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第14話 トワの決心

トワは迷うことなく、モネと100年前に出会った路地裏に辿り着くことができた。

記憶は曖昧だったし、細かい風景は変わっていた。

それでも足は自然とそこへの最短ルートを覚えていた。


「今更こんなところに来たって、どうしようもないのにな」

トワはそこにモネがいない当たり前の光景にホッとしていた。

モネとの楽しかった思い出に浸りたいと思いながら、同時に拒絶された痛みが古傷のように痛んだ。

だから結局会えず終いだったモネにもう一度会いたかった反面、今更会って改めて否定されたくなかった。


彼女はおそらく、もうこの世に存在しない。

仮に生きていたとしても100歳をゆうに超える老人だ。

そんな彼女が今も変わらないトワの姿を見たらきっと化け物のように見えるだろう。


「お姉ちゃん、そこで何してるの?」

突然声をかけられてトワは身をすくめた。

背後にはトワよりもさらに幼い少女が立っていた。

「散歩してるだけだよ」

努めて優しく、返事をすると少女は屈託のない笑顔を向けてきた。


「一緒に遊ぼう?」

モネを想起させるその笑顔が辛かった。

「ごめんね。もう帰らないといけないんだ」

「そっか、残念。じゃあまたね」

トワは力無く少女に手を振ってみせたが、少女は挨拶もそこそこにすぐにその場を去っていった。


「そういえば、モネはなんで声かけてくれたんだっけ」

モネと別れて以降、クリスと出会うまでは覚えておきたい記憶もほとんどなかった。

だから記憶を巡らせると答えは朧げながらもすぐに出てきた。

「確か、顔色が悪いとかで心配してくれたんだっけかな」


「それはクリスも同じか」

セルメギスの兵に追われ、傷ついて倒れたところを介抱してもらったのがクリスとの出会いだった。

意識を失っていたとはいえ、それは100年ぶりに差し伸べられた手をトワが取った格好になった。


「それからクリスを戦いに巻き込んで、最後は強引に旅についてきたんだよな」

今にして思えばあの時のクリスはやけに頑なだったように思える。

その理由をトワはまだ知らない。

ただ、それから今日までの旅は久しぶりに楽しいと思えるものだった。

だからあの時、再び1人になろうとした自分に無理矢理ついてきてくれたことをトワは感謝している。


モネも強引だった。

「確か、何かに理由をつけて付き纏ってきたような気がするな」

優しくも時に強引で、一緒に過ごす時間はトワの心を満たしてくれた。

そう考えるとクリスとモネはどこか似ているのかも知れない。


それでも、受け入れられなかった。


では、クリスは、クリスたちはどうだろうか。

まだ出会って数ヶ月。

決して短くはないが、身体の成長を実感するほどの期間ではない。

これが1年、2年と積み重なればいくら事情を知っていたとしても気味悪がられないだろうか。

クリスたちはそんな風には思わない、と自信を持って言えないのはモネにも同じような信頼を寄せていたからだ。


むしろ過ごした期間で言えばモネの方が長い。

違いといえばクリスたちは最初からトワの事情を知っていて、その上で協力してくれているということだ。

同じように、最初から事情を話して受け入れてくれたこともあった。

ただしそれは見せ物として金儲けの道具として利用された結果に終わった。

クリスにはそんな打算は無いとその点については信じられた。




ならばやはり、不老不死の事実が私とクリスたちの間に軋轢を産まないうちに、円満な別れを迎えるべきでは無いのか?

モネとだってきっと、私が欲張らなければもっと前向きな別れ方はできたはずだ。

良い関係のまま別れられれば、きっと最初のうちはお互い名残惜しく、辛い思いもするだろうがそれでもいずれは立ち直って自分の人生を歩めるはずだ。

もちろん、モネの時同様に失意に満ちた別れであったとしても彼らはいずれ立ち直り、私のことなど忘れて生きていけるはずだ。


だからこれは私のためだ。

私がこの楽しくて大切でかけがえのない記憶を傷つけたく無いから、尊い思い出を美しいままで保管したいから、だからこそ引き際を考えなくてはいけないのだ。

欲張れば失う。

台無しになる。


それに人間不信だった私にここまで思わせてくれた人たちだからこそ、早く危険で途方もない私の旅から離れてもらいたい思いもある。

任務だというレオンハルトはまだしも、クリスとエマには村に居場所があって叶えたい夢がある。

若い今だからこそ、貴重な時間を私の旅に費やすべきではない。


本当はヴェスティガッセでグレース女王の好意に甘えるべきだったのだ。


それを私はクリスの意志を尊重するという体で甘えた。

今度こそ、この街でやるべきことが片付いたならばクリスたちに別れを告げよう。


決心が鈍らないうちに、フレッド医師に見てもらえるといいのだが……

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