二十一話 違和感
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シャーリンは、あんな女だっただろうか?
求婚する前、シャーリンは一切笑わない『氷の令嬢』として有名だった。実際に求婚した時も、眉一つ動かさずに冷たい声で返事をしていた。
なにより、瞳。氷という異名に相応しい、凍るような人々で周りの人間を見下すような瞳をしていたはずだ。
だから求婚した。もちろん、人脈があるエルフィナード伯爵に近づくためでもあったが……一番の理由は、私がそんなシャーリンのことを蔑んでいたからだ。
だが、結婚式が始まる前と終わった後____シャーリンは、まるで別人のようになった。
馬車に乗り込む前、沿道の人々に笑いかけた。
披露宴で沢山の人々を相手に笑顔を振りまき、更に会話相手の事業まで把握して話題を提供していた。
そして、初夜では……まるで普通の女のように、私が抱かないことを嘆き悲しんでいた。
あの女は、本当にシャーリンなのか?
わからない、シャーリンのことが。私と結婚したことで、なにか変わったとでもいうのか?
……あぁ、こんな時、キャロラインに会いたくなる。キャロラインは素直で可愛く、愛らしい。幼い頃からそうだった。キャロラインの瞳を見ていると、考え事や悩みもどうでもよく感じてくるのだ。
彼女の赤い瞳には、そんな魅力があった。
早くキャロラインを男爵の養子にして、キャロラインと結婚したい。シャーリンは、あくまでもキャロラインと結婚するための手段だ。
それに、笑ったシャーリンは想像以上に美しい。元々整った顔立ちをしている美女だが、それこそキャロラインに負けないくらいの……。あの笑顔があれば、男爵相手をも篭絡してしまいそうなほどに。
そうすれば、キャロラインとの結婚にも大きく近づく。シャーリンを使用すれば。
……だが、全てが終わった時……シャーリンはどんな顔をするのだろうか? よく笑い、時に悲しむ顔も見せる女だ。私に離縁を告げられたら、次の結婚は難しい。
そうなれば、彼女は悲しむのだろうか。
……待て、私は何を考えているんだ?
シャーリンは、冷たい女だ。離縁を告げても、「そうですか」と受け入れるに決まっている。……本当に? あんなに美しく笑える女が……。
____ズキン!
「いっ……最近、頭痛が酷いな……」
シャーリンの笑顔を見るたび、頭に痛みが走る。だが、そんなときキャロラインのことを考えるだけで頭が不思議とすっきりする。
あぁ、キャロライン。そうだ、やっぱり私にはキャロラインしかいない。あの不思議な瞳をずっと眺めていたい。キャロライン、キャロライン、キャロライン……。
私が愛しているのは、キャロラインただ一人だけだ。




