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カノン  作者: しき
第5.5話
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風音ワングランプリ? 四日目乃伍


 少し話が脱線していたが、主張を続けるアリエイラ。


アリエイラ「ともかく、鞍馬くらま派遣はけん出来ます。つまり風音さんが誘おうと思っていた二人共が、行けると言っている状態です。ならばメリットが大きい方が良いでしょう?」


 ブラウニーがチッチッと口で音を鳴らして、指を振る。


ブラウニー「甘い甘い。天才天才って言われてる割には、カラメルのように甘いんすねアリエイラさんって」


 最近凌舞しのぶに教えてもらって、この挑発の動作を覚えた。

 日本のアニメを見てるとキャラクターがたまに、この指を一本立てて「チッチッ」ってやるのだ。意味が分からなかったから凌舞に聞いて、早速使っている様子。


 挑発されたアリエイラが笑顔のまま、ゆらりとブラウニーの方を向く。


アリエイラ「私に何か言いましたか? 凡人ぼんじんなか


ブラウニー「誰が凡人の真ん中じゃ。どういうくさし方すかそれは」


アリエイラ「あなたが凡人の中でも、ひときわ特徴も能力も価値も無い凡人だという意味です」


ブラウニー「何なんすかこの人。 ・・・まぁいいや、私が言いたかったのは、メリットなら私の方があるって事っすよ」


アリエイラ「ほう?」


 アリエイラが興味深そうな顔をする。


ブラウニー「こっちは撮影の仕事の為に、事前に役作りをして来てるんすよ」


 胸を張って答える。

 それを聞いて、アリエイラが途端とたんに興味を失くす。


アリエイラ「それは仕事にいてのメリットでしょう? カザワンには何のメリットも無いでしょう」


ブラウニー「仕事に行くんすよ? どう考えても仕事にメリットがある方を連れて行くべきっしょ」


 アリエイラがまた一つ大きくめ息。


アリエイラ「はぁ・・・、この視野のせまさ。何とも救いがたい。 風音さん。この何も理解していない子に一言、艦長として言ってやってください」


風音「え? おおむねブラウニーの言う通りだと思うけど」


 むしろブラウニーの発言の、どこにおかしな点があったのか。


アリエイラ「相変わらずブラウニーさんには甘いですね」


風音「そう? 一番まともな事言ってると思うけどな。 ちなみに役作りって、具体的には?」


ブラウニー「今日の撮影って私と艦長が恋人役っしょ? 途中から夫婦役になるんだっけ?」


ルミナ「はぁぁ!!!?」


 ルミナが怒声どせいを上げる。そんなん今初めて聞いた。


ブラウニー「うぉビックリした。この子何なんすかさっきから。 ・・・そんで癒々ゆゆさんに、そういう演技ってどうやればいいんだろって聞いてみたんすよ」


風音「一番演技について聞いちゃ駄目な人に」


 よりによって、演技が超ド下手糞へたくそな人に聞いたのか。


ブラウニー「そしたら事前に役作りをする事が大事だって言ってたんすよ。 「例えば恋人役なら実際にその人の為に、料理を作ってみては? 相手がどう思うかじゃない、自分が成り切るんだ」って言われて」


風音「下手糞がレベルの高い事を言ってる・・・」


 演じるキャラの役割を身に着ける為に実生活で実演、まして恋人役になり切る奴なんて、プロでもなかなか居ない。

 そんなレベルの助言を、素人しろうとに教えるド下手糞。

 これはもう地獄絵図だ。


 そしてブラウニーが持っていたカバンから、ランチボックスを取り出す。


ブラウニー「だから、ほらっ見て。今日は艦長の為に、サンドイッチ作ったんすよ」


 ランチボックスのふたを開けると、形の悪いサンドイッチがたくさん入っている。

 普段料理とかやらない人が、頑張って作りました感のあるやつだ。

 形はともかく、美味しそうではある。


風音「うわ美味しそう。初めてでこれだったら、練習すればブラウニーも料理当番できるかもね」


 という感想を言う風音に対し。


 ブチンッ。

 ルミナの中で何かがブチ切れ、ブラウニーをにらみつける。


ルミナ「あんたこの部屋に盗聴器とうちょうき仕掛けてるでしょっ!!!」


 ここまでブラウニーの行動を疑っていたルミナが、ここでついに爆発した。


ブラウニー「へ? どういう事すか?」


ルミナ「だってそんなわけ無いでしょ!? あなたカノンに来て何年経つのよ!? 今日まで一日も料理を作った事無い奴が、今日に限って手料理を作って来たって!!? 奇跡かっ!! これが偶然だったら奇跡だわ!!」


