05-12 強敵のオンパレード
ここから先は前人未踏。
木の街、城塞都市ミートのダンジョンは一度もダンジョンクリアされたことがなかった。
六階層目は世界が一新。
まるで宇宙船の中のような青白い天井照明が続く未知の金属壁の廊下。
徘徊するのはオークソルジャー、ミノタウロス、ケルベロス、ゴーレム、サラマンダーをB級魔物ベースにした合成魔物。
しかも、その頭には魔石を使った巻貝型の鬼角。実質A級を凌駕していてもおかしくない強敵のオンパレード。
「このダンジョンの中ボス、B級魔物のオクトパスプランターが可愛く見えるな」
「師匠、メチャヤバですね」
「ああ、五階層の中ボス、オクトパスプランターを始末したせいで、ミートの冒険者が素通りで六階層に降りられるようになったからな」
「六階層に入ったらミートの冒険者ギルドは瞬殺ですね」
「魔物の数を使ってラスボス戦の前に俺たちのパーティーの体力、魔力、回復薬などのアイテムを削るターンだな、これ」
解と永久の言葉などもはや耳すら入らず、足を震わす人狼ガルムと鬼女ベニ。
それでも気合で足の震えを押さえる気丈なマユ。
「取りあえず『浄化』で鬼角を処理しましょうか」
「マユ、ダメだ。いくら回復薬があるからと言ってマユの体力から考えれば連続して使えるのは一日三回が限度だ。ダンジョンがボス部屋含めて残り三回階層以上だったらアウトだ。ボス戦まで温存したい」
絶体絶命のA級冒険者パーティー。
そなん時でも解は壁に取り付けられた見覚えのあるもの、サーイのダンジョン配信用に作った魔眼カメラに向かってニヤリと笑う。
「ドラキュラ伯爵、出番です」
解はイケおじ紳士風黒マントの背中を押す。
「承った」
颯爽とマントを揺らして階段を下りるイケおじ紳士風黒マント。
伝説の妖魔、ドラキュラ伯爵の参戦で折れかけた心が戻る人狼ガルムと鬼女ベニ。
「痛ってー、何だこれ?」
下りた瞬間、踵を返して戻ってくるドラキュラ伯爵。
「太陽光は克服したが、何じゃありゃ?」
ドラキュラ伯爵の真っ白な顔は焼けただれたように血が滲んでいる。見るからに痛ましい姿。
「蝙蝠の姿で飛び抜けたから面積が小さくて再生が間に合ったが、この表面積の大きい姿での戦闘は無理だな。通りで、君たちのホテルを探した晩はいつも以上に疲れていたわけだ」
「っ……。ブルーライト。伯爵、紫外線に弱いんですね」
「師匠、どうしたんですか?ブルーライトってパソコンやスマホの画面から出るあれですよね」
「ダンジョンの天井の青白い照明さ。可視光だけど紫外線に近い波長で体に良くないと言われている」
「この場は君たち二人に任せよう」
パタ、パタ。
ドラキュラ伯爵はちっさい蝙蝠に変身した。
「師匠、そういや私たちドラキュラ伯爵がちゃんと戦っているところ見たことないですよね」
「そうだな。不老不死だからと言って強いとは限らないからなー」
「師匠、ですよねー。おばあちゃん達をカプカプして若返らせてハーレム作って、ムフフしてるだけの変態だったりして」
パタ、パタ。パタ、パタ。パタ、パタ。
「師匠、なんか蝙蝠動揺してません。私が全力出しましょうか?」
「いや、ガルムとベニに頑張ってもらう」
解と永久の会話の矛先が突然、変わって再び足を震わす人狼ガルムと鬼女ベニ。
ジジー。
解は無限収納ファスナーを引いて二振りの刀を取り出す。
「っ……。師匠、それ!」
「ああ、『鬼神邪』と『鬼神瘴』だ」
『鬼神邪』、それは触れたものを戦闘狂にする妖刀。
城塞都市サーイのダンジョンの最下層で、ピエロ男・邪の『怨嗟』が宿った一振り。
『鬼神瘴』、それは触れるだけで全てを腐らせる妖刀。
城塞都市チーバのダンジョンの最下層で、黒ローブの男・瘴の『怨嗟』が宿った一振り。
「お前ら二人ともギルド登録は剣士だったよな。ほいっ」
解は妖刀『鬼神邪』を人狼ガルムに投げ渡す。
ビチ、ビチ、ビチ!グ、ガガガガ、ガァー。
人狼ガルムの筋肉は盛り上がり、目が血走る。
「ほいっ」
解は妖刀『鬼神瘴』を鬼女ベニに投げ渡す。
フフ、フフ、フフ!フッハハハハ、ハァー。
鬼女ベニの角が伸び、目が吊り上がる。
二人は階段を蹴って駆け出す。
そこに式神月花が変化した三日月剣『月花丸』を持つ永久と妖刀『鬼神解』を振るう解が加わる。
城塞都市ミートのダンジョンの六階層は鬼角の実験場から、殺戮と言う名の実験場に変わったのだった。
パタ、パタ。パタ、パタ。パタ、パタ。
小さな蝙蝠が、マユを安全な道へと案内していく。




