第2幕①「崩壊~こわれ~」
連続投稿です!
駄作ながら、よろしくお願いします!
人生には必ず「転機」が存在する。
「転機」とは、今までの生活を底辺からひっくり返す勢いで
人生が変わることをいう。
如何なる者もこれには逆らえず、成すがままになってしまう。
しかし、「転機」はあくまで「転機」。
「転機」には逆らえずとも
「運命」には立ち向かえるのだ。
第2幕①「崩壊~こわれ~」
神太たちは自分たちが通う中学校についた。
中学校の名前は「鳴葉学院 中等部」。創設90年も経つ名門校だ。主に秀でた学歴や運動はないものの、人間性に富み、バランスのとれたカリキュラムによってバランスの良い人材を育成することで「社会に貢献できる“真の社会人”」を目指している。
「試験受けに来たときにも思ったけどさ…大きいね、学校自体。」
しかも、中等部というように、ここは小中高一貫校。それなりに建物の大きさがなければならないため、大きいのだ。8階建ての一番大きい校舎の「メイン棟」、文系の部活専用の4階建て校舎「部活棟」、さらには体育館も相当大きい。パンフレットに書いてあった収容人数は約3万人。大きすぎるくらいだ。ちなみに昨年度の全校生徒はざっと1万人超えというマンモス校となったらしい。
と、神太が驚いている傍らで…
「そうかぁ?あまり大したことねぇじゃんか。」
「うん、そうだよね。まだ私の家のほうが大きいよね。」
「うんお前たちに呟いた僕が間違ってたよ富豪たちだから少しそこらへんでいちゃついてらっしゃい腹が立つから。」
海斗と雀芽は驚きすらせず平然としていた。
何を隠そうこの二人、実はそれぞれ「空野コーポレーション」と「波響財閥」の御曹司であって、「空野コーポレーション」は電化製品、「波響財閥」はエンターテイメントで絶大な影響力をもっている。ぶっちゃけて言うと、ものすごいお坊ちゃまとお嬢様なのだ。
結果的に、この3人の中で神太が一番庶民的なわけである。
「まあまあ、そう拗ねんなって。」
「そ…そうだよ神太!神太のおかげで私達何度助けられたか…。」
では何でそんなお坊ちゃま達と友好関係を築いていられるかというと、製品開発の際に意見を聞いたり、開発の手助けをしたり…金持ちの日常茶飯事ともいえる誘拐事件で何度も助けてもらったり、いわば近しい友人にして一番身近なボディーガードだからだ。
神太は、毎日鍛えているため強いのだ。格闘術に関しては一度接近してしまえば相手はたちまち嬲られ続けてしまう。そんな下心のない神太だからこそこんなにも親しくできているのである。
「そこでその話を振るのはおかしいよ雀芽。それに…友達を助けるのに理由もお礼もいらないんだって…。あ、そうそうこの前の謝礼はお前たちの口座に全額返金したからね。」
「な…!またかお前!いい加減受け取りやがれ!」
「何で受け取ってくれないかな…?神太…。」
校内を歩きながら海斗と雀芽は頭を抱える。
神太は結構頑固者で誘拐されて助けてもらった時も、手助けしてもらった時も「友達を救うのに損得なんて考えない」と言ってなかなか謝礼を受け取らないのだ。これだけのために銀行と提携を結んで神太の口座を見つけ、そこにこっそり謝礼を入れたにもかかわらず翌日にはきっちり全額返還されている。ある意味すごい。
「何でって…別にお礼を戴くほどのことはしたつもりないし、こんな僕のために大切なお金を使うなら、世のため人のために使わないと意味ないんだよ。」
そして…神太の中で一番厄介なものが「自分を顧みない」ことだ。
神太には若干ながら自己犠牲の気がある。誘拐で助けた時、相手は当然武器を用いるが、神太は素手。だから怪我をするのは必然なのだが、心配をかけたくないのか隠そうとするのだ。
「俺はな、神太。お前になら財閥の半分くらいの金を差し出してもいいって思ってるんだぜ?お前にはそれくらいの恩義がある。」
「神太にはお世話になりっぱなしだから…何かお礼をさせてよぉ…。」
「気が向いたら…ね?」
本当に良い友と巡り合ったと、毎日海斗と雀芽は思う。
ここで空気を読んだのか読んでないのか分からない予鈴が校舎全体に響き渡る。
「さて、海斗と雀芽は入学式から先生に怒られたいかい?」
「「いやだ。」」
「そっか…なら、教室まで競争だよ!走れ~~!」
「おっしゃあ!青春だぜ~!」
「負けな~い!」
神太と海斗、雀芽はメイン棟に向かって勢いよく走りだした。漫画などで見かける青春の1ページ…。
しかし、神太の人生の「転機」は…
(グヘヘ…雀芽ちゃん可愛いよ♪もうすぐ…僕のモノに…。)
刻一刻と、近づいていた…。
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入学式というものはどの学校も似たようなもので、校長の長い話が、もはや学校の風物詩と言わんばかりの存在感を醸し出していた。
『皆さんは、これからの世代を担う社会人として、学び、時には遊び、
友達と一喜一憂してこれからを過ごすでしょう。
今の私たちは“神より授かった力”、授天力を得た者…授天人よって“魔物”からの脅威から逃れています。その者たちが安心して過ごせる世の中作りこそ、神々が我々に授けてくれた天命にして使命なのです。
これからの学校生活が、生徒全員の実りにならんことを祈って、挨拶とします。』
(……そんなものに頼っているうちは…この世は駄目なんだ。)
