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自称世界一の魔術師  作者: サバ太郎
3/35

Eクラス

次の日も俺は学園に来ていた。


試験の合否を見るためだ。


掲示板に張り出されている紙に人が群がっていて、その横では喜び抱き合っている人達と泣き崩れている人達がいる。


俺は1241番のグレイで登録している。


人に押し流されながら、何とか掲示板の前までたどり着いた。


上から目を通していく。


そして、真ん中より少し下に俺の名前を見つけた。


ほっと一息ついて確認のため再度掲示板を見ると、俺の一つ下でエルも受かっていた。


入学金を払って、俺は学園を後にした。



メルトキオ学園の入学式は合格発表の次の日に行われる。


遠くから受験に来る人も多くいるので、往復を何度もさせないためである。


入学式が終われば翌日から授業が開始されるのだ。


退屈な入学式が終わった後、クラス発表がある。


一人一人に紙が配られていき、そこには自分のクラスが書いてある。


クラスは成績順にA、B、C、D、E、Fとなっていて上のクラスほど在学中も将来も待遇が良い。


もちろん強い人も多い。


俺は自分に自信がある。誰にも負けないくらい鍛錬もした。魔術に関しては俺が一番だと思っている。


おそらく、A。


悪くてもBくらいはあるはずだ。


期待に胸を膨らまして折りたたんである紙をひらいた。


・・・E。


目を疑った。


何度も紙を見返したがE。


他の人が自分のクラスに向かう中、俺は呆然と立ち尽くしていた。



俺はクラスの一番後ろの席に座っている。


誰も俺の方を向いてこないのは、俺の顔が鬼のようになっているからに違いない。


ただでさえ大柄で怖がられるのに、この怒りの雰囲気全開なら誰も寄って来ないだろう。


先生が入ってきて何やら話しているが、そんなことはどうでもいい。


なぜ俺がこのクラスにいるのか。


大事なのはこれだけだ。


俺が怒りながらこの教室まで歩いているときにCクラスの前を通ったが、そこにはエルがいたのだ。


なんでお前がCで俺がEなんだよ、という視線を送ると、気配を察知したらしくいつの間にかどこかへ行ってしまった。


エルがCなら俺はC以上じゃないとおかしいはずだ。


ずっと納得できないとは思っていたが、もう我慢の限界だった。


先生の話が一段落したところで、俺は先生に抗議した。



「先生、俺がEクラスなのが納得できない!筆記もできているし、実技試験も相手に勝った。俺は相手に勝ったのに、その相手がCクラスで俺がEクラスなのはおかしいだろ!」


突然の大声に、クラス中の人が驚いたように肩を震わせた。


だが、そんなことは関係ない。


俺の抗議を受けた先生、たしかアリア先生だったな、が答えた。



「グレイか。確かにお前は筆記の成績がいい。だが実技がダメだ。この学園は実技に重きを置いている。だから実技の点が一番配点が高い。お前は実技の点が低いから、当然成績も低くなる」


「そんなはずはない!俺はCクラスのやつに勝ったんだ。しかも無傷でだ。明らかに俺の方が強かったはずだ!」


俺が負けじと主張すると、先生は少し冷たい目をした。


「お前は卑怯な手を使わないと勝てないのか」


先生は、何を言っているんだ。


「お前の対戦相手のエルはまだ12歳だ。かたやお前はその体格なんだ。その時点で相手に威圧感を与えるには十分だろう」


「試験なんだぞ。勝敗じゃなく、実力を見るんだ。お前は魔術師なのに剣士の格好をして相手を騙したそうじゃないか」


「卑怯な手を使ってでも勝つ人が欲しいわけじゃない。実力がある、もしくは成長できる人が欲しいんだ。お前が使ったのはただのファイアーボールだけだ。いくら勝てたとしても、いい点は付けれないだろう」


俺は冷水をぶっかけられたように頭が冷めた。


俺のせいなのか。


俺は勝つことしか考えていなかった。


最小限の力で勝てばそれに越したことはない。


だがあれは試験だったのだ。できることを色々見せた方が高得点が得られるってことか。


俺がこうして不満をぶつけるのは、筋違いだっていうのか。


・・・だが卑怯な手って言われたのは見逃せない。


これは俺が今までやってきた俺の努力の結晶だ。


それを卑怯だとは言わせない。


一瞬冷めた頭が、再度熱くなってきた。


  

「くくっ」


俺の隣の席に座っている男が、我慢できないとばかりに笑い始めた。


「なにを笑っている」


俺はその男を睨む。


「わるいわるい。なかなか強そうなやつだと思っていたが、ただの卑怯者だったとはな」


再度、卑怯者という言葉を浴びせられた。


もう我慢できなかった。


「調子に乗るなよ。ぶっ飛ばすぞ!」


俺はその男の胸ぐらを片手で掴んで、持ち上げよう力を込めた。

 

重い!?


