表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/61

【番外編】三話 青年の焦り

 数日後のことだった。

 いつも通り王都を隠れて満喫していた私は、クラウゼン侯爵とシャーリンが二人でいるところを見てしまったのである。

 わかっていても、やはり胸が痛んだ。しかし、今はまだ、静かに見守っていよう。そう思いながら彼女を遠くから見ていた。


 そんな時だった。一度目の人生で私に石を投げつけた酔っ払いの男が、シャーリンを連れて行こうとしたのである。

 私は我慢ができなくなって、ついその男を捻りつぶしてしまった。

 シャーリンに姿を見せる気などなかったのに。


 直後、警備隊が駆けつけてきたのをいいことに、私は急いでその場を去った。

 間近で見たシャーリンは美しく、勇敢で、更に素敵な女性へと進化していた。思い出すだけで、顔が熱くなる。







 心が落ち着かない私は、祈りながら王立図書館へ向かった。

 するとそこには、すこし分厚く膨らんだままの本が置いてあった。開くと、そこには綺麗に折りたたまれたハンカチが挟まれている。


 あぁ、読まれなかったのかと残念に思いながら一応ハンカチを開くと、中から私が入れたものとは違う四つ折りのメモがひらりと落ちた。


 心臓がドクン、と大きく跳ねる。


 私は震える手で、メモを開いた。中にはこう書いてあった。


【アレク様へ


シャーリンです。お返事をしてくださって、ありがとうございます。

私はあなたの正体は聞きません。きっとあなたには、私に正体を明かせないほど尊いお方なのでしょう。


ですが、もしできるなら、あなたにお会いしたいのです。そして、お礼が言いたいと思います。

時を巻き戻してくださって、どうもありがとうございますと、どうか直接言わせてください。


そして、一度目の人生で……私が亡くなった後、私の死の真相を暴いてくださったこと、嬉しく思います。私なんて、誰にも気にされていないのだと……そう思っていましたから。


あなたの本のおかげで、私は夫の愛人の名前を知ることができました。そして、二人の計画についても……。

あとは自分の力で、どうにかかんばってみようと思います。


お返事、お待ちしております。


追伸.もう怪我は治りましたので、ハンカチはお返しいたします。このハンカチは前の人生で私があなたに渡したものですから、あなたが持っていてくださるとうれしいです。お心遣いいただきありがとうございます】



 ____私は歓喜した。


 やはり、シャーリンだったのだ。それにしても、なんて美しい字なのだろうか。

 シャーリンは心だけではなく、文字まで美しい。世紀の大発見であった。


 それに、配慮ができるところも、お礼を忘れない精神も、やはり好きだと思った。


「怪我が治ったようで、何よりだ……」


 それにしても、あの血文字はやはりシャーリンが自分で書いたものなのか。

 意外とアグレッシブなところもあるのだなと、少し驚いた。


 だが、そんなところさえも愛しく映った。

 そうして私はシャーリンからの返事を大切にポケットに仕舞いながら、再び返事をしたためたのだった。


【シャーリンへ


丁寧な返事を、どうもありがとう。私は、あなたのそんな思慮深く優しいところが好きです。


先日、王都で男に絡まれたと風の噂で聞きました。怪我はありませんでしたか?

子供を守って勇敢に立ち向かう、そんなあなたに恋焦がれています。


そしてシャーリン、私はあなたに謝らなければならないことがあります。

それは、今はまだあなたに会うことはできないということです。その理由は、きっとこの封筒を見たあなたなら察してくださることでしょう。


でも、約束します。

あなたが全てから解き放たれて、自由の身になった時。私は必ずあなたを迎えに行く。

だから、その時まで……どうか待っていてくれませんか。


いつでもあなたを想っています。

忘れないで。私はいつでも、あなたの味方です。

そしてそれは、私だけじゃないはずですよ。


アレク】



 あくまで「フードの男」が私だとバレてしまわないよう、先日噂を聞いたことにして誤魔化した。

 でも、あわよくば気付いてほしい。そんな期待が確かにあったことは、否定ができない。


 私は板挟みになりながら、この日も図書館を後にして、宮殿に戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