表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
68/68

漆黒の狂星1

処刑台に乗せられたエリオスは、ハマーが動く間もなく断罪の刃が振り下ろされ、首が落ちた。


「エリオス!!!!」


その声は、観衆の歓声でかき消された。


数日前まで元気だったエリオスを思い出し、なぜこんなことになったのか混乱した。


そして、スタンピードの防衛にエリオスを連れていけば良かったと後悔した。


そんな時、後ろから声をかけられた。


「ハマー、帰ってきてたのか」


振り向いた所にいたのはジグルだった。


「お前は何をやっていたんだ!エリオスはたった今首を刎ねられたんだぞ!」


ジグルの胸倉を掴んで怒りをぶちまける。ジグルにあたっても仕方がないが、誰かにあたらなければ気持ちが収まらなかった。


「落ち着いてよ。僕だけならこの結末を疑われても納得だけど、マスターがいたんだよ。もっと信用してよ」


ジグルはそう言って、俺を連れて裏路地に入っていく。そこで影転移を使って亜空間へと飛んだ。






数日ぶりに来た亜空間は多くの人が住んでいた。


「よう、ハマー。この世界に避難させてくれてありがとう。それにしても、すごいやつだと思っていたが、まさか王だったなんてな」


俺に気づいたミゲルさんが声をかけてきた。深岩商会の面々で新しく家を作っているようだ。


「無事で何よりです。親方とは会いましたか?」


「親方はやることがあるらしく、まだ来ていないんだ。まあ、そのうち来るだろうからそんなに心配していないさ」


自暴自棄にならなきゃどこにいても生きていられそうな人だしな。


「孤児院の子供達も安全に暮らせるだろうし、商会の奴らもこのラビュリオンの町を発展させようと張り切っているところだ。俺らにできることがあったらなんでも言ってくれ」


そう言って、ミゲルさんは家づくりに戻っていった。


「ラビュリオンってなんだ?」


ひとり言のように呟く。


「ああ、言ってなかったね。亜空間の名前はラビュリオンにしたんだ。あと、カオスすぎるから混沌都市。意外とかっこいいでしょ」


ジグルが答えた。確かにかっこいいがエリオスのことが気になって話が入ってこない。

それにしてもなぜこいつはそんなに余裕があるのだろうか。


そんな中、親方が院長をしている孤児院の子供が世界樹の周りを走り回っているのが見えた。それを追いかける見覚えのある品のいい金髪の男を見て、絶句した。


「‥‥‥‥‥‥くそが。よし、戻るぞ」


「そんなこと言わないでよ。ハマーがこんなに早く帰ってくるとは思わなかったから。処刑の時に帰ってくるなんて本当にタイミングが良かったね」


半笑いのジグルの脳天に、見えない手刀を放つ。しかし、ジグルは余裕を持って躱した。


「甘いね。僕もある程度の経験を積んで、魔力量がものすごく増えてるんだよ。だから、この程度の身体能力の強化はお手の物だよ」


自慢げに語るジグル。確かに強くなっているようだ。


「ほう‥‥‥」


シドの魔力を循環させる。久しぶりの出番だ。なぁシドいっちょやってやっか。


「待って待って待って!」


大慌てで止めてくるジグル。周りを見渡すと全員が何事かとこちらを見ていた。


もちろん、さわやか金髪ヤローも気づいてこちらに走ってきた。


「ハマー、帰ってきてたのか。あれから色々あって。話したいことがたくさんあるんだ」


エリオスの顔を見ると力が抜けて、うな垂れてしまった。


「どうしたんだ?スタンピードへの対応とその後の迷宮攻略が大変だったんだな。部屋で休んだ方がいいぞ」


まっすぐな目で語りかけてくるエリオスに、先ほどまでの怒りが霧散していった。


「なんでもない。何があったか聞かせてくれ。まあ、立ち話はなんだからお茶でも飲みながら聞かせてくれよ」


ぞろぞろとジグルとマスターの家に行く。もしかしたら大人数で集まることもあるかもしれないと、貴族並みの豪邸を建てたマスターは先見の明がある。


リビングに入ると黒いドレスを着た美女が本を読みながら紅茶を飲んでいた。隣には深く黒光りする鱗を持ったベビードラゴンが気持ちよさそうに眠っていた。


こいつらは誰だ?この美女はもしかしてジグルの彼女か?


