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カノン  作者: しき
第5.5話
55/206

風音ワングランプリ? 二日目乃壱


 カノン艦長室。


 今日も昨日と同じメンバーが、艦長室に訪ねて来ている。

 アリエイラとその従者じゅうしゃである息吹いぶき。そしてレスタとルミナの姉弟。


 あとこの部屋の主である風音が、仕事机に座っている。


 時刻はルミナの希望で、昼食後の午後一時集合だった。


 昨日からここ宇宙艦カノンで、最も優れたエンジニアは誰なのかを決める大会が開催かいさいされている。

 カザワンこと第一回風音かざねワングランプリ。

 その第二日目という事で、エンジニアの三人の気合もより一層高まっているようだ。


 その三人に向かって、風音が笑顔で言う。


風音「もう止めない? この大会」


レスタ「それは無理ですよ」


 断りにくいように笑顔で言ったけど、中止案はキッパリと断られた。


レスタ「でもどうしたんですか? 何か嫌な事でも?」


風音「嫌な事っていうかさ・・・。あれだ、続けるなら続けるで精神にデバフ(悪性異常)を掛ける系のやつは止めようよ。誰も得しないわ」


 って言うか、やる前から分かってただろう。意図的にポンコツになって良い事なんか絶対無い。


 しかしこの意見に納得いかないのは、昨日自分の作品を発表したアリエイラ。


アリエイラ「はて? な事をおっしゃいますね? 息吹からの報告を聞きましたが、ポンコツになっていたおかげで昨日、シャロンからの依頼を見事解決されたそうじゃないですか」


 確かに結果的に解決はした。

 風音がポンコツになっていたおかげで、殺人事件の捜査中だというのに犬と遊びだし、しかもその時に犯人特定の証拠を見つけたのだ。

 少なくとも同行した息吹の目にはそういう風に映ったし、そういう風に報告している。


風音「肝心かんじんの推理が酷かったんだよ。もう一回関係者全員に謝りたいよ。なんだったんだろう、あの無駄な時間・・・。 もっと言うとさ、あれ証拠が無くても多分犯人は捕まってたと思うし」


 そもそもシャロンからの評価を上げようっていう計画だったはずだが、昨日のアレでは依頼人のウェルズからの評価は散々さんざんだっただろう。

 ずっとウェルズを犯人に仕立て上げようとしてたし。


風音「特に酷かったのは最後に決め台詞ぜりふを放ったところでさぁ・・・。次どんな顔してウェルズに会えばいいんだ・・・」


 朝起きて一番最初に思い出したのがアレだ。

 そりゃ恥ずかしくて顔をおおって倒れるって。今後どうしていいか分からんわ。


息吹「私は格好良いと思いましたよ。「次のりょうりは、どんな味を用意してくれるのかな?」って。謎を料理と表現している所がまた、深いですね」


風音「なんで喋ってただけなのに謎の事を料理って表現した事がバレてるんだよ・・・」


レスタ「りょうりって言ったって事ですか・・・? それは確かにダサ・・・いえ! 前向きな言葉で良いと思います。やとった探偵に事件を解決してもらってからそんな事言われたら、また頼みたくなりますよね」


 必死のフォロー。


アリエイラ「風音さんの深層意識しんそういしきから出たどうしようもないワードセンスなど、この際どうでもよいでしょう。重要なのは結果です。結果をカザワンの最終審査の際に考慮こうりょしてください」


 アリエイラは涼しい顔で風音のクレームを斬って捨てる。


風音「本当に続ける気なんだね・・・」


 説得を諦めた。


 そして満を持してルミナが前に出る。


ルミナ「さぁ遂に来たわ私の番が! はいど~~ん!」


 ルミナが謎の機械を取り出す。


風音(はいど~~んって言うのはカザワンでの決まり事なのかな?)


 確か昨日きのうアリエイラも言っていたような。

 それより機械の内容が気になる。


 また・・・謎の配線が多々見える。すでに嫌な予感しかしない。


風音「それは何? また頭につなぐやつ?」


 ルミナが元気良く答える。


ルミナ「はい繋ぐやつです!」


 風音が無の表情で頭を横に振る。


風音「・・・じゃあ止めよう」


 慌ててルミナが止める。


ルミナ「いえちょっと待って下さい、これはちゃんとしたやつですから」


アリエイラ「ん? 「これは」・・? その言い方、何か釈然しゃくぜんとしませんね・・・」


 アリエイラがに落ちない表情をしている。


風音「ちゃんととか以前に、人の頭に開発したばっかりの機械を繋げるのは止めましょうよ」


 大事な事なので、全員の目を見て言う。

 だってこれ絶対昨日と同じパターンのやつだ。


レスタ「でも明日にひかえてる僕の機械も、頭に繋げるやつですよ?」


 嫌なネタバレを喰らった。


風音「マジか・・・。全員発想が一緒なのか・・・」


レスタ「そりゃそうですよ。今回のテーマが「対象の脳や意識に影響を与える機械」なんですから」


 今更いまさら第一回カザワンのテーマが発表される。


風音「初めて聞いたよそれ。知ってたら開催前に逃げたのに・・・。いや・・・? 今からでも逃げられるか?」


 椅子から立ち上がろうとする風音。


ルミナ「まぁまぁ落ち着いてください。私の機械の内容を発表します。きっと気に入るはずですから」


 両手を前に広げ、なだめて座り直させる。


ルミナ「この機械、その名も「夢でやり直し装置」~~」


風音「夢でやり直す? 何を?」


ルミナ「新たな人生や自分の人生を、です」


 風音が考える仕草しぐさを取る。


ルミナ「人生あの時こうしてたらな~とか、そもそも違う人の人生ってこんな感じかな~とか、一回くらいは考えた事がありませんか? それらを夢の中でリアルに、現実のように自分が自分の意識をもって体験出来る機械です。さぁやって頂きましょう」


 ドンッ! と机の上に機械を置く。

 これも昨日アリエイラがやっていた仕草に似ている。カザワンってもしかして細かいルールしばりが多いのだろうか。

 機械の発表の仕方や見せ方で差を付けない為に、全部同じ行動で統一するとか。

 この子達ならやりそう。


 ・・・それはともかく、目の前に置かれた機械を見る。



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