人間の男くらいなら持ち上げれるはずだったが、びくともしなかった。


「いてーなあ。何すんだよ」


俺の手を簡単に払うと、ゆっくりとその男が立ち上がった。


そいつは俺よりもさらにでかかった。


獰猛そうな顔に、短く逆立った白い髪、何よりその男には耳と尻尾があった。


獣人。


それは獣のような耳や尻尾、爪、牙、眼などを持つ人型の生物だ。


遠目で見たことはあったが、こんなに近くは初めてだ。


獣人には、それの祖先となる動物がいる。


この男の場合白い髪、丸い耳、白黒の長い尻尾から、おそらく白虎だろう。


向かい合って立っていると、とてつもない威圧感だ。


しかし、その程度で臆するほど俺は弱くない。


「誰が卑怯者だ。文句があるなら俺に勝ってからにしろ!」


そう言い終わるのと同時に、その男から拳が飛んできた。


顔面を狙った拳を俺はとっさに腕で防御するが勢いを殺せず吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。


どんだけ馬鹿力なんだよ。


腕で守ってなかったら意識を持っていかれたかもしれない。


「なんだよ。もう終わりか・・・うおっ!?」


つまらなそうに俺を見ていた虎男の足を魔術で封じる。


『アースハンド』


地面から砂の手をはやして相手の足を掴み動きを封じる魔術だ。


あの馬鹿力ですぐに抜け出すだろうが、少しの時間があれば問題ない。


俺は魔力を練りながら虎男に向かって『ファイアーボール』を数個放った。


案の定、虎男は土の手をすぐに振りほどいた。


そして難なく『ファイアーボール』を回避している。


そろそろか。


俺はその間に練り続けた魔力を消費して魔術を放つ。


俺の真上に岩でできた大きな拳が浮かんでいる。


『メテオナックル』


俺が虎男に向かって拳を突き出すと、それに反応して岩の拳が猛スピードで飛んでいく。


突っ込んでくる土の拳に気付いた虎男が、口角を上げた。


虎男も拳を構えて、正面から受け止めようとしている。


勝負だ。


そう思ったところで、岩の拳は横から来た電撃によってかき消された。


「いい加減にしろ!教室で暴れるな。さっさと座れ!」


アリア先生によって止められたようだ。


俺と虎男は渋々席に戻る。


「入学早々問題を起こすなよ・・。さあ、話を進めるぞ。一人ずつ自己紹介していってくれ。

名前、得意な魔術、その他言いたいことを言ってくれ」



端から順に自己紹介していき、俺の番になった。


「俺はグレイだ。魔術は何でも使える。剣も我流だが使える。俺は決して卑怯者じゃないし、こいつより強い」


そう言って虎男を指さした。


クラスの人たちは俺と虎男の喧嘩を見てから、さらに俺を避けているようだった。


俺の自己紹介を聞いて虎男がまた笑っている。


思えば最初に誰も後ろを見ていなかったのは、こいつのせいでもあるんだろうな。


後ろの席に危険人物が二人もいれば、絡まれないようにするのは当然か。


「ベルクだ。魔術のことはあんまりわかんねえ。見てのとおり獣人だ。実は俺もこいつより強いんだよ」


冗談のように言っているが、クラスメイトは誰も笑っていなかった。


俺を除いて、だが。


俺と虎男改めベルクが視線で喧嘩をしている間に、どうやら自己紹介は終わったようだ。


「今日はここで解散だ。授業は明日から始まるからな。受けたい授業を考えとけよ」


この学園には選択授業というものがあり、魔術や武術など様々なものがある。


自分の進みたい進路に関係ある講義を取ればいいわけだ。


「それとグレイとベルクは後で私のとこまで来い」


そう言ってアリア先生は教室から出ていった。


周りは出身地や、家柄、得意魔術について、いくつかのグループに分かれて話をしている。


同じクラスになったのだから、これは至極当然のことだ。


だが俺とベルクの周りには誰もいない。


さっさと先生の所へ行ってしまおうか。そう思って教室を出ようとすると、ベルクに止められた。


「おい、決着はつけないのか?まあ逃げたいって言うなら止めねえけどな」


顔を見なくても、ベルクがにやにやしてることくらいわかる。


「負けて後悔しても知らないぞ」


俺もベルクと同様に口角を釣り上げた。

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