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第17話 無煙化改め有煙化

 1959年に答申し、1960年から実行に移された国鉄の動力近代化計画は、エネルギー効率が低く燃料費がかさみ、更に大量の煙のために安全性や快適性に問題がある蒸気機関車を計画的に廃止・淘汰するとともに、旅客列車については原則として電車あるいは気動車に置き換えるという物だった。


 それに従い、次第に数を減らした蒸気機関車は、1974年に本州、翌年には九州から姿を消した。


 既に消滅していた四国を除き、1975年時点では、北海道にC57とD51、そして、大正の名機と言われた9600形の3形式が残っていただけだった。


「銀河鉄道999」に登場するC62蒸気機関車も、最後まで残っていたのは北海道の小樽築港機関区の4両だった。


 そして、1975年12月14日に旅客列車、12月24日に貨物列車の先頭から蒸気機関車の姿が消え、翌年1976年、追分機関区で入換仕業に就いていた9600が最後の日を迎えた事で、国鉄の蒸気機関車は消滅したのだが―。


 そうした流れの中で生まれたDD51と言う紅いディーゼル機関車は、「デラックス・デゴイチ」と言う者もいたが、SLファンからは「ダメデゴイチ」「赤ブタ」「文鎮」等と揶揄された。

 ところが、今、DD51もまた、かつて蒸気機関車が辿った道と同じ道を進んでいる。

 押し寄せる電化の波、老朽化に伴って後継機DF200やHD300、DD200への置き換え、そして、「出雲」「北斗星」等、そもそもの牽引する列車自体が消滅した事で活躍の場を失いつつあり、今や風前の灯である。


(だが、いくらなんでも、自分の作る世界にまでそんな波は押し寄せて来ないで欲しい。)


 と、自分は周りの声を聞きながら思う。


 ふとした拍子に、クラスメートに設計図を見られ、更にそれが駅前のパン屋のイベントに向けて作るジオラマの物だと分かると、この手の連中はすぐ横槍を入れて来る。依頼も受けていない上に、金も払わず、口だけ出す。頼んでもいないのに。


 要するに、普段、自分と話す事も無いが、こうやって口出しして、それに合わせてジオラマを作らせて、自分も関わったと言い張りたいのだろう。


「銀河鉄道でしょう?なんで蒸気機関車じゃないの?」


 と言う質問ばかり飛んでくる。

 もう答えるのに疲れた。

 これが自分のイメージする銀河鉄道なのだと。


 それに対する反応が、「ディーゼル機関車?電気機関車?何それ?」というのならまだしも、


「いやいや、銀河鉄道の夜の列車は蒸気機関車!」

「蒸気機関車じゃなければ認めない!」


 等と言った内容の反応をされると嫌になる。


 そもそも、銀河鉄道の夜に登場する列車は蒸気機関車ではないと、宮沢賢治本人も本文中で言及しているのだが、それを言っても「いやそれは間違い!」と銀河鉄道の夜を書いた宮沢賢治本人の言及さえ受け入れず、イメージをバカみたいに自分へ押し付けて来る。


 とうとう、先生達の耳にも入ったが、その先生達にさえも同じ事を言われてしまい、もう嫌になって疲れてしまった。挙句の果てには、


「とにかく、蒸気機関車を走らせなさい!」


 と、なぜか言われてしまった。


 いや、このジオラマは自分が創る銀河鉄道であり、そのコンセプトは「紅いディーゼル機関車の列車が走る銀河鉄道」なのだが。


 更に、ジオラマの設計図を見るや「蒸気機関車なんだし、給水塔や給炭の設備が―」「転車台が―」とか言い始め、挙句の果てには先生達が描いた物を取り入れろ等と言い始めたのだからいい加減にして欲しい。


 放課後はバイトがあり、時間的に、しおりさんに今日は会いに行けない。

 明日も放課後バイトがあるが、ギリギリ明日はしおりさんに会える。

 なので、


「明日、先方の方に話をしますので―。」


 と言ってトンズラした。



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