 これまでの一連の流れがルミナの目には、どれもこれも狡猾こうかつな好感度かせぎにしか映らない。

 そもそも恋人役の撮影に偶然抜擢ばってきとか、ありえないだろと思っていた。

 カザワンのせいで自分ルミナが風音と一緒に仕事に行けないタイミングで、事務員のブラウニーがしゃしゃり出てきているのも不自然だし。

 それだけでも充分怪しかったのに。


 およそ四年間料理を作っている姿を見せた事無い奴が、レスタの機械の効果によって手料理をめてもらえるタイミングで、弁当を作ってくるだって?


 どんな奇跡が起こったらそんな事になる?


 これが全部偶然でしたって?

 冗談。

 そんなの誰が信じる?

 事前に何らかの根回ねまわしが無いと無理でしょ。


 例えばこの部屋に盗聴器を仕掛けてて、全部聞いてたとかよぉ!!


 ・・・という事だが。

 本当に偶然であり、しかもカザワンの事をよく分かっていないブラウニーには、このルミナの一連の発言が理解出来る訳も無く。


ブラウニー「この子は何を怒ってるんすかね・・・」


 もう全然分からん。

 さっきのアリエイラといい、うちのエンジニアは全員ちょっとおかしいのかな。と思い始める。


風音「まぁちょっとルミナの言いたい事も分かるけど。偶然過ぎてなんかヤラセっぽい感じはするよ。みんなの前で作品の効果を見せる為に、えて料理が出来ない人に弁当を作らせたっていう感じ?」


 今のルミナの発言を、大会のヤラセを疑っての発言と受け取る風音。

 これにはアリエイラも納得。


アリエイラ「非常に論理的な意見ですね。むしろそうとしか考えられない。そしてヤラセが事実であれば、これは大幅減点となっても仕方ありません」


 これらの意見に、凄い勢いで首をブンブン振って否定するレスタ。


レスタ「いや、やってませんやってません! これは本当に偶然です! ブラウニーさんは僕からの刺客しかくじゃないです!」


 ここで息吹が挙手する。


アリエイラ「何か?」


息吹「はい。ヤラセだと仮定して、それに何の問題があるのですか? 作品の効果を最も理解したければ、料理が出来ない人に作ってもらうのが妥当だとう。 私にはこの状況が、何ら問題無いのではないかと感じるのですが」


 風音がうなずく。


風音「そう言われれば確かに。むしろヤラセなんかせずに、堂々とやっても良いくらい」


レスタ「やってないって言ってるのに・・・やったていで話が進んでる・・・」


アリエイラ「分かっていませんね息吹。事前に仕込みをするという事が、そもそも自分の作品を信じ切れて・・・」


 アリエイラが息吹の質問に答えようとしたが、その途中でルミナが叫ぶ。


ルミナ「問題大有りでしょ! 普段料理をやらない人に作って貰うってんなら、私だって息吹だって良かったはずでしょ!? むしろその方がカザワン的に公平だし、何より自分の手料理が滅茶苦茶めちゃくちゃ誉めて貰えるのよ!?」


息吹「滅茶苦茶・・・(私の手料理が・・・艦長に誉めて貰える・・・?)」


 理屈で考えすぎた結果見逃していた重要な点に、ハッと気づく。

 そして息吹がブラウニーの方を見る。


ブラウニー「?」


息吹(それをこの女が独占しようとしている・・・?)


 巧妙こうみょう隠蔽いんぺいされていた真実に気付き、怒りに体が震える息吹。


息吹「全てを理解しました。(害の無さそうな顔をしていながらこの女・・・。この女狐めぎつねが・・・! もはや許しがたし!)・・・ターゲット補足ほそく。 その卑劣ひれつの塊である弁当箱、私が貰い受けます」


 手を曲げ腰を落とし、殲滅せんめつの型という構えを取る息吹。


 それが戦闘の型である事に気付いた風音が、注意を入れる。


風音「ちょっと息吹、あんまりこの部屋で暴れたり・・・」


 という言葉は息吹の耳に届かず。


 構えると同時、ブラウニーに向かって突進する。


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