四十八話 おかえり
「奥様、奥様! 到着いたしましたよ!」
「んぅ……おはよう、サラ……」
「……奥様って、結構寝起き悪いですよね」
サラに身体をがくがくと揺らされて、目が覚めた。
馬車の窓から朝日が差し込んでいる。
そして、ゆっくりと馬車を降りたそこには……見慣れたエルフィナード伯爵邸の姿があった。
あぁ、私、帰ってきたんだわ……。
門番が私の顔を見て飛び跳ねた。
すぐに開門してくれて、伯爵邸の庭園に足を踏み入れる。
見慣れた花畑、小さな噴水、白くてきれいなベンチ……。
全てが懐かしく、私を抱きしめてくれているようだった。
扉を守っている兵士が、またもや私の姿を見て驚きながら急いで扉を開ける。
私はサラとアントニーに軽く目配せしてから、伯爵邸のロビーへ入った。
「……ただいま」
ぽつりと呟いた声が、ロビーに反響する。早朝すぎて、まだ誰も起きていないのかしら。
……かと思えば、少ししてバタバタという忙しない足音が聞こえてきた。
「シャーリン……!? あぁ、シャーリンなのね!!」
「……お母様……」
久しぶりに見る、母の顔だ。
「あなた! シャーリンが!! シャーリンが帰ってきてくれたわ!!!」
母が叫ぶ。すると、すぐに父も早足で廊下から現れた。二人して、転びそうなくらい一生懸命に階段を下ってくる。
「シャーリン、こんな時間にどうしたの? 侯爵様と喧嘩でもした? シャーリン? ……あらやだ、どうして泣いてるの?」
「っ……泣いて、ないわ……」
「私たちは何を言われても、シャーリンの味方だ。だから、なにがあったのか話してみなさい」
母が私の涙を拭う。父が優しく私の頭を撫でる。
私はたまらず、二人に抱き着いた。
「うっ……わ、私、ずっと……つらかった、つらかったの……!!!」
ロビーに私の泣き声がこだまする。二十歳にもなって、こんなの情けないと思うけれど。
でも、二人は何も言わず、ただ私のことをしっかりと抱きしめ返してくれた。
そのことが、私は嬉しくてたまらなかった。
____私、今度こそちゃんと帰ってこれたんだわ。




