11話 やがて揃い出す
誤字報告ありがとうございました!
思春期男子が妄想するクラスで気になるあの子と放課後デート。
それがもし現実で発生し、学年のマドンナが隣に居るとしたらどんな感情が占めるのか。 ……喜び? 興奮? 将又男子高校生らしくエッチな妄想でもしてしまうのか。
俺の中での答えになるが、 正解は恐怖と困惑である。 帰り道の隣にアイドル級に可愛い松原さんが居たとしても周囲に生徒が居ないか目立ってしまわないかと確認してしまって話入ってこないからある意味緊張感漂ってドキドキしてしまう。 そもそも、 一緒に帰るだけで付き合ってないしデートでもない。 問題はモブとマドンナが一緒に帰っている点だ。 早く開放されたい。 最寄り駅まだ?
「山田君話聞いてる? 」
「勿論です」
やっばいニコニコ松原さんからプンスカ松原さんにタイプチェンジしてしまったようだ。 俺はよく見る表情だが、 何時も笑顔で優しい松原さんしか知らない他の奴等がこの姿を見ると結構驚愕する。 今では、 俺のクラスでは「またアイツかよ」等と松原さんの色んな表情を間近で見れる俺に対して嫉妬心を向ける者が多いくらいだ。 目立ちたくないのに……目をつけられた俺のせいだけどな。
「じゃあ私、 今何の話してたかな 」
「……明日の天気? 」
「全っ然違うね!? せめてもう少し違う話題で嘘ついて欲しかったかな! 」
不味ったプンスカ激おこ状態に進化してしまった。 この状態になると、 ポコポコと軽くパンチされてしまうのだ。 可愛い子から軽くでもボディタッチされるだけで死ぬほど喜ぶ思春期男子、 特に陰キャ勢からしたらそれはもう殺意迸る視線が向けられる。 目で殺すとはこの事だったのか。 あれは本当に怖かった。
「折角忍ちゃんと同じ部活に入るんだから、 企画係の為にも頑張ろうよって」
「あー……企画係ですか」
つまり俺の為というより、 クラスの為にもなるから俺と先輩の妹さんが仲良くなれるように努力しろと。 松原さんは既に少しは打ち解けてる様子ではあったけど。 ……陽キャと陰キャ、 太陽と吸血鬼のように相性はあまり良くなさそうだと思っている。
俺が客観的に見ていてもそう感じるのだ。 直に話していた松原さんは尚更それを理解しているだろう。 それでも仲良くなれる為に毎日こまめに連絡を取るみたいだが、 逆効果にならないといいが。 ……よく考えたら、 家族以外からのメールが来るんだから喜びそうだな。 なら問題ないな勝手にどうぞ!
「だから、 山田君も出来るだけ忍ちゃんと連絡取り合ってみようよ」
「無理だろ馬鹿かよ」
「!? 」
「間違えました。 僕、 女子とメール取り合うと緊張しすぎて死んじゃうかもしれないので無理です」
「あ、 そっか。 ……とはならないよ!? 凄い真顔で嘘つくね」
何故バレるし。
よく考えたら、 俺この人と電話したことあったわ。 メールで死ぬなら電話なら昇天しちゃうかもな。 はははウケるー。 (棒読み)
でもやっぱメールとか無理だわー。一応、 俺なりに考えて挨拶くらいはしとくべきだと思って一回だけメール送ったけど。 スマホ出してメール画面見ると返信は返ってきている。 というかメール送って二秒で返信きた。
[よろしくお願いします]
[よろしくお願いします]
……終わり。
「何これ!? こんな質素なやり取り私見たことないよ」
「覗き込まないでくださいよ」
失敬な。 それは陽キャだからであって、 陰キャやそれに近しい者達はこれくらいのやり取りが普通なのだ。 断じて、 コミュ力無くて話題が見つからず放置になってるわけではない。 ちょ、 直接話した方が楽しいもんね仕方ないね! ……後、 そうやって横から覗き込んでくると腕に柔らかいのが当たるんですよね。 ただでさえ距離感近いんだから自分の圧倒的な胸囲力を自覚しなさいよありがとうございました! (感謝って大事)
「……今日から、 私と毎日メールしようね」
――それはやだ。 絶対やだ。
☆☆☆
