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モブ系探索者、異常の深部へ辿り着く 〜空想の友人と歩む英雄譚〜  作者: POG


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第七話

 翌日、俺たちは探索者協会の近所にある武器屋『ビギナーズ・ラック』へと来ていた。

 初心者が手の届くリーズナブルな商品が売りの店だ。


 俺が、せっかく金があるんだからもっと高級な店に行こうと言ったら


「そんな、高いのいきなり買ったって君には使いこなせないよ。後悔するのが目に見えてわかる」 


 と、アルトに諭された。

 初心者向けの高級品もありそうだが


 まぁ確かに自分の向き不向きがわからないのに、買って後悔はしたくないしな。



 店の中には剣や槍、弓など様々な武器が展示されており、俺たち同様、新人だろう人々がそれぞれ武器を手に持ち、吟味していた。


「やっぱ剣が王道だよなぁ」


 前回は初めての境界で、選ぶ時間も訓練の時間も、あと単純な体力もなかった。

 だから銃をを選んだわけだが


 男といえば剣だろう。


 いや、やはりここは日本男児として刀を選ぶべきか?

 刀に関しては偉大なる先輩、〈剣聖〉がいるしな。


 悩みどころだ。


「…そういえば、特級の人達はどんな武器を使ってるんだろうな」


 特級探索者。

 世界でも少数、日本には数人しか存在しない探索者の頂点に位置する連中だ。流石に安売りされている様な武器は使ってなさそうだが、参考にはなるだろう。


「調べてみようか」

 と、アルトがジャケットの内ポケットからスマホを取り出して操作していた。


「おい、いつのまに俺の———」


 いや、まて。アレ俺のじゃねえな。

 反射的にズボンポケットを上から触ったが中にはちゃんと入っている。


 それにアイツは自分のポケットから出していた


「なぁ、アルトそのスマホは?」


「あぁこれ?今朝届いたんだ。いやぁ、便利な世の中だよね。ネットでポチるだけで契約から何から済ませられるんだから」


「俺の金勝手に使ってスマホ買ったのか」


「そうだねぇ」


「テメェ!少しは相談ぐらいしろよ。許可取れよ!」


「まぁまぁ。あっ、あったよ。特級の武器一覧。個人のサイトだから、信頼できるからわからないけどね」


 そう言って、アルトはスマホを向けてきた。

 何がまぁまぁ、だ。この野郎


 と、思っていると周りからヒソヒソと呟く声が聞こえてくる。


「え?あの人急に怒鳴ってヤバくない?」「一人なのにね」………


 …恐れていた事態が起きてしまった

 まさか人生で

『一人で怒鳴るヤバい奴』

 認定される日が来るとは

 グスン


 はぁ、とにかく今は武器の選択だ。

 問い詰めるのは後でだ。


「なになに?……まともな武器を使ってる奴が少ねえ。ていうか大半が武器を使ってねえ」


 剣、杖、斧、拳、銃

 ここまでは、まだわかる。

 だが、なんだよ他のは。

 魔物だったり人形だったり、果ては口にサイコロまで。

 サイコロって武器って言えるか?

 口って武器か?口は口だろ


「ダメだ。参考にならない。そもそも大半が異能オンリーで戦ってるし」


 あんな超人連中を参考にしようと思ったのがそもそもの間違いなのかもしれない。


 直感で選ぶか


「おっ、この手斧なんていいんじゃないか?基本力で倒す感じだからな。小手先の技術なんて使わなそうだし、俺でも使えそうだ」


「そんなことはないと思うけどね。そもそも君力無いでしょ。まぁ、一番いいと思ったものを選ぶといいよ」


 コイツちょくちょく口が悪いな。


 この手斧を買おう。

 力はこれから異能を獲得するからカバーできるだろ。


「さてさて、値段は…二十万。本当に初心者向けなのか?さっきまで見てたやつは高くても十万いかなかったが」


 なんか特別な手斧なのか?