「ボク、急にお腹痛くなっちゃった。トイレに行ってくるね」


シドが都合の悪い時に使う言い訳第一位を言い放ち、逃げようとした。


「あら、シド様、しばらくぶりですね。ご遠慮なさらずに座ってください」


シドとは知り合いのようだ。


「ハマー様も神獣討伐お疲れ様でした。お茶を淹れますのでお座りください。皆様も」


何故その事を知っているのか。とても嫌な予感がする。


「あなたは、どちら様‥‥‥ですか?」


「この姿でお会いするのは初めてでしたね。私はデイサイド、この姿の時はデイサとお呼びください」


「ギョギョギョーーーーーーーーーーーー!」


驚きのあまり、思わず奇声をあげてしまう。


「まあ、ハマー様、変な叫び声をあげてどうしたのですか?」


まさかこいつは自分の叫び声を覚えてないのか?と疑問に思っていると、ジグルが意味ありげにこっちを見てくる。


なるほど、追求するなってことな。


「ああ、悪い悪い。少しびっくりしたんだ」


びっくりしたのは100%本当だ。嘘は言っていない。


「これから打ち合わせをするが、デイサが気にならないならそのままでいてくれ」


デイサは頷いて紅茶の準備にとりかかる。


そして、この部屋にあるもう一つの違和感が、何かに反応してぴくりと動き、そして目を開けた。


「ぬっ!この魔力は!」


はい、当たり前のように余裕で人の言葉を話している。こいつはどっかの迷宮の神獣か?


ベビードラゴンはシドの方を見て睨みつけた。


「お前は、はか——」


「はい、ストップ。それ以上言ったら分かってるよね、バルゼ」


どうやらシドの知り合いのようだ。多分ろくでもないほうの。


「ぐっ。分かった。お前は‥‥‥壊すのが少し得意な神、シドではないか。今こそ復讐の時!我輩と戦え!」


「嫌だよ。だってキミ、弱いじゃん。記憶がほとんど思い出せないボクでも簡単に思い出せるくらいの弱さだよ」


「なっ!」


「もういいって。バルゼ、外に行って子供たちと遊んできてよ」


ジグルが間に入ってバルゼに指示を出す。


「悪魔王である我輩に子供の世話をしろと?それに、あいつらは容赦なくもみくちゃにしてくるから大変なんだぞ!」


「はいはい、それじゃあ、いってらっしゃい」


ジグルは窓を開けてバルゼを放つ。バルゼが来たことに子供達は大喜びだった。そして、予想通り瞬く間にもみくちゃにされていた。


「なあシド、あいつってそんなに弱いのか?今まで戦ってきたどんな神獣より強い気がしたんだが」


魔力の量も質も圧倒的な気がする。


「ほとんどの神より強いんじゃないかな。でも、相性の問題だよ。バルゼって防御力が高くてほとんどの神の攻撃が通らないってのが強みなんだよ。多分ユイガの技でも傷一つ負わないくらい」


あれで傷一つ負わないなんてインフレ甚だしいな。


「でも、ボクやデイサの攻撃は通っちゃうんだよ。だから楽勝なんだ。ちなみにバルゼにはハマーも余裕で勝てるから安心して」


分かった分かった。シドが一番強いってことね。


「ボクも外に行くね。愛憎の迷宮から手に入れた神機で試したいことがあるし」


「面倒ごとを起こすなよ」


窓から出ようとするシドの後ろ姿に声をかける。


それを聞いたシドは振り向いて俺の顔を見て鼻で笑った。まるでお前じゃあるまいし、とでも言いたげに。


「それで、どうして悪魔王がここにいるんだ?」


ちょうどデイサが人数分の紅茶を持ってきてくれた。意外と美味い。


「色々あってさ、ちょっと前にとある依頼でトラブルがあって悪魔王バルゼファルの封印が解かれたんだよ。運良くデイサがついてきてくれてて、悪魔王を何度も細切れにして、心が折れた時にボクと奴隷契約をしたんだ」


シドといい、デイサといい、脳筋すぎるだろ。いつか取り返しのつかないことになるぞ。


「だからいきなり強くなってたのか。ジグルにはもっと働いてもらわないとな」


二チャーっと擬音がなりそうな笑顔で語りかける。


「お、お手柔らかに頼むよ」


苦笑いをしているが、意外と自信がありそうだ。

おっと情報過多でエリオスのことを忘れてた。


「エリオス、すまんな。色々とカオスになっててな。整理するのに時間がかかっちまった」


エリオスの方を向くと固まって動かなくなっていた。


「神、デイサイド、美女、悪魔王、弱い、奴隷、契約‥‥‥」


ダメだ、本当の情報過多で処理能力が著しく低下しているようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