三十七話 諦めて
クラウゼン侯爵夫人、そしてヴァイス公爵夫妻の活躍により逮捕されたメルローズ男爵は、横領・人身売買の罪を問われ、その全てを白状した。
そしてその一か月後、メルローズ男爵の処刑が静かに執り行われ、行方不明になっていた人々は無事家族のもとへ帰ることができたのだという。
多くの人はそのことが記載された新聞記事を読んで喜んだが、街のパン屋に一人、このニュースを信じられない気持ちで読んでいる少女がいた。
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「メルローズ男爵が……処刑された、ですって……!?」
一体、どういうことかわからない。だって今頃は、メルローズ男爵と私が接触しているはずだった。そして私たちはとある『契約』を行って、私はメルローズ男爵の娘、キャロライン・メルローズとなり、再び貴族社会に戻ってくるはずだったのに……。
なのに、なんで……なんでよりにもよって、ヴィクトルと結婚したあの氷女がメルローズ男爵の人身売買に気付いたわけ!?
これじゃあ、私とヴィクトルの計画が台無しじゃない……!
____いえ、きっとヴィクトルのことよ、これは何かの囮で、きっとなにか別の案が用意されているはずだわ。
なんだ、心配して損しちゃった! それもそうよね、だって、ヴィクトルは私に夢中なはずだもの。
私のこの『力』がある限り、ヴィクトルは私から逃げられないのよ。
____コンコン。
ほら、噂をすればなんとやら、ヴィクトルが来てくれた!
私は元気よく扉を開けて、ヴィクトルに挨拶をする。
「ヴィクトル、来てくれてうれしいわ!」
「……キャロライン、今日は君に、大事な話があってきたんだ」
「わかってるわ! さぁ、中に入って頂戴?」
ヴィクトルは無表情のまま、静かに私の部屋に入った。けれど、椅子に座るでもベッドに横になるわけでもなく、ただ扉の前で立っているだけだ。
なんのつもりかしらと思っていると、ヴィクトルが静かに口を開いた。
「キャロライン、メルローズ男爵が処刑されたのは知っているか?」
「えぇ、さっき新聞を読んだわ。本当に最悪なニュースよね! しかもよりによって、あの『氷の令嬢』のせいだなんて……一体、どこまで私たちの邪魔をするつもりなのかしら!」
私が愚痴を溢すと、ヴィクトルは険しい顔つきになって、私の顔を見た。
「そのことなんだが……メルローズ男爵が処刑された今、キャロラインが貴族の養子になれる伝手はない。だから申し訳ないが……このことは、もう諦めてくれ」
「……………………は?」