 よくよく見ると値段の下に説明が書いてある。


『鍛冶師・扶桑源蔵制作。なお、本品は扶桑氏本人により失敗作と判断され、長らく倉庫に保管されていたものです』


 なるほど。有名な人が作ったから高いのか。

 でも、失敗作ってどうなんだろうか…


「まぁいいか。成金の俺にとっては二十万ぐらい、痛い出費じゃない」


「なんだか、小物みたいなセリフだね。お金は大事にしないと後悔すると思うよ。

 …近いうちに」


 不安な事を言うなと言い返したいがヤバい奴と思われたくないのでアルトを睨み付ける。


 さっきの一件があるからもう遅い様な気もするが


 俺は手斧を手に取りレジへ向かった。


 ふっ。

 俺はそのうち遺物の武器をゲットする予定だからな。

 二十万ぐらいこの店に貢献してやるさ。


「ありがとうございましたー」



「早速、試しに行くか」

 店を出てそのまま協会へと向かった。


 境界に着くと探索者が多くいた。

 まだ日本なのにこんなに集まるとは、なんかあるのか?


 …そういえば境界ってどうやって行くんだ?

 前回は国見さんと一緒に転移門を使ったが、あれって自由に使えるのか?


 ま、聞くのが早いか


「すみません。境界に行きたいんですけど」


「かしこまりました。どちらの境界でしょうか?」


 どちらの境界?

 もしかして〈幻想の巨塔〉以外の他の三つにもいけるか?

 だが、今回は同じでいいだろう


「えっと、〈幻想の巨塔〉に行きたいんですけど」


「〈幻想の巨塔〉ですね。〈幻想の巨塔〉行きの転移門は十時半に開門予定です。時間まで中でお待ちください」


「分かりました」


 電車なんかと同じで時間ごとに門が開くのか。


 だから、探索者がこんなにいるんだな。

 みんな開門待ちか。


 今は十時過ぎ…座って待つか。

 暇なので他の探索者を観察してみる。


「こう見ると、みんなしっかりとした装備してるな」


「そうだねぇ。それに、彼らに比べてコタローはジャージに手斧一本だから、差が目立つね」


 俺も本格的な探索の前には揃えないとなぁ


 と考えていると背後から声がかかる


「こんな所で会うなんて奇遇ね。小太郎」


「んあ?」


 振り向くと見覚えのある顔があった。

 長い黒髪を後ろで一つにまとめた美人と言って差し支えない人間だ。


「…なんだ、お前か。響」


 協会内が少しざわつき、響に視線が集まる。


 俺に声を掛けてきた女の正体は音無響(おとなしひびき)

 俺の幼馴染だ。


 響は一九歳で探索者となり、その後最年少で上級探索者にまで上り詰めた天才だ。

 固有異能も持っていて今では特級になる日も近いと言われている。


「上級探索者が探索者になったばかりの新人に何のようだ?期待のホープ様は忙しいんじゃないのか?」


「相変わらずバカな言葉遣いね」


 アルトが同意するように頷いていた。

 お前はどっちの味方だ!


「それにしても、まさか貴方が探索者になるなんてね。ついこの間まで親の脛をかじって生きるクズニートだったと思うのだけれど」


「俺は親の脛をかじるクズじゃねぇ。金はあるからな!」


「ニートは否定できないね」

「ニートは否定しないのね」


 アルトと響が同時に言う。


 クソぉ。いくら真実でも言っていいことと悪いことがあるんだぞ


 何か引っ掛かるのか、アルトが響の顔を見ていた。


「ん?…あぁ!思い出したよ。彼女はコタローのお見舞いにきて果物を置いていった人だね」


 コイツが俺の見舞いに来た?

 見間違えじゃないのか?


