第七話 演目 幸せを叶える神の試練
縁は今海渡の代理である、それはつまりは誰もが知っている上位の神と同等という事。
そんな縁に舐めた口調で煽ればどうなるか、そんなのは誰にでも想像出来る。
なら何故縁を煽った神はその行動をしたのか、一言で説明出来る、色々と足りなかったのだ。
「だが良かったな? 俺は幸せを叶える神だ、お前達の願いを叶えてやろ」
縁は胸ぐらを掴んでいるのを離してやった、そして周りの若い神々を見た。
「ほう、ほとんどの者が戦争を望むか」
「えぇ……縁君、質問なんだけどさ」
「どうした?」
「神様の国にも娯楽はあるの?」
「ああもちろん、人の国とたいして変わらないと思ってくれていい」
「悪い意味でゲームの……いや、創作物の見すぎ?」
普通に考えれば創作物をして悪い意味で自己投影はしないだろう、神も人も関係ない、ただ目の前に居るのは世間知らずなだけだが、人知を超えた力があるのは事実だ。
その力を使いたくなったのかは縁達にはわからないが、少なくともゲーム感覚で戦争はするべきではない、それを知らぬ彼等は後先を考えないのだろう。
「だな、戦う事しか頭にない……いやゲーム感覚だ、昔の俺よりたちが悪い」
「創作物の中だけにしてほしいよね」
「ああ、俺も人間と殺し合いしはしたが……少なくとも遊び感覚は無かったな」
「だよね、ああ、つまりは殺し合いのゲームがしたいんじゃない?」
「なるほどね……ゲームか」
縁は品定めするように敵対する目の前の若い神々を見た、その瞳には幸せの為に願いを叶えるという意思を示していた。
「どうするの縁君」
「簡単だ、こいつらの願いを叶えてやる」
「お、戦争する?」
「ごっこだな、コイツらを英雄になるチャンスをやろう」
「具体的にどうするの?」
「大義名分があればいいだろ? 俺が知犬に攻め込むのがいいだろう」
「あら、過激ね縁君」
「いや? こいつらの幸せを叶えるだけだ、戦争がしたいらしいからな、軽い気持ちで」
「んじゃ、海渡様に相談しにいこうか」
「ああ」
縁達はその場を去ろうとすると……
「ま、待て! 本当に戦争をするつもりなのか!?」
「お前達の望みだろ? 何をひよっているんだ?」
「ああ、縁君を舐め腐ってたからでしょ?」
「人間なら手心もあるが……神相手にはいらないな? 復活できるし」
「てか基本的に神様は死なないんだよね?」
「ああ、細かいから詳細は省くが」
「なら思いっきり殺し合いが出来るじゃん、まさにゲーム」
「そうだ、容赦しなくていいのはありがたい」
その場の若い神々は何かをわめいていたが遅い、縁は幸せを叶える神、そこに善悪の概念は無いのだ。
縁達は海渡の執務室へと戻ってきた、海渡は自分机に座っていた、いつも以上に険しい表情をしている。
一見ただのおばあちゃんの兎で、人型ではなく獣型の神様である、だが威圧感を出していたのだった。
「で、どうだった縁」
「虎側に居たのは話は通じましたね、年齢がそれなりの神が多かったですね」
「ふむ、龍側は?」
「ゲーム感覚で戦争したい様な若い奴らでしたね」
「ほほう……兎も舐め腐られるとはな」
海渡はあからさまに怒りを表に出す、そしてよく考えれば確かにそうだという事を口にしたのだ。
「昔のになるが……か弱い兎が何故兎が4番目なのか、考えればその脅威がわかるはず」
「あ、言われてみればそうかも、神話だからと深く考えなかったけど、海渡様どうして?」
「ん? 簡単な事よ、武力でのし上がったからだ、ま、初代の話だがね……あ、もちろん力だけじゃないがね」
海渡はニヤリとした表情でそういった、いくら神話や神といえども虎と龍の間の順位、何かあると考えるのが普通にだろう。
「あ~……考えたらそうか、虎と龍に挟まる兎って普通に考えたら異常だよね、神様なのはわかるけどさ」
「うむ、子供向けの神話というか、一般向けにはかなりマイルドになっとるがの」
「なるほどね~」
「ま、昔の話でマウントとっても仕方ない、今の話をしようか」
海渡はいつも通りの優しくおばあちゃんの雰囲気で一言縁に命令した。
「縁、ワシが命じる、ワシ代わりに知犬を滅ぼせ」
「海渡様、和解はしないんですか?」
「ああ言葉足らずだったな、聞く耳を持ちぬ者を滅ぼせ」
「わかりました」
「後は現場判断に任せる」
「わかりました」
「大役だね縁君」
「ああ」
「さてと、ワシはこれから用事がある、縁、ワシの仕事の代わりをしといてくれ」
「……仕事とは?」
「事務仕事じゃよ」
海渡様は短い手でぺしぺしと書類の山を軽く叩いた、つまりはハンコ押しの代役の仕事だ、とは言えとても重要な仕事である。
「わかりました」
「では任せたぞ」
それだけ言うと海渡はその場から消えて縁が椅子に座る、そしてハンコを押す作業を始めるのだった。




