自分の立場にふさわしい相手と並ぶ。

二人の間に、以前のような露骨な引き寄せ合いは、もうない。

でも、訓練の合間に、視線が絡むことはある。

一瞬だけ、何かが胸の奥で疼く。

そして、すぐに、意図的に外される。

残ったものは、残ったまま。

消えたものは、消えたまま。

二人は、それを「自分の責任」として、静かに抱えている。


そして……ヒメラ。

彼女は、相変わらず目立たない。

授業中も、休み時間も、一人でノートを開いていることが多い。誰かと大声で話す姿を見ることは、ほとんどない。

でも、放課後になると、彼女は決まって中庭の花壇の方へ向かう。

庭師見習いのレイスが、土のついた手で花の手入れをしている。

ヒメラは、その近くのベンチに座り、時々、短い言葉を交わす。


「この花、今日は元気そうですね」


「ええ。昨日の雨が効いたみたいで」


「……よかった」


それだけの会話。

なのに、ヒメラの表情は、以前よりずっと柔らかい。

ある日、私は遠くからその様子を見ていて、ふと気づいた。

ヒメラが、レイスにノートを見せている。

ページを指でなぞりながら、何か説明している。レイスは、真剣な顔で頷き、時々、短く感想を言う。


……見せている。


前世では、誰にも見せられなかった二次創作を。

今は、少なくとも一人に、見せている。

私は、木陰で、小さく息を吐いた。


「……やっと、か」


声に出さず、呟く。

ヒメラは、巻物を使わなくなった。

改変は、二度としないと誓った。

でも、書くこと自体は、やめなかった。

ただ、今度は「現実を上書きするため」ではなく、「自分の物語を、誰かと共有するため」に書いている。


それで、いい。

それで、十分だ。

私は、踵を返して、教室へ戻る道を歩き出した。

推しカプは、結局、戻らなかった。

ガルドと殿下の関係は、戦友のまま終わった。

ガル×ユリは、公式には存在しないまま、二人の胸の奥にだけ、静かに残った。

(『ガル×ユリ』カプについては、ヒメラと一度、膝を付け合わせて話し合わないといけないけど…解釈違いも甚だしい…)


でも……

この世界は、壊れることなく、ここに残った。

モブの私は、相変わらずモブのままだ。

なのに、今日も、明日も、この日常を見られる。

悪くない。


いや……


最高だ。


風が、校舎の壁を優しく撫でていく。

遠くで、誰かが笑っている声がした。

私は、空を見上げて、小さく笑った。


「まぁ、その後を楽しみますか」


声は、誰にも届かなかった。

でも、それでよかった。

モブの特権だ。

邪魔はしない。

でも、ちゃんと、見届けていく。



……この先も、ずっと。


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


主人公はモブです。作者に名前を忘れられるほどのモブです(えぇっと…設定資料……あっ、エリスちゃんだった)。


魔導も使わず、チートもなく、恋をするわけでも、冒険をするわけでもありません。モブとして、傍観者としてこれからも(ちょっと腐敗臭を漂わせながら、)この世界を楽しんでいくのでしょう。


……なお、作者は最後まで主人公の名前を忘れかけていましたが、本人は「モブだから仕方ない」と納得しているようです。


(主人公、名前なくてもよかったかも…)

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