前の席に変な人が居る。 何処にでも居そうな普通の生徒にしか見えないのに、 何故かクラスの人気者や問題児達と一緒にいる所をよく見かける。 このクラスは松原さんという学年全体、 もしかしたら学校全体でも有名かもしれない程に人気者のアイドルを筆頭に、 個性豊かで注目を集める生徒が多い。
松原さんは私のようなぼっちにも優しくしてくれるし、 良い人だってことは分かるんだけど。 どうしても住む世界が違って見えるから少し苦手。 だから、 私には友達が居ない。 小学校でも中学校でも一人の友達が出来ずにいたし、 趣味も特に無いから姉がやっていたからという理由だけで始めたピアノを毎日意味も無く弾くだけの毎日。 後やることなんて学生らしく勉強ぐらいしかない。 その二つと時々姉と家族と話すだけで私の人生は成り立っている。
これ以外の生活の仕方が分からないから、 高校生になったら友達を作ろうと思って変わる努力をしようと思ったけど、 勇気が出せず地毛に戻す事が出来なかった。 私は姉のようにはなれない。 姉も一人で居ることは多いけどそれは周りが遠慮してしまうほどの優れた容姿と才能があるから。
私に出来て姉に出来ないことはなく、 姉に出来て私に出来ることは多々ある。 だから余計惨めな気分になる。
姉は優しいし私も好きだけど、 こんな妹で申し訳なくて、 妹だと周囲にバレたくなくて髪も染めた。 出来るだけ目立たないように過ごしてきた。
「娯楽部、かぁ」
毎日何も考えずに部屋のピアノを弾く時間。 今日の出来事を振り返っていたせいか普段よりも旋律が合わない気がする。 本当に突然過ぎて驚いた。
まさか、 あんな意味の分からない部活に入部しようと思う人が居るとは。 そもそも何処で聞いて姉の部活を知ったのだろう。 入部する生徒が私と同じクラスで、 人気者の松原さんと前の席の人の二人だというんだから偶然すぎてだいぶ緊張した。 知らない人よりかはマシだけど、 それでも驚くよあれは。
姉から部に入って欲しいと言われ、 入ってあげたいけどあまり関わらないようにしたいという半々の複雑な気持ちから条件を付けて入部することを決めたけど、 こんなことなら最初から断っておけばよかったかも。
別に悪い人達とは思わない。 松原さんは本当に素敵な人だし、 こんな私の事を友達だと呼んでくれる。 苦手な部分はあるけど、 あの人でよかったと思う。 でもメールは程々にしてほしい。 手元のスマホからの通知のほとんどが松原さんからのメールで少し戦慄する。
【山田 政宗】
松原さんと同じく部活に入部した同い年の男の子。 前の席で無口で大人しい印象なのに、 やたらと周りに個性豊かな人達が集まってくる不思議な人。 真面目そうなのに学校入学して三日目の授業ほとんどボイコットしたことから問題児の一人に数えられてる人。 クラスメイトの中には次何時ボイコットするかどうかの賭けをしているらしい。
隣席の西谷君に声をかけられると、 微妙に眉が寄って嫌がってる様子だったり、 男子生徒に大人気の松原さんに話しかけられてもデレデレしないであまり関わらないように話を切り上げようとする所から、 明らかに目立つことを嫌ってるのに珍しい反応をしてしまうことで目立つという矛盾してしまう行動を起こしてる変人という印象。
最初入部すると聞いて姉に好意があってストーカー的な人かと思っちゃったけど明らかに部活やりたく無さそうな雰囲気出してたし、 多分何か理由があって入らざるを得なくなる状況になってたんだろうな。
[よろしくお願いします]
[よろしくお願いします]
挨拶程度の簡単なメールにホッとしたけどなんて返信すればいいか分からなくなって同じこと言って返したけどそれきり返信は無い。 既読は付いてるから本当に挨拶程度のつもりだったんだと分かる。 安心したような少し悲しいような感じ。 男女ならこれくらいの距離感が一番かもしれない。 私相手にグイグイ来る男の子なんていないと思うけど、 来たら来たで凄く怖いから山田君は信用出来そうで安心した。
