交流戦
「とゆーわけで俺たちと交流戦に出てくれ」
「嫌よ」
ベルクの誘いをリーゼは一蹴した。
ベルクが自信満々だったから何か策があるのかと思ったが、結果はこれだ。
「Aクラスの女はリーゼのことを敵視してるみたいだぞ」
「知ってるわよ。それ誰から聞いたの」
俺がイザヤの名を出すと、リーゼはうんざりしたような顔をした。
「よりによって・・・。彼に関わると碌な目に合わないわ」
イライラしたのだろう、リーゼは扇子でトントンと机を叩いた。
確かに腹黒そうではあったな。
「ここでAクラス倒しときゃ、もう関わって来ないんじゃねーか?」
「どうかしら。徹底的にやるならそうかもしれないけれど、これをきっかけに関わってきたら面倒ね。特に彼とか」
リーゼは教室の入り口の方を見た。
俺たちもその視線を追うと、そこにはイザヤがいた。
「面倒だなんて失礼じゃないかな。俺は君のためを思ってやっているのに」
近づいてくるイザヤにリーゼは冷ややかな視線を浴びせる。
「どんな考えがあるのか知らないけど、私は関わる気はないわ」
リーゼがそういうとイザヤは何か思いついたように表情を変えた。
「じゃあこうしよう。君達が勝ったら、君に関わらないように俺から言っておくよ。俺が言ったら、王子以外は聞いてくれるかもね」
最大の商会だけあって影響力も相当なのだろう。
リーゼが少し悩んだ隙にイザヤが畳みかけた。
「それに、いくら君でもいつかは巻き込まれるよ。でも俺の対応次第ではそれも変わってくるかもね。学園くらい静かにすごしたいよね」
「・・・わかったわよ。ちゃんと約束は守りなさいよ」
結局リーゼはイザヤの提案を承諾した。
「何か知らんが、リーゼも参加するみたいだな」
本当に何もわからなかったな。
「これで四人か。あと一人だな」
「ちょっと待ちなさい」
リーゼが俺たちが出ていこうとするのを止めた。
「もう一つ条件があるわ」
そう言ってミラの方を見た。
「ミラ、あなた試合で魔術を使って」
その条件にミラは目を見開いた。
「あなたたちは魔障を素敵なものと考えているんでしょう?なら使えるはずよ」
瞬間、この場の温度が下がったように感じた。
リーゼの目は本気だ。
その目で見つめられると、常人ならば耐えられず逃げ出すだろう。
その重圧に耐え、ミラはリーゼを見返した。
「わかりました。使います」
ミラからかつてないほどの強い意思を感じた。
魔障を、そして自分を信じてくれた俺たちの前で、逃げるわけにはいかないといったところか。
その様子を見たリーゼが笑みをこぼした。
「いい顔になったわね。前とは大違いよ」
「・・・彼らが変えてくれたのね」
視線を俺たちに向けた。
「相変わらずね。蜘蛛の魔獣といい、ミラのことといい、退屈させないわね」
俺たちを見る目はどこか楽しそうで、あの冷えた目をしていたのと同一人物だとは信じられないほどだ。
そりゃあどうも、とベルクが適当に答えた。
「交流戦も楽しみにしているわ」
そうして俺たちは教室を出た。
教室を出たところでイザヤが何かつぶやくのが聞こえた。
「・・・リーゼ。俺は君が・・・」
教室でミラと別れた後、俺とベルクは五人目について考えていた。
「俺が戦うとこ見たいのは、シオンかカレンだ」
ベルクもそれに同意する。
問題はこれを相手が受けてくれるかどうかだがな。
「とりあえずカレンから声かけてみるか」
ちょうど廊下にカレンが居たので、声をかけた。
「Aクラスね。いいわよ」
カレンはあっさりと言った。
「いいのか?言っといてなんだが、断ると思っていた」
そういうと、カレンは心外だ、といった感じで眉をひそめた。
「私だって勝負には自信あるのよ。最近あんたたちの活躍で持ち切りだからね。私も頑張らないと」
カレンはぐっと握りこぶしを作った。
それにしても、皆態度が全然違うな。
これも討伐訓練で有名になったせいか。
貴族だ、王族だで変わってしまってはいるが、一応実力主義な世界だからな。当然と言えば当然だが。
「じゃあカレン、交流戦は頼んだぞ」
しかし、カレンのこの違和感は何なんだ。
まあ試合見てればわかるだろう。
俺たちは交流戦のため修練場に来ている。
このAクラスメンバー対寄せ集めメンバーの対戦は先生の計らいにより、授業の時間に行われることとなった。
そのため、修練場の二回には俺たち以外の一年全生徒がこの試合を見学しているのだ。
確かに試合を見るだけでも勉強になるし、モチベーションをあげるにも最適だ。
「まさかこんな見世物にされるなんてね」
リーゼは不機嫌そうにそう言った。
リーゼは何やら目立つのを嫌っているようだったし、不機嫌なのも仕方ない。
「いいじゃねーか。逆に燃えてくるぜ」
ベルクはそう言ってギラギラと相手チームを見ている。
「順番はどうする。希望があれば言ってくれ」
俺たちは勧誘のとき以来会っていないのだ。
そもそも仲が良いわけではないし、順番にこだわりもないからな。
「私が最初に行くわ。早く終わらせたいから」
リーゼがそう言った。
「じゃあ二番は私ね。後に行くほど相手が強そうだし」
カレンがそれに続く。
結局、順番はリーゼ、カレン、ミラ、ベルク、俺となった。
ベルク曰く、蜘蛛を倒したから大将は譲ってやるだそうだ。
そうして、交流戦が始まった。
「まさかあんたが一番に来るとはね」
そう言っているのは、ピンクのツインテールの少女である。
「メリア、久しぶりね」
メリアと呼ばれた少女は杖を持っていて、魔術師であることがわかる。
ミラに聞くと、魔術に秀でた貴族の娘のようで、メリアも魔術が得意らしい。
メリアの持っている杖はいかにも上等で、おそらく術者が魔力を練りやすいようになっているのだろう。
貴族なら装備が高級なのは当たり前か。
そういう俺の剣も魔力をよく通す高級品だ。
家から持ち出したので、買ったわけではないが。
「あんたがいたら迷惑なのよね。アルフレッド様のためにも、ここで退場して頂戴」
アルフレッドというのが王子だろう。
それにしても相手のパーティーはアルフレッド以外皆女性だ。
Aクラスには他にも騎士団長の息子や、イザヤなどがいるはずなんだがな。
俺にはとても彼女たちの実力がAクラストップだとは思えない。
「両者試合の準備をしてください」
メリアとリーゼは定位置に移動する。
修練場はとても広い長方形の形をしているが、今回はその十分の一程度の範囲で試合をする。
広すぎると、明らかに魔術師が有利となるからだ。
移動し終わり、両者が構えを取ったところで、試合開始の合図がなった。




