第28話 初日終了
EF64‐1053に牽引されて、さよなら列車が洋館の町にやって来た。
自分は、EF64‐1053と反対側のDD51‐842を撮影し、早速、ジオラマの列車をその通りの編成に組み替えてから、ブログに掲載する。
「忙しいね。撮影して、ジオラマやって、それにデスクワーク。」
と、アヤが言う。アヤは相方のカンナと、撮影地に向かうらしい。
持ち帰り用として、パンの耳の揚げパンを袋一杯に詰め込んでいた。
撮影の合間の間食にするらしい。
店の駐車場に行くアヤとカンナに付いて行くと、そこに居たのは、都会の駅の機関区脇の道で見た、紅いTOYOTAのスポーツカーと、紺と青の中間のようなブルー系のSUBARUのスポーツカーだった。
「TOYOTA GR86。そして、カンナはZD8型BRZ。ナンバー見てみ?」
アヤのGR86のナンバーも、カンナのBRZのナンバーも見ているが、まさかと思う。
「そのまさか。アヤはDD51‐842。そして、俺はEF64‐1001から取ったナンバーだよ。」
と、カンナは言い、「明日、また来るね。」とアヤは言って、二人は店を後にした。
それから、イベントの合間を縫って、自分としおりさんはEF64‐1053とDD51‐842の写真を撮りに行き、隙を見て、しおりさんと自分とDD51‐842の記念写真を撮ってもらった。
洋館の町にガラスの笛のような汽笛を響かせて、DD51‐842を先頭に、さよなら列車は、都会の駅へと出発。それから1時間後、イベント終了だ。
少々揉めた場面もあったが、とりあえず、ジオラマも好評。イベントも大盛況。
しかし、何かが足りていない。
そう、最後のDD51の晴れ舞台なのだが、イベントの方についてしまうと、DD51を見られるようで、あまり見られず、最後だと言うのに、お別れもろくに出来ていないのだ。
「あの、カンナとアヤ?と、連絡先交換しちゃった。」
店仕舞い後、洋館の町の商店街の銭湯で、しおりさんは言う。
「自分も、どさくさ紛れに―。」
「リオナもか。アヤちゃんとすっごく話が合いそうだったね。」
「いやぁ、DD51について、あそこまで語れる方とは初めて会ったと思います。アヤは800番台が好きだそうで、その中でも、お召列車牽引機の842号機が一番好きだそうでした。ただ、語らせたらとんでもない事になりそうなので、またの機会にと―。」
「でもさ、リオナ。本当は今回のイベントで何か不満があるでしょう?」
「えっ―?」
「自分はイベントに参加しているため、DD51の最後の姿は駅でしか見られず、DD51の最後の列車にも乗れず、見られるようであまり見られていないと。」
図星だった。
しおりさんには敵わない。いつも、自分の考えはしおりさんにまる分かりだ。
「まぁ、それは仕方ないですが、それでも、DD51の最後の晴れ舞台に、ささやかながら、花を添える事が出来るのだから、それで十分です。」
「そう?本当にそうかなぁ。」
と、しおりさんは言う。