風音ワングランプリ? 二日目乃参
早速作業を開始しようとたルミナをちょっと止める。
風音「え? 今からやる? 夜寝る時で良くない? 一応今日はシャロンの仕事の依頼が入ったら、行かなきゃいけない日なんだけど」
ルミナが不思議そうな表情。
ルミナ「昨日の今日で仕事なんて来るんですか?」
普通なら当然の疑問。シャロンから連日仕事の依頼が入る事なんてまず無い。
基本的に面倒な仕事が多いからだ。ひとつの仕事が終わった後は、休息日がほぼ必ず入る。
風音「昨日のは正規の依頼じゃなかったしね。ウェルズの個人的な依頼だったからさ」
・・・とか言っていたら、早速シャロンからメールが届く。
風音「あ、ほら。 ほんとに来たよ」
早速内容を確認する。
またムービーでのメールだ。そして今一番見たくない奴が映っている。
でも仕方なく再生。
ウェルズ「こちらシャロンのウェルズだ。これを風音君以外の人が見ているなら、伝言しておいてほしい。 昨日はありがとな風音君。残念だけど今日は風音君に見合った謎は無いんだけど、ちょっとシャロンからのお願いがあってね」
風音「早速イジっとるな・・・」
もうここで聞くのをやめてやろうか。
ウェルズ「ちょっとしたシャロンの宣伝動画を作りたいんだ。その配役をカノンの人達に頼めないかな? 内容は大体決まってる。 パトロールしているシャロンの職員が悪者を見つけて、やっつける。 そして合わせて日常風景も。 街の皆の為に正義の活動をしている治安組織の人達も、普段は普通のありふれた日常を送っている。 みたいな感じ。 頼りになる存在でありながら、それでいて親しみやすい。が、コンセプトらしいよ」
風音「そんなん自分達でやればいいのに・・・」
思わず呟いてしまう。
ウェルズ「おっと風音君。今、そんなもんそっちで勝手にやれよって思わなかったか? 実はシエロには、現役の職員はこういうの出ちゃいけないってルールがあってね」
シエロとは彼らが所属する治安組織シャロンの親組織。総元締めのような存在だ。
風音「じゃあOBに頼めば良いんじゃないの?」
また呟く。
ウェルズ「ちなみにOBは恥ずかしいから出たくないって。だって現役感が出ないだろ? OBって事は、みんな年齢も年齢だし」
まるで会話してるのかと思うほど、ピンポイントで答えてくる。
風音「現役職員がPR動画に出演するのが駄目なら、そもそも撮るなって話だよ」
ウェルズ「ちょっと待った風音君。今、現役職員が宣伝動画に出演出来ないなら、そもそもそんなの撮るなって思わなかったか?」
風音(これ動画じゃなくて生なんじゃないだろうな・・・)
あまりにも会話が噛み合い過ぎている。
ウェルズ「その疑問ももっともなんだけど、ほら、大衆って馬鹿だろ? 治安組織の苦労とか役割なんて、口で説明しても理解出来ないに決まってるしさ? 分かりやすいチープな動画でも見せる方が良いんだよ」
風音「お前よくその思想でシャロンの職員やっていけてるな」
ウェルズ「さすが風音君。その通りだよ。大衆なんてそんなもんだ」
風音(・・・? ・・・あぁこいつ、僕が同調したと思ってんのか)
ここで初めて会話が噛み合わなかったので、ちょっと今のウェルズの相槌の意味が分からなかった。
風音が「まぁ大衆なんて馬鹿ばっかりだもんねー」とか言うと予想して、今の返しを用意しておいたのだろう。
失礼な奴だ。
そしてやっぱりこれは事前に収録した映像だったようだ。
実はドッキリで、生で喋ってるんじゃないかと疑い始めていたところだった。
ウェルズ「今日いきなりは無理だろうし、明日以降来月までならいつでもいいから、都合の良さそうな時に連絡をくれ。ああ、ただし断る時は出来る限り早めに、出来れば今日中に言ってくれると助かる。 代わりを探さないといけなくなるからな。 以上だ」
映像メールが終わる。
風音「なんだこの依頼は・・・」
今までにないタイプだ。
現役職員が無理なら無理で、プロの役者にでも頼めばいいのに。
カノンに頼む事か?
