第16話 設計開始
自分は、学校でもジオラマの制作に向けて設計作業を行い始めた。
パン屋のイベントもさることながら、そのイベントというのが、実は「都会の駅の機関区の電気機関車とディーゼル機関車は全て、近日中に老朽化のため引退し、今後、都会の駅の機関区に機関車は、蒸気機関車だけになる」というニュースと、それに伴う「さよなら運転」によるイベントだったのだ。
しおりさんも、この話を聞いて嘸かし驚いたのだろう。自分に「リオナ!大変だよ!」と、連絡してきたのだ。
そうは言ったところで、なら自分に何が出来ると言うのだろうか?
まさか、運賃以外に金も払っていないくせに、JRに対して抗議文でも提出しろと言うのか?
或いはDD51を自分で買って、洋館の町の駅のパン屋のレンガ倉庫の貨物ホームに置けと言うのか?
そのような金も無いし、技術も無い。
だが、自分には一つだけ、出来る事がある。
ジオラマの世界にDD51を走らせて、この世界に、DD51というディーゼル機関車が存在したのだという思い出や記憶を後世に伝えていくという事だ。
そして、ジオラマの世界ならば、DD51はずっと走ることが出来る。
自分には、本物を走らせられずとも、自分の作った世界で自分の理想とする列車を走らせる事なら出来るのだ。
だから、先日の列車旅やしおりさんと一緒に乗ったDL大樹の姿、そして幼少期に乗った、DD51が牽引する寝台特急「出雲」の記憶を総動員しながら、「銀河鉄道の夜」や「銀河鉄道999」を読みながら、必死になってジオラマの世界観を森羅万象、頭の中に構築しては、それを設計図に書いて行く。
(紅いディーゼル機関車が牽引する夜行列車が、紅い夕陽の空の下の駅を発車して星空の中を走って、朝の町の駅に到着する。)
そんなコンセプトの銀河鉄道を描いて行く。
しかし、設計図を描く作業というのは意外に難しい。
頭の中に構築した物を、紙に書いて行くのだが、イメージというのは、ぼやけたアニメ映像や曖昧な夢の世界を見ているような物で、どのように図面にしていくかというのは、例えるなら、都会の町の夜空で、三等星以下の明るさの星を肉眼で探して、全天の星座を全て見つけるような物だ。
それでも、二等星以上の明るさがある星や特徴のある星の並びを見付ける事が出来たならば、大まかな星座の位置を把握することは可能。
そうやって、ぼやけたアニメ映像や曖昧な夢の世界の中に見える「紅いディーゼル機関車の列車が走る銀河鉄道」とその車窓を見つけては、設計図やメモ帳に書き落としていく。
しかし、ゆっくりとは出来なかった。
なぜなら、都会の駅の機関区に居た電気機関車の内、EF55‐1号機が鉄道博物館に保存されることになり、今日、さよならイベントが都会の駅の機関区で行われた後、同僚のEF60‐19号機に牽引されて大宮車両センターへ持ってかれるのだ。そして、なんていうことか、EF60‐19号機に対しては、そんなさよならイベントも何も行われることなく、EF55‐1号機を大宮まで運んだら、その足で、長野総合車両センターへ自走で回送されるのだが、これはイベントでなく、廃車回送。つまり、もう二度と、都会の駅の機関区に帰って来ることはない、片道切符の旅なのだ。




