第22話 目くらまし
パン屋のSNSは弊害を生む事も予想されていたが、自分がジオラマを作っているところにまで、金も払わず文句だけ言ううるさい奴等がやって来ては堪らない。
それを危惧した店長のおばちゃん。
自分がバイトではない時にどうやら連中が冷やかしに来て、パンも買わず、お茶も飲まず、ジオラマだけ見ようとして見られず、ヘソを曲げて帰ったらしい。
「イベントなら分かるけど、何でもない時に来るのは止めて欲しい!こっちだって、イベントの時に公開するので、それまでお楽しみに!って言ってんのに。」
と、おばちゃん。
自分は「恐らく、SLが走っているかを見たかったのでしょう。」と言い、
「金も払わず文句だけ言う。典型的な鉄ヲタと変わらねえなどいつもこいつも。」
と、吐き捨てた。
「目くらましの意味合いで、SL走らせる写真でも載せようか。」
と、しおりさんが言うが、今、天の川の風景造りのため、鉄橋部分を中心に、線路を外している部分があり、ジオラマで列車を走らせる事は出来ない。川の中に天の川の星を表現するために、クリスマスのイルミネーション用の電飾を仕組んでいるのだが、仕方ないので、爺さんの模型屋から貸与されたD51蒸気機関車に試運転のヘッドマークを付け、後ろに意味も無く、オイラン列車ことオヤ31を連結した列車を、適当な所に置いてそれをSNSにアップした。それには「実際の運転時に蒸気機関車が走らない事もあります。また、イベント時は蒸気機関車ではなく電気機関車とディーゼル機関車がメインとなります。」と注意書きを書いた。どうしてここまでしなければならないのだろうか?
「蒸気機関車を走らせろってうるさい奴等に呑まれて、蒸気機関車を走らせるジオラマにしようとして、しおりちゃんに怒られたんだって?」
と、おばちゃんに言われて頷く。
「しおりちゃん、リオナに随分入れ込んで。まるで、お姉ちゃんね。」
そう言われて、思わず、
「自分も、しおりさんがお姉さんのように感じてしまいます。」
と言ってしまった。
ある程度完成したジオラマ。
後は、建物や車両に汚し塗装、要するに「ウェザリング」をする等、ジオラマの町に命を吹き込んでいく。
全ての建物を一から作って、より一層、洋館の町を再現したかったのだが、時間の都合上で一部に留まり、ほとんどが、市販品を使用することになってしまった。横槍さえなければ、こうはならなかったのにと憮然としていたら、
「それは、一瞬ブレたリオナが悪い。」
と、しおりさんに一蹴されてしまう。
そもそも、ジオラマの規模からみて、製作期間はイベントまでのギリギリだった。そこへ変な横槍が入って、ジオラマのコンセプト崩して考え直そうとしたのだから、自業自得だ。
「後は、イベント当日を迎えるだけね。」
「あの、イベントの前の週―。」
「分かっているよ。行ってくるのでしょう?最後のDD51重連を見に。」
と、しおりさんは微笑んだ。
まだ、廃車とはなっていないが、先日、EF65‐501が引退した。
残るは、DD51が2両とEF64‐1001とEF64‐1053。
洋館の町の駅は機関車の付け替えをするのが困難なため、DD51とEF64はプッシュプルでやって来るのだが、水上温泉へ行く列車では水上駅で機関車付け替えが可能なため、DD51の重連運転が走る日があり、それを見に行くのだ。
DD51のイベントに向けて、ジオラマを組み上げた。
だが、それは、DD51の最後の日のイベント。
どんどん、終わりの日が近づいて来るのだ。