神太は心の中で呟いていた。神太にとって“頼る”ような言動はただの“甘え”のようにしか聞こえていない。神太は自然と、拳を硬く握りしめていた
(そんなものに頼らなくても…人間どうにかしようと思えばできるはずだよ…。)
時がたち、入学式は終わり、学生たちが帰路につく中、海斗と雀芽は…
「ンっ……ちゅ……海斗。」
「ん…はっ…どうした雀芽、どうかしたのか?」
中等部の屋上で熱く口づけを交わしていた。顔を離した二人の間には、互いの唾液が混ざり合って銀色の糸のようにつながっている。
海斗と雀芽、実は結構することはしてしまっているのだ。最近の中学生は進んでいるらしい。
海斗が頭に「?」マークを浮かべている。というのも、雀芽が異常に周りを気にしているからだ。ここは鳴葉学院の屋上、8階の上にいる。周りに障害物なんてないため、誰かがいれば気づくはずである。
「…ねぇ、何か視線を感じるんだけど…。」
「ん?今日はまだお前を舐めまわすように見ては「違うわよ!」じゃあ…何だ?」
二人がふざけていると、不意に入口のほうから足音が聞こえて来た。だんだんと屋上に近付いているようだ。ただそれだけ。しかし、足音が近付いてくる度に、二人の背中には悪寒と冷や汗が襲ってくる。明らかにおかしい。
「…雀芽、俺の後ろに隠れておけ。神太じゃねえけど…守ってやるから。」
「海斗…。無茶しないでね…?」
海斗は雀芽を守るように背中のほうにやり、雀芽は海斗の背中にしがみついている。
足音は……止んでいた。
刹那、入口の扉が吹き飛ばされたと同時に、幾本もの触手が、海斗と雀芽に襲い掛かっていった……。
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「全く…海斗も雀芽もいつまでいちゃついてんのかな?」
神太は腕を組みながら、いかにも「怒っています」という感情を誇示しながら教室の自分の席に座っていた。あのカップルが、いちゃつき始めると止まらなくなることを知っていてなおも待ってあげている神太の心は、寛大すぎるのだろう。
「…相変わらず、損な役回りのような気がするけど…気のせい?」
教室の天井を見やる。最近、改修工事をしたばかりだと聞いたから、見た目は真新しいがどこか歴史を感じさせる。歴史の重みというか、何とも言い難い感覚を覚える。
「……!な…何だ?この…殺気…なんだか禍々しい何かを感じる。」
どこからともなく、天井から殺伐とした殺気のような何かを感じた。長年、金持ちの友人のボディーガード紛いなことをしているだけあって、そういう空気に敏感なのだ。
「ここは学校の6階…上の残りは上級生棟で、今日は誰もいないはず…。何なんだ?」
7階、8階は上級生のいる階で、今日、上級生は学校が休みなのだ。誰もいない場所から殺気が溢れるなんて、どこかの厨二病がかった漫画ではあるまいし、有り得ない。
だとすると、答えは自ずと一つしかない。
神太は勢いよく教室のドアを蹴倒し、全速力で階段を駆け上がる。しかし、8階に辿り着いたとき、不意に有り得ない光景が目に入ってきた。
男性教諭が気を失っているのか、何人も倒れ伏し…
女性教諭は、見るに堪えないくらいに衣服を引き裂かれ、横たわっていたのだ。
「な…何だよ…、これ…。」
教室や壁には、明らかに何か大きなものが這って回った痕跡が残っていた。
明らかにおかしい。大きくて這って回るような生物はこの世界にはいないはずである。
神太は、この有り得ない現状に身震いすら覚える。
ふと…廊下で、気を取り戻したのか、女性教諭の姿が見えた。神太はブレザーを脱ぎながら教諭に駆け寄っていく。
「先生!大丈夫ですか!」
「ひっ!…って、ここの生徒…あなた、新入生ね?」
「と…とりあえず先生、これ、着てください。目のやり場が…」
教諭は気が付いたのか、腕の残像が残るくらいの速さで、神太からブレザーを奪い取った。
…その前に教諭の艶姿を見てしまったことは内緒…
「…見た?」
「い…いえ!誰も先生の胸とか見てませ「見てたじゃない!」痛っ!」
…には出来なかったみたいだ。男ってつらいよ。
「いてて…せ、先生、ここで何があったんですか?僕には何が何だか…」
教諭はその話に入った瞬間、顔が青ざめ、体ががちがちと音を立てそうなくらいに震えだした。
震えた口から、たどたどしく語りだした。
「…変な…太った親父から……触手が生えてきたと思ったら…急に襲われて…」
かなり幻想的すぎて、いつもなら信用できない言葉だが、現状が現状だけに信じるしか他なかった。
それと同時に、焦りと、不安が込み上げる。8階でこのようなことが起きたのだ。おそらく…
「(海斗と…雀芽が……ヤバい!早くいかないと!)先生、ここのこと、頼みましたよ!」
「ちょっ…ちょっと!あなた、何処に…」
最後まで聞いてなんていられない。勢いよく階段に足をかけ、屋上まで駆け上がった。
その勢い任せに、屋上に通ずる鉄製の扉を蹴り飛ばしてこじ開けた。そこには…
「グヘヘ…、やっぱり雀芽ちゃんは着やせしてたんだね♪可愛い体してるね♪」
「いやああぁぁぁぁあぁぁぁ!海斗おおぉぉぉぉぉおぉおぉお!」
幾本もの触手を背中から生やした中年の男と、触手に絡め捕られ、見るも無惨に服を引き裂かれて、半裸となり泣き叫ぶ雀芽、それから…
「があぁ…。ああぁぁ…。」
四肢を触手に縛られ、首を締め上げられて苦しむ、“海斗”の姿があった。
神太は、自身でもはっきり分かった。
これが“キレる”ということなんだと…。




