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第3話 時間の作り方

事前に約束していた合流場所の公園へ戻ると、エマとレオンハルトの姿は既にあった。

「あ、おーい!」

すぐにクリスたちの姿を視界にとらえたエマは、ベンチから立ち上がると大きく両手を振って存在をアピールする。

それに気がついて2人は早足で近寄る。

「どうだった?お医者さん会えた?」


良い結果を期待して笑顔を向けるエマに対し、トワは首を縦にクリスは首を横に振った。

「ん?あれ?どっち?」

2人のチグハグな回答を前に、エマは全身を大きく横に傾けて、頭にハテナを浮かべた。

一連のやり取りを黙って聞いていたレオンハルトも要領を得ないといった表情で、疑問を浮かべている。


「あー、正確には会えたけど、診てもらえなかったんだ」

つい先程受けた門前払いのあらましを説明すると、エマの表情は次第に不機嫌なものに変わっていった。

「何さ、その人。最初っから見る気ありません、って感じじゃん。それ本当に良いお医者さんなの?」

エマのその問いかけに対して2人は顔を見合わせてしまった。

実際のところエマの言う通り、突然訪問したとはいえ診てもらいたいという患者に対する反応は、とても良い医者には見えなかった。

しかしながら、エドと呼ばれていた男とのやりとりからもやはり医者ではあるようで、その腕前を判断する材料を2人は持ち合わせていない。


「気難しい人らしいからな、もしかすると癪に障る物言いをしてしまったのかもしれない」

エドの言葉を受けた一般論的なある種フレッドへのフォローであり、もちろん、トワの辿る記憶にはそのような振る舞いは一切なかった。

それでも、会話の成り行き状しかたないとはいえ、交渉役を買って出たクリスは自分を戒めずにはいられなかった。

「無意識に何か言っちゃったのかもしれない……ごめん」

「いや、クリスが悪いと言ってるわけじゃないんだ。私が話しても同じようなやりとりになって、結局追い払われたと思う。だから気にやまないでくれ。むしろ責めるような形になってすまない」

自分のために渉外を買って出てくれたクリスを叱責する意図がないのは伝わっているだろうが、それでも彼に謝罪させる形になったことで不用意な発言を後悔する。


慌てて両手を横に、首も横にぶんぶん振りながらトワが否定する。

銀色の長髪が左右に鞭打つように揺れ、あまりの勢いに首や顔に絡みついていく。

そんな様子を見て俯き加減だったクリスも顔を上げ、ふっと笑い声を漏らす。

クリスの息づかいを聞いて安心したのか、横の動きを止めてトワはそっと顔を上げた。

顔にかかった髪の毛に遮られた視界の先には柔らかい笑顔のクリスがいて、その表情からは徐々にやる気が溢れ出していた。


「フレッドさんには断られちゃったけど、理由が忙しいからっていうのと、トワがどこも悪くなさそうっていう2つだったんだ。トワの状況を正しく伝えられれば2つ目の理由は解決すると思うし、そのためにはやっぱり時間をとってもらう必要がある。だから1つ目の忙しいって部分を解決できさえすれば、きっとチャンスはあると思う」

クリスのいうことには一理ある。

一方で忙しいからという理由はある種の断り文句として存在することもまた事実だと気がついていたのはレオンハルトだった。


「実際に話を聞いていないから憶測になってしまうが、もともとフレッドには診る気がなく、体よく断られたということはないか?」

レオンハルトは顔を少し引き、右手を顎に当てて考える仕草を見せる。

「確かに一理あるな」

トワは移動時間の会話さえ断られてしまったことを思い出すと、納得して頷き腕を組んで再び悩み出す。

「その可能性もあると思う……けどやっぱりトワの不老不死を知って、信じてもらうのが一番だと思うんだ。フレッドさんが本当に噂通りの名医なら、きっと助けを求める人を放っておかない。そう信じたいんだ」


「でもその人めちゃくちゃ忙しいんでしょ?どうやって話聞いてもらうか考えないとだね」

エマも両手を後頭部に乗せると、椅子の背もたれに思い切り体を預けてのけぞりながら考える。

「そこについては一つ、考えてることがあるんだ。だから僕に任せてくれないかな?」

既に策があったことに3人とも少し驚いた様子を見せる。

それぞれが体制を変え、手の置き所を変え、食い入るようにクリスのアイデアを待った。


「僕はフレッドさんに弟子入りしようと思う。そうすれば、仕事を手伝う間に話す時間も作れるだろうし、フレッドさんが名医かどうか、判断つくかもしれない」

「でも、その要望も門前払いになる可能性はあるだろ?」

レオンハルトが尋ねるとエマもうんうんと頷いた。

トワは黙ってクリスを見つめている。

「うん、だけど本当に忙しいんだとしたら少しでも人手は欲しいはずなんだ。だから僕はなんとかして僕が使えるってことを証明しなきゃいけない……簡単じゃないけどやってみたいねだ」

大きく頭を下げて頼み込むクリスを止めるものは誰もいなかった。

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