いろいろ疑問もあるので考えていると、ルミナから意見が。
ルミナ「シャロンからの正規の依頼みたいですし、借金返済の為にも手伝ってみても良いんじゃないですか?」
風音「そう・・・・だねぇ。でも結構出られる人が限られるしなぁ」
目立つようなものに出たくない奴も居るし、王家を飛び出した王女から、悪い意味での有名人までいろいろいる。
あと純粋に演技がクソな幼馴染連中とかも。
そういうのを除いていくと、カノンのクルー達のほとんどが参加出来そうにない依頼だ。
もっと言えば、ウェルズは誰に頼んでいるのか理解しているのだろうか?
今でこそシャロン内に敵は少なくなったが、ちょっと前まで風音はシャロンの敵側と認知されていた。
今でも音羽風音の名はシャロンのブラックリストに載っている。
そんな奴をPR動画に出していいのか?
・・・・・・・。
風音「まあいいや。明日考えよう」
切り替える。
こんな依頼が今日来たという事は、もう今日はシャロンから他の依頼が来る事は無いと断定出来る。
この今開催されているカザワンってやつ。
おそらく仕事を理由に先延ばしにしても、逃れる事は出来ない。
じゃあもうとっとと終わらせよう。
風音「じゃあ早速ルミナの機械を試してみようか。具体的にどうすればいいのかな?」
ルミナ「昨日とほとんど同じですね。こうやって頭にセッティングして・・・」
帯状の物を頭にグルッと巻かれる。
そしてルミナが機械本体のボタンを押す。
ルミナ「・・・はい、終わりました」
風音「え? もう?」
早速取り外しに掛かっている。
昨日もそうだったが、一瞬で終わる。
ただ昨日と違うのは、機械の内容。
昨日のやつなら一瞬で終わるのも納得だ。自分の脳を一時的に催眠状態にするだけだから。
でも今日のは寝ている間に効果を発揮しないといけないものだ。
本当に一瞬で終わって良いのかどうか尋ねておく。
風音「それって、寝てる間にずっと付けておかないと駄目なんじゃないの?」
ルミナ「普通ならそうだと思います。寝ている間に常に信号を送り続けないと、見たい夢を見るなんて出来ないでしょう。 でも私の中では、もうそんな時代は終わりました。事前に予約しておき、次に寝た時に発動するようになっています」
風音が感心する。
風音「・・・本当なら凄いね。 僕の中では頭に常に信号をどうこうの前に、そもそも見たい夢を見る時代がまだ始まってないのに」
レスタ「実際まだ宇宙中のどこを探しても無いですからね。実験的なものは多少ありますけど、実用化には至ってなかったんじゃないですかね? それを寝ている間に機械も付けずにっていうのは・・・姉さんにこんな事言うのはあれだけど・・・ちょっと信じられないかな」
実の弟ですら疑う。
ルミナがふふっと笑う。
ルミナ「本当かどうかは、実際寝てみて風音さん自身で証明してください」
風音「夢を見る側は具体的に何をすればいいのかな?」
ルミナ「あぁ、その説明がまだでしたね。自分の過去のやり直しを見る場合は、寝る前にどの時をやり直したいか強く考えて寝て下さい。他人の人生を楽しむ時は、見たいジャンルの夢だけ考えていればそれに沿った内容になります」
風音「なるほどね。まずは他人の方からだから・・・どうしようかな・・・」
何でもない日常とかが意外と面白いかもしれない。
ごく普通の今時の高校生男子になって、学校生活をやってみるのも楽しいかも。
風音は中学までは通ってたが、高校は通信制だったので通ってなかったのもあり、少し普通の高校生活というのが気になる。
まぁ取り敢えずそれでいってみようか。