企画係とか何をするのか分からないし、 私の他が問題児トリオで凄く不安だったけど、 娯楽部を機に少しでも仲良くなれればいいなと思う。 良ければ友達になれるといいな。
――結局、 娯楽部って何するのお姉ちゃん。
☆☆☆☆
「――聖奈から連絡来たわ。 どうやら、 ちゃんと部活として成立しそうね。 愚弟も諦めて入部するみたいよ」
「流石愛子さんですね。 彼の事だから、 何かしら理由つけて逃げると思いましたが」
「あの馬鹿の自業自得とはいえ、状況的にやっぱ無理とは言えなかったのよ。 こちらとしても都合がよかったし、 潔く生贄になればいいのよ」
「フフ、 素直じゃないですね」
「あぁん? 」
あら怖い怖い。 ツンデレお姉ちゃんは大変ね。 本当は自分も同じ部活に入部したいくらいなのでしょうに。 それに、 貴女は認めないのでしょうけれど、 ご友人の為でもあるのよね。 お互いの才能をぶつけ合って高め合い、 友人であり好敵手でもある。 そんな相手が学校から贔屓されていると陰で言われているのを聞いて解決する為に行動した結果、 都合よく良い方に転がったのは流石ね。
鷺宮先輩は孤独じゃ無くなり、 彼には居場所が出来る。
「弟さんにもっと素直になればいいのに」
「普通に接してるんですけど? 」
「私が代わりに彼を甘やかしてもいいかしら」
「――死にたいのか貴様」
あら、 化けの皮を被っちゃった。 そんな暴君の姿で弟に接していれば怖がるのも仕方ないというのに。 本当は甘やかしたくて仕方ないのにいざという時の弟の抑止力で在りたいと言ってこんな風になっちゃって、 可愛い人よね。
「――あの時のことは今も許していない。 私は認めない」
「それを決めるのは貴女ではないのよ。 ……私でもないのだから」
「……ちっ」
張り詰めた空気が雲散する。 この生徒会室に他の人がいたら気絶してたかもしれない程の威圧をするのは流石に辞めて欲しいわ。 ただでさえ今の生徒会は生徒会長含めて山田 愛子に崇拝している者ばかりであまり耐性がないのだから危ない。
「約束は守ってあげたわ。 代わりに貴女には生徒会に所属してもらう」
「守ったと言うの? 私が言わなくてもこうなってたじゃない」
「結果的にはね」
勝ち誇った顔が鼻につく。 私の望んだ通りに物事は運んでいるけれど、 目の前の完璧超人に一杯食わされたのが気に食わない。 いつかは必ず負かしてあげる。
「何時になったら私に勝てるのかしらねぇ? 」
「……二位止まりの癖に」
「貴女も二位止まりでしょうに。 聖奈は特別なのよ、 私唯一の好敵手」
貴女はどうなのと言いたげな挑発をする表情よりも、 入試成績一位を奪い取られた首席の女を思い出す方がムカつくかもしれない。 まさかこの高校の同学年に私以上の点数を取れる者が居るとは思わなかった。
彼と同じクラスメイトというだけでも腹立たしいのに、 何故か話しかけている様子をよく見かける。 彼女は知らないだろうけれど、 私からすれば見せつけられているようにも感じてしまい余計嫉妬心が湧く。
「そもそも、 何故松原 詩音が入部しているのよ」
「知らないわよ。 あの愚弟の周りには変なのばかりが集まるのは今に始まったことではないでしょう。 貴女を含めてね」
そうね、 貴女を筆頭に。
本当なら、 最後の一人に私が入部して感動の再会をするつもりだったのに全て台無しだわ、 あの女狐め。
「……本当に、 何で変な女ばかりに好かれるのかしらあの子」
「私は負けない。 最後に笑うのは私と彼の二人だけ」
何時か、 何時かまた貴方に会いに行くわ。 それまでもう少しの辛抱。 貴方の闇は全部私にぶつければいい。 貴方を救えるのも幸せに出来るのも私だけ。 だから待ってて。 私の、 私だけの――
――スーパーヒーロー。
第一章はここまでです。
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