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大震災の元凶、地龍を倒して日本を救ったのに異界に追放されたので我流六気操術で無双します。  作者: 坂井ひいろ
プロローグ

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プロローグ 関東大震災を防いだ報酬は異界追放でした

東京湾に突き出た海ほたるの地下数百メートル。


国内各所から終結した陰陽師、総勢千人。


彼らが結界を張る巨大コンクリート空間だった。


東京ドームをはるかに超えるその中央で、天乃解あまの かいは息を切らしながら、たった一人、床に大の字になって天を見つめていた。


膨れ上がった人が生み出す怨念を運ぶ関東大道地脈。


日本列島を巡る『気脈』を再構築して誘い込んだ『気』を実体化させた神獣、地龍。


その地龍は、脳天に刀を突き刺され、頭上でもがき苦しみながら光の粒となってフワフワと舞っている。


ズサッ!


最後に残った一振ひとふりの刀が空中から落ち、天乃解のすぐ脇に突き刺さった。


蛍のような淡い光の粒はクルクルと舞って吸い込まれるように、その刀の中へと消えた。


「親父、いるんだろ。終わったぜ」


その言葉に合わせるように陰陽師たちは結界をき、かいを囲むように遠巻きに円陣を組む。


「解、よくやった。これで関東大震災は、あと百年は防げる」


敬礼する陰陽師たちの中を歩き、背広姿の男が一人、円陣の一歩前に出た。


「それよりさ……『気』を使い果たしたみたいで。ちょっとばかり、陰陽師の皆さんから分けてもらえないか?」


解は突き刺さった刀を支えに、ふらふらと立ち上がる。


「フハハハハハ。天乃解あまの かい。なんて間抜けな奴だ」


解が親父と呼んだ背広男の隣に立つ陰陽師の統領とうりょう村井健むらい けんが前に出て、指で印を結ぶ。


解を取り囲む残りの陰陽師たちも、それにならった。


地下空洞の天井に陰陽道の五芒星ペンタグラムが浮かび上がり、その中央に漆黒の渦が現れる。


頭上のそれを見上げて確認してから、解は背広姿の男へ向き直った。


「親父……はかったな」


男は表情一つ変えずに告げる。


「天乃解。本当に今までよくやってくれた。期待以上の成果だ。しかしだな、超えてはならない期待ってのもあるんだ」


振り返り、後ろに並ぶ大国と呼ばれる軍服姿の面々へ軽く礼をする。


テレビでしか見たことのない、各国から集まったそうそうたる顔ぶれが、結末を見守っていた。


「悪いな、解。原爆の千倍を超えるエネルギーを持つ神獣を、たった一人で倒せる高校生の存在は……。世界の軍事バランスを揺るがす『脅威』でしかない」


「親父……」


解の脳裏に、養父として自分を育ててくれた男との記憶が巡る。


その温度が残っているからこそ、言葉に詰まった。


「この国の総理として、米七艦隊を秒殺できるお前の存在を、いつまでも容認するわけにはいかんのだよ」


「クハハハハハ! そういうことだ、天乃解!」


陰陽師の統領があざ笑う。


我流六気操師がりゅうろくきそうしさんよ。陰陽師の体系にも属さない得体のしれない我流を極めた危険物が、地上に戻れると思うな」


我流六気操師。


陰陽師でも、兵器でもない。


それが天乃解という存在だった。


「我々が千年かけて妖魔や妖獣を封印してきた異界で、せいぜい活躍するんだな」


天乃解は下を向いて呟く。


「……。地龍相手に『気』を使い果たすことを、最初から計算していやがったか……」


背広姿の男、解の養父こと日本国、内閣総理大臣・冨士岡洋ふじおか ようはニヤリと笑う。


「解、妖刀『鬼神解きしんかい』はせん別だ。孤児だったお前の名づけ元でもある。地龍の『怨嗟えんさ』が宿ったとなれば、裏国宝といえど人類にはもはや御しきれん」


「散々いいようにこき使った挙句、厄介物と一緒にリストラかよ……。親父らしいな。えげつなくて、涙も出ない」


解が刀を引き抜くと、地龍をかたどった禍々しい鞘が現れ、絡みつくようにうごめいた。


「妖刀『鬼神解』……」


「国賓方をあまり待たせるわけにもいかん。解、そろそろお別れだ」


冨士岡総理はネクタイを引き、首元を正して軍服組を一瞥する。


そして陰陽師の統領にあごで合図した。


信じていたからこそ、抵抗する怒りすら湧かなかった。


陰陽師たちが結んだ印に力を込めると、陰陽五行の五芒星ペンタグラムから伸びる頭上の漆黒の渦が解を包み込むカーテンのように下りてくる。


まるで安っぽい喜劇の主人公を消し去るようなエンディングのカーテンみたいだと解は感じた。労いの拍手一つない。


「師匠、私もおともします!」


陰陽師装束の少女が一人、円陣を飛び出す。


九本の尾と尖った耳が、その身体からニョキッと伸びる。


九尾永久きゅうび とわ! この恩知らずの半妖怪め!」


陰陽師統領は叫ぶが、今さら術を解除できない。


九尾永久。


容姿は小中学生ほどだが、千年を生きた妖狐。


安倍晴明の娘とされる存在。


我流六気操師・天乃解の最初の仕事は、彼女の捕獲だった。


永久が解に抱きついた瞬間……、漆黒のカーテンはどす黒いつむじ風となって回りながら二人を包み込む。


解は、最後まで養父を見なかった。


次の瞬間、二人の姿はコンクリート製の地下大空洞から掻き消えた。


陰陽師の統領、村井は冨士岡総理に声をかける。


「総理、なぜ殺してしまわなかったのですか。『気』を使い果たした今がチャンスだったかと……」


冨士岡は村井を睨みつける。


「たかが陰陽師千人くらいで九尾永久きゅうび とわが抑えきれるとでも思ったのか?解を殺せばあいつは必ず暴走する。これが最適解だ」


村井は苦々しそうに顔をゆがめて口をつむぐしかなかった。


九尾永久、あいつは解と並ぶ本物の化け物だ。我流六気操師・天乃解以外にあいつを制御できる存在はこの地球上は存在しない。


「解……」


ポツリとつぶやき、冨士岡総理は各国の制服組をうながして地下大空洞の出口に向かうのだった。


・面白そうだなと思っていただけたら『ブックマーク』をお願いします。

プロローグなので、ちょっと固いかなと思いますが、五話までお読みいただけたらきっと引き込まれると思います!よろしくお願いします。

坂井ひいろ

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