 まぁいい。


「で、本当に何のようだ?もうすぐ転移門が開く時間だぞ」


「別に、見知った顔を見つけたから声を掛けただけよ。おかしな事じゃないでしょ」


 おかしくはないが、響とは高校を卒業してからの約二年は全く接点が無かったと思うが。


 まぁ、何でか知らないが俺がニートしてた事も知ってたからな。

 ニートがいきなり探索者になったら話ぐらいは聞きたくなるかもな。


「ところで、お前のチームメンバーはいないのか?」


 確か記憶だと響をいれて五人ぐらいのチームだった気がするが


「もう直ぐ来るわ」


「確かリーダーはイケメンなんだろ?」


「イケメン…あぁ、それは前にいたチームね。そのチームはもう解散してるわ」

 嫌な思い出なのか、響の顔がわずかに歪む。


 何があったかは、聞かないでやろう。

 それぐらいの常識はある。


 すると俺たちの元へ一人の人物が近づいてくる。


 一見すると、男か女か分からないほどの美人だ。

 シルクハットを被り、顔には似合わない明らかな付け髭が付けられている。

 しかも、服装は革鎧だ。


 独特が過ぎるファッションだな。

 個性的にも程がある。


「やぁ、ヒビキ。遅れて申し訳ないね」


 その一声で俺は目を見張る。

 めちゃめちゃ声が渋い。

 いやこれだけでは男と判別できない。たまにそういう声の女の人もいるし


「いいえ。時間通りだわ、アン。小太郎、紹介するわ。この人はアン・ノーレス。私は彼とふたりでチームを組んでるの」


 …彼って事は男なのか?


「アン、このアホ面を晒した男は私の幼馴染で日下小太郎」


「アホ面は余計だ。初めまして日下小太郎です」


 俺が手を前に出しアンは手を取り握手する


「あぁ。君がヒビキが話していた少年だね。初めましてだ。吾輩はアン・ノーレス。気軽にアンと呼んでくれたまえ。吾輩は彼女とチームを組ませてもらっている」


 少年って…この人いくつなんだ?

 明らかにアンの方が少年に見えるが


「中々、面白い少年のようだ」


 アンはニコニコと笑い

 俺を、いや見えないはずのアルトまでをも見ているようだった。


「アンは凄い人なのよ。二つ名も付いてるんだから。〈否定者〉ってのがね」


 二つ名か。それは確かに凄いな。


 どういう基準で決めているかは知らないが、協会では探索者に二つ名———正式には称号が与えられるシステムがある。


 確か響にも〈新星(ニュービー)〉って二つ名がついてたが、こっちは完全な飾りだな。最年少記録保持者に与えられるやつだ。


「吾輩は大した事はない。ヒビキの方がよほどだ。その歳で上級探索者というのは伊達ではない」


「最年少の記録は塗り替えられそうだけれどね」


「塗り替えられる?そんな有望な新人がいるのか」

 そんな奴がいるって事は響以上の才能、異能の持ち主…

 はっ!もしや俺か?


「神代器って人なんだけど。小太郎は知ってる?」


 神代…あの主人公か。

 確かにアイツなら納得だ。


「知ってるぞ。初めて境界に行った時に一緒に居たからな」


「ならわかるんじゃない?あの人は今、ちょっとした有名人なのよ。明音って女の子と二人でチームを組んでいて、境界で快進撃を続けているそうよ。この前なんか魔物に襲われてる女の子を助けたんですって」


 俺が入院してからたかだか数日しか経ってないはずなのに、もうそんなに目立ってるのか。


 襲われてる場面に遭遇って、ますます主人公だな。

 この先は俺でもよめる。

 どうせその女の子は神代に惚れてチームに入るパターンだ。


 トラブルに巻き込まれるような異能や遺物でも持ってるんじゃないだろうな。


「神代。吾輩も彼を見かけた事はあるが、中々に面白い星の元に生まれた少年だ」


「面白い星って…何か知ってるんですか?」


 さっきからずっと妙に意味深な事を言うし


「小太郎。この人の言う事を間に受けない方がいいわよ。厨二病だから」


「やれやれ。レディは吾輩に辛口だね」


「あぁそう」


 ふざけている様に見えるが、本当に適当な事を言っただけなんだろうか。


「コタロー。彼は随分と不思議だね。目の前に居るのに居ないみたいだ」


 アルトも何かを感じ取ったのか、口を開く。


 アルトもか。いやこいつは厨二病のきらいがある。

 マジで適当に言ってる可能性があるからなぁ


「また、失礼な事を考えていないかい?」


 アルトが何か言いたげに俺を見ていたが

 周りには人もいるしな

 よし、無視しよう。


 そして


『定刻となりました。これより〈幻想の巨塔〉行きの転移門を開門致します。繰り返し————』


 おっ、時間か。


「じゃあ、私たちは先に行くから」


「また会おう。少年」


 響達が先に転移門へ向かっていった。


「俺らも行くか」


「そうだね